Shufoo!とMapionで生活者に寄り添う-トッパングループ新会社「ONE COMPATH」が目指すメディアサービス [インタビュー]
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on 2019年5月28日 inトッパングループは4月1日、BtoC領域のデジタルメディア事業に特化した新会社ONE COMPATHを立ち上げた。同社は、凸版印刷で20年近くにわたり運営してきた電子チラシサービス「Shufoo!」を、グループ会社で地図検索サービス「Mapion」を運営するマピオン社に事業承継をした形で誕生した。
「Shufoo!」のサービス内容と新会社立ち上げの背景、将来の展望について、早川礼 代表取締役社長 CEOと塚原俊之 メディアサービス本部 メディア事業部 アカウントグループ マネージャーに話を伺った。
(聞き手:ExchangeWire Japan 柏 海)
月間4億PVの電子チラシサイト
―早川氏のご経歴をお願いします。
早川氏 2000年に凸版印刷へ入社してから、6年ほど営業として旅行会社等を担当いたしました。その後、凸版印刷、博報堂、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム、日本アイ・ビー・エムの4社のジョイントベンチャーとして立ち上がった、BrandXing社(現在の博報堂ダイレクト)に出向をしました。広告・メディア系やECの立ち上げなど、マーケティングやインターネットに携わることが出来たのもこの時期です。
そこで5年を経て、凸版印刷に戻ってきてからはメディア事業推進本部という部署でShufoo!に8年以上携わって来ましたが、新会社立ち上げとなる本年4月からは、代表取締役CEOとしてShufoo!やMapion等に関わっていくことになりました。
―塚原氏の普段の業務内容をお願いします。
塚原氏 ONE COMPATHではメディア事業部という、Shufoo!とMapionのサービス企画・運営をしている部署があり、そのなかのアカウントグループで、Shufoo!とMapionのプログラマティック広告でのマネタイズや、Shufoo!とMapionでそれぞれ構築しているDMPデータを広告主や代理店、DSP事業者に販売する業務を担当しています。
―Shufoo!のサービス内容について改めてお聞かせください。
早川氏 「お買い物ユーザーが集まる最大規模のメディア」として、電子チラシの掲載企業数が4,000社、掲載店舗数は110,000店舗、月20~25万枚ほどの電子チラシをアプリ内やWeb上で配信しています(2019年2月時点)。対象エリアも全国で、ローカルな情報をローカルなユーザーに届けることができる、地域密着型メディアでもあることがShufoo!の強みとも言えるでしょう。
利用ユーザー数は現在、月間ユニークユーザー数は1,100万人で、月間ページビュー数は4億PVとなります。ユーザー属性としては、女性が75%で、年代は30~40代、子どものいる主婦の利用者が多いという特徴があります。また、ユーザーは電子チラシに掲載されている「お得な情報」を自発的に求めている、購買意欲や情報感度の高い方たちであり、新聞の購読者数が減少するなか、新聞を普段読んでいない=紙のチラシに触れる機会が無い層にもリーチが可能となっています。
電子チラシの広告課金が起きる仕組みについても、価値のあるチラシPVを担保するため、画面上にチラシが表示されたら課金するのではなく、ユーザーがチラシの内容を見ようと拡大表示をしたら課金される仕組みを取っております。
※ 出典:Shufoo!媒体資料
―電子チラシを掲載するメディアとして、Shufoo!がトップシェアを獲得してきた理由をどのように分析していますか。
早川氏 事業を立ち上げた山岸(現:凸版印刷パーソナルサービス本部長)のビジネスモデルの作り方が一つと、凸版印刷という企業資本ならではの継続力があると考えています。
Shufoo!のサービスは当初、ASP(アプリケーションサービスプロバイダ)とShufoo!への掲載とセットでスタートをしました。Shufoo!立ち上げ当時、今から20年ほど前ぐらいから、企業自社サイトなどのオウンドメディアでもチラシを見られるようにしたいというニーズがあり、その機能提供(ASP)により1店舗月額いくらという形でお金をもらいながらも、「オウンドメディアだけでなく、Shufoo!にもチラシを掲載しますよ」という売り込みを行えたことが1つのポイントです。これを10年ほど続けることで流通企業(スーパー・デパートなどの小売店)のオウンド支援の信頼を得ると同時に多くのコンテンツを集めました。その上でビジネスモデルを、メディア化に切り替えたのが2011年。CMやウェブ広告にも投資をしながらShufoo!にユーザーを集め、もう一つのポイント、チラシをウェブで見るという行為のカウントルール(チラシPV)を独自で規定したことが大きいと思います。これが電子チラシ配信という事業分野を確立する基本になっていると思います。
