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有店舗事業者のデジタル化と来店プロモーション最前線 -第4回:ジオマーケティングの最新事例と今後の展望|WireColumn

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有店舗事業者のデジタル化と来店プロモーション最前線について執筆させていただいている株式会社オプトの本郷です。前回は新たな集客施策としてスタンダードになりつつある「位置情報を活用した来店プロモーション」の配信手法や来店計測について書かせていただきました。今回は最終回としてジオマーケティングの最新の事例と今後の展望を少し広い視点でまとめていきたいと思います。

位置情報を活用した来店プロモーション最新事例

Case1:来店プロモーションによるリフト検証

まずご紹介する事例はインテリアや雑貨を販売しているFrancfranc様で実施させていただいた来店プロモーションによるリフト検証です。どの施策もそうかもしれませんが、初めての施策はテストとして実施することが多いと思います。来店プロモーションにおいても最初はテストとして実施し、効果を確かめることが多いのですが、こちらはその「広告効果」の検証事例です。具体的には広告に触れても触れなくても店舗に来店したのではないか?という懸念に対して来店を促すバナーと全く関係ないダミーのバナーをそれぞれ用意し、各バナーにのみ接触したユーザーがどの程度来店しているかそのリフト値を検証しました。

図1:インテリアや雑貨を販売しているFrancfranc様で実施させていただいた来店プロモーションによるリフト値の検証

出典:Francfranc/オプト

図2:広告バナーに触れた人の来店は 62%UP!

出典:Francfranc/オプト

結果としてはダミーバナーに触れた人の来店を「100」とすると、広告バナーに触れた人の来店は「162」と62%のリフトアップが実現。この結果から広告バナーは来店に寄与しているという効果が証明されました。

Case2:流客分析とプロモーションへの反映

次にご紹介する事例は流客分析とプロモーションへの反映です。流客とは読んで字のごとくユーザー(お客様)の流れを分析することです。

図3:流客分析とプロモーションへの反映

出典:オプト

上記図にもありますが、店舗近隣に広告を配信したとしても、必ずしも該当店舗にユーザーが来店するわけではないと思います。たまたま店舗近辺にいて広告に触れた場合、実際行く店舗は自分の家の近くということも大いに考えられます。このようにユーザーの行動の流れを分析することを流客分析と言っています。

図4:流客分析結果を参考に店舗立地条件に併せて配信エリアを変更し、来店単価が5分の1に改善された事例

出典:オプト

上記は流客分析によって得られた情報から配信エリアをターミナル駅近辺からターミナル駅に繋がる沿線の駅周辺に変更したことで来店単価が5分の1に改善された事例です。ユーザーの動きを把握し配信エリアを変更していくPDCAを回すことで来店単価が最適化されました。

今後の展望

最後に少しだけ今後の未来について触れて本執筆を終えたいと思います。第1回~4回目前半までは「来店プロモーション」つまり位置情報データを使っていかにユーザーを店舗に呼び込むかに焦点を当ててお話してきました。しかし企業側のゴールは来店させて終わりではなく店舗で購入してもらう、もしくは店舗で体験をしてもらった後、ECで購入、更にLTVを上げていく事が重要になります。

つまり来店プロモーションという点でとらえるのではなく、ユーザーの行動を分析し、来店促進の施策を打ち、来店後のユーザーの行動を分析し、CRMへとつなげる「線」で考えていく事が求められるようになります。

図5:ユーザーの行動を分析し、来店促進の施策を打ち、来店後のユーザーの行動を分析し、CRMへとつなげる

出典:オプト

また昨今、中国を中心にOMOという概念が普及しつつあります。OMOとは「Online Merges Offline」直訳すると「オンラインとオフラインの融合」となり、OnlineがOfflineをMergeすると捉えることができます