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活況のライブ配信市場に、新しいマーケティング手法を見出す [インタビュー]

夏川登志郎氏の写真1

急成長を続けるライブ配信市場において、ライバーを活用したインフルエンサーマーケティングが注目を浴びつつある。ライブ配信市場の現状と、ライバーを活用したマーケティングの可能性について、サイバーエージェントグループ会社のCyberLiG代表取締役社長夏川登志郎氏にお話を伺った。

(聞き手:ExchangeWire JAPAN 野下 智之)

ライブ配信市場のマネタイズに挑戦

貴社を立ち上げた背景をお聞かせ下さい。

夏川氏 私はもともと入社前にライブ配信活動を、ツイキャスなどでしていました。また一方で、大学院でライバーをテーマにした研究活動も行っていました。

当時サイバーエージェントグループでライブ配信プラットフォームを運営していた会社の代表と出会ったことがきっかけでサイバーエージェントに入社しました。その頃はまだ、市場ができていなかったので、まずそこから作りたいと思っていたのですが、タイミングが合わず。その後ライバーから少し離れた事業をしていたこともあったのですが、またいつかはライバーに関わる事業をやるんだ!と心に決めており、近年はマネタイズができる環境が整ってきたので、ライバーを束ねる側として再度チャレンジの機会をもらい、CyberLiGを設立しました。

ライバーとはどのような人のことを言うのでしょうか。

夏川氏 いわゆるインフルエンサー領域の中でYouTuberやTikTokerなどと並列し、ライブ配信に特化した人々を指します。

この用語はここ2年くらいで生まれたものだと思います。動画配信自体は、最初はニコニコ動画からはじまり、その時はまだニコニコ動画配信者と呼ばれていました。あまりライブ配信は浸透していませんでしたが、2011年前後にツイキャスが人気になりました。PCのリテラシーがそんなになくてもスマホから配信できるということで「キャス主」という言葉も生まれました。

ライバーとなるモチベーションはどこにあるのでしょうか。

夏川登志郎氏の写真2

夏川氏 例えば、ニコニコ動画では、月額のお金を払って配信する仕組みで、配信者の承認欲求を満たすようなものでした。それに対し、ツイキャスは無料でした。ファンを増やしたい、というモチベーションが主流だったのですが、ここ2年くらいでオンラインギフトが活発化しています。SHOWROOMなどでも始まっていましたが、海外のライブ配信アプリでもオンラインギフトが有名になり、最近は、半分は有名になりたい、半分は収入を得たいというモチベーションになりつつあるように思われます。

どのような属性の人がライバーになるのでしょうか?

夏川氏 学生ももちろん多いのですが、人気配信者は20代後半も多くなっていますね。

なかには、月に手取りで1000万くらい収入を得ている人もいます。中国語を話せる配信者などは中国のお客さんからも支持を受けて、収入が大きくなる傾向があります。

どういうコンテンツを配信するのでしょうか。

夏川氏 雑談や、音楽系の演奏コンテンツがメインです。以前は外でのロケ派もいましたが、最近はあくまで部屋の中でというのが主流になってきています。トレンドには波がありますね。

各プラットフォームの特徴を教えてください。

夏川氏 YouTubeとFacebook、インスタグラム、Periscopeと、17 Live、SHOWROOM、LINE LIVE、ツイキャス、Pocochaなどがありますが、それぞれかなり特徴が異なります。

前者(YouTubeからPeriscopeまで)はライブがサブ機能で属性もYouTuberやインスタグラマーに紐づいています。後者(17 LiveからPocochaまで)はライブメイン。17Liveなどはユーザーが20代前半から後半の有名になりながら稼ぎたい志向の女性が多いです。雑談や、オーディオインターフェースで音楽配信もやっている。SHOWROOMはAKB48や乃木坂46、地下アイドルもロングテールで活躍していますね。Live Meは一芸ができる人。Pocochaも17Liveに近いという印象です。

ユーザーはどう使い分けているのでしょうか。

夏川氏 自分のファン層がいるところを選んだり、オンラインギフトの還元率で選んだりしています。

見る側のモチベーションは?

夏川氏 SHOWROOMやLINE LIVEは応援。17LiveやPocochaはあくまでコミュニティが楽しい。その人の出資者になりたいなどのイメージが近いと思います。

まずは女性向け商材から

ライバーの収入はオンラインギフトということですが、プロモーション効果としてはどういう点に目をつけたのでしょうか。

夏川氏 前提として、当社のプロダクション事業、ライバーは事業としては入り口です。将来はインフルエンサーとしての総合プロデュースをしたいと思っています。インスタやYouTubeやTikTokはフォロワーは増えやすいけれど濃いファンは少ないのです。これを増やすためにライブ配信を取り入れると、1000人の薄いファンより10人の濃いファンを作っていくことが出来ます。そのような濃いファンを増やしていく仕組みづくりをこつこつやっていきたいと思っています。

実際に芸能人を活用してインスタライブで化粧品の商品紹介を行ったり、ツイッターでPRとしてドラマを実施後、二次拡散としてライブ配信をするといった試みがグループ会社では生まれています。過去にキャスティングを手伝ったのは、映画にインフルエンサーを招待。見たあとの生感想をアンバサダーに訴求するといった事例もあります。

プロモーションでライバーを使いたいと思ったら、段取りや予算はどうなるのでしょうか。

夏川氏 これまでSNSなどに振っていた静止画の予算が動画にシフトしていますが、例えば動画プラットフォームに1500万円の予算を割いてみて、残り500万円で新しいことをやる、といったケースが想定されます。いわゆるナショナルクライアントからのご依頼です。

ライバーと相性の良い広告主の業種はありますか?

夏川氏 化粧品や飲食、ファッションも相性がよさそうですね。比較的女性商材が多いと思います。

ライブ配信のマーケティング活用は米国や中国、ヨーロッパなど海外のほうが進んでいるのでしょうか?

夏川氏 海外が進んでいると思います。特に台湾。ライバーからタレントもどんどん出ています。ライバーで映画を作ったり、CMに出たり、デビューしたりといったことが当たり前になってきています。

日本でも、タレントさんとの垣根はこの向こう3年間で結構崩れると予想しています。

タレントさんもYouTubeに出たりライブ配信するようになってきているので、みんなテレビもやるしライブ配信もやるし、という時代が来るのではないでしょうか。

まずはライバー市場を作っていきたい

今後プロモーション領域で取り組みたいことはどのようなことでしょうか。

夏川登志郎氏の写真3

夏川氏 まずライバー広告を浸透させたいですね。ライバーというドメインがまだできていないので、市場を創り、広告事業領域、プロダクション事業領域のNo.1を獲りたいと思います。

ライバー広告市場には大きな可能性がありますが、今はまだ事例は限られています。ライバー広告にぜひチャレンジしていただきたいです。ライバーの方にとっても、この領域はまだレッドオーシャンではないので、一緒にチャレンジしていただきたいですね。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。