これだけ長く時間をかけて継続出来たのも、会社のトップが「このビジネスはこれから伸びるから人もお金も投資して成長させよう」と判断してくれたのが大きいと感じています。
また、他の企業がなかなか付いて来られない点として、全国に存在する流通企業とのコネクション構築というのもあるでしょう。紙媒体を電子化してインターネットを使い2~3年で収益を伸ばす、というビジネスモデルを電子チラシで作るのは非常に厳しいと思います。
Shufoo!DMPでアプリ内外に広告配信
―Shufoo!DMPの取り組みについてお願いします。
早川氏 Shufoo!DMPでは、どのユーザーがどのチラシを見たのか、という閲覧履歴を、アプリ内のIDFAやcookieなどから情報を集約し、流通企業だけでなくメーカーなども含め、Shufoo!内でのバナー広告配信や外部SNSなどの広告配信に活用しています。
そのなかでも一番ユニークなセグメントが「買い物行動圏」と定義しているものです。情報を集約していくことにより、ユーザーがどの店舗のチラシを横断して閲覧したかを把握し、日常の買い物をどのエリアで行っているかをまとめたものになります。これは全国平均では5kmですが、例えば東京ならもっと狭かったりする一方で、北海道のような車社会の地域ではもっと広いケースもあります。
ユーザーが今どこに居るか、という位置情報の広告活用はトレンドとしてありますが、今どこに居るか、という情報以上に、ユーザーがこれからどこに向かおうとしているのかが大事だと考えているので、Shufoo!DMPではその点をカバーすることが出来ています。
塚原氏 早川のお話した広告配信をもう少し説明します。DSPやSNSの広告配信プラットフォームに、CookieやIDFAをキーにデータ接続して、買い物行動圏などでセグメントしたユーザーにターゲティング広告を配信しています。その後、広告接触者のスマートフォンGPSから来店効果を可視化するところまで、一気通貫したサービスを提供しています。メーカーが流通企業への送客を目的とした広告配信でご利用いただく事例も多いです。メーカーからすると、支援をしたい流通企業のチラシを見ている人や、限られたエリアでかつスーパーのチラシを見ている人、というセグメントで商品の広告を出せて、来店の可視化もできる点は価値を感じていただいています。
※ 出典:Shufoo!媒体資料
―広告の出稿先として、大手SNSに直接出稿をする、GDNに広告を流す、といった選択肢も考えられるなか、Shufoo!を通じて広告出稿をするメリットはどこにあると考えていますか。
塚原氏 我々が価値があると考えているのは、月間1200万人の30~40代の子育て主婦が一番集まっているメディアで、特に購買意欲の高い主婦の買い物行動データを保持しており、Shufoo!内はもちろん、外部メディアでの活用も可能であるということです。
電子チラシを掲載いただいているような流通企業もですが、コスメ、健康食品などの訴求に広告をご利用いただいても、非常にコンバージョンが優れています。また、学習塾や子ども向けの教育商材のようなクライアントからも多くの広告掲載をいただいています。
―Shufoo!DMPでのセグメントはどこまで可能でしょうか。
塚原氏 特定店舗を指定してその周辺エリアで買い物をしている人=買い物行動圏を持つ人をセグメントできます。チラシ1枚単位の閲覧履歴でのセグメントも配信可能ですし、閲覧企業のほか、ファッションやドラッグストアなど、閲覧店舗のカテゴリーでも可能です。
※ 競合他社のチラシを見ているユーザーに向けて広告を流す、などはNG。
あとはMapion閲覧ユーザーのデータに基づくDMPを提供しており、先日もDSP連携のリリースを配信しましたが、MapionとShufoo!の連携としては「気象ターゲティング広告」というターゲティングメニューもShufoo!アプリ内で提供しています。
MapionではDMP以外にも、「エリアデータマート TORIMAKU」という気象データやジオ・デモグラフィックスのデータを集約した、各エリアに紐づく環境データ持っており、これらの情報提供サービスも行っています。
気象ターゲティング広告はこのデータを生かし、その地域の気温や天気などの気象条件に応じて広告を自動配信する仕組みで、例えば冬で寒くなりそうならおでんの広告を出す、逆に夏で暑くなりそうならビールやアイスの広告を出す、というもので、気象条件によって売れ行きの変動するメーカー商品の告知やタイアップに活用いただけます。
TORIMAKUについては、Speee社との実証実験も進めておりますが、今後もアプリ内外での広告配信において、より高精度なものにしていきたいと思います。
日々の暮らしの便利やワクワクを作る
―このたび新会社としてONE COMPATHが誕生しました。サービス開始から長い期間、凸版印刷で運営していたShufoo!をマピオン社に事業承継し、マピオン社の社名を変更した形になりますが、何故今のタイミングで組織体制を変えたのでしょうか。
早川氏 トッパングループ全体の経営課題として、デジタルトランスフォーメーション(ICTの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させるという概念)を推進していくことが急務となっています。
推進をするにあたっては、生活者と直接繋がって得られるような情報やノウハウというのは、非常に重要なピースに成り得ると認識しています。市場を賑わせているGAFAも生活者とはBtoCで接点を持ちながら、BtoBを含む様々なソリューション開発に繋げていることでしょう。一方で、トッパングループ全体の売上としては、BtoBが大半を占めているような状況で、印刷物をはじめ最終的に生活者の手に届くものを提供してはいても、直接の接点は少ないという状況でした。
そのような状況で、まずはグループ内で抱えるBtoCプラットフォームを一社にまとめることで、事業運営効率を上げていくという面もありますが、MapionとShufoo!で培ってきたそれぞれの視点を合わせることで、BtoCにおける事業創出力を強化していきたいという考えがあります。
―「トッパン(凸版)」という名前を社名に使わないというのは大きなチャレンジだったのではないでしょうか。
早川氏 従来のトッパングループにはなかった、BtoC領域にフォーカスした戦略会社という立場で、社内外にもその覚悟を見せるという意図が強いと思います。そういう意味では、トッパングループから少し離れた文化や制度での事業成長も目指せるのではないでしょうか。
私自身、ONE COMPATHにいる者として、「自分たちが変えていくのだ」という覚悟を持って、新たなサービスを生み出していきたいと思います。
―既存のShufoo!やMapion以外のメディアサービスではどのような事業展開を考えていますか。
早川氏 今回、我々の事業領域を示す言葉として、「ワンマイル・イノベーション・カンパニー」という言葉を作りました。ワンマイル=ユーザーの生活行動圏にこだわり、日々の暮らしの便利やワクワクを作っていくという意味です。
かつてインターネットの価値は、世界中から時間と距離の制限をなくすこと、というのが主流でした。それが今ではスマホやIoTの発展により、日々の生活や地域、身近な出来事を解決していくということに価値がシフトしていると思います。MasS(マイカー以外のすべての交通手段による移動を 1つのサービスとしてとらえ、シームレスにつなぐ概念)が一つの良い例ではないでしょうか。
この日々の生活や地域に根付いたIT市場というのは、大手のインターネットメディアを含めてもまだ勝ち組は居ません。それゆえに、多くのプレイヤーが狙っている市場で、激戦も予想されます。そのなかで、ONE COMPATHとして、今までShufoo!やMapionで、日々の生活や買い物という分野でイノベーションを起こしてきた経験やポジショニングを生かし、新たなサービスを作っていきたいと思います。
―改めまして、それぞれメッセージをお願いします。
塚原氏 データ(DMP)を使った広告事業としては、Shufoo!で買い上げレシートのデータ取得を始めるなど、更なる強化を図っています。今まではチラシの閲覧履歴だったのが、実際に購買したのか、何を購買したのかまで情報を拾うことで、更なる広告運用に生かせるのではないかと考えています。加えて、位置情報を使った来店の補足というのも引き続き取り組みを加速させていき、さらに価値ある広告商材を作っていきます。
Shufoo!DMP、MapionDMPをはじめ、「エリアデータマート TORIMAKU」のようなデータもあり、広告出稿先をお考えの方にご提示できる方法はたくさんありますので、是非ONE COMPATHにお声かけください。
早川氏 今後とも、ターゲットとする生活者のリアルな行動を促す=デザインするというところは我々の強みにしていきたいと考えています。「リアルな行動をデザインするといえばONE COMPATH」ということを覚えていただき、何か課題がありましたら、我々の保有するデータの提供や、時には企業様とのテクノロジーやデータ面での連携をし、ご協力させていただきたいと思います。
ABOUT 柏 海
ExchangeWireJAPAN 編集担当
日本大学芸術学部文芸学科卒業。
在学中からジャーナリズムを学び、大学卒業後は新聞社、法律・情報セキュリティ関係の出版社を経験し、2018年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告調査などを担当する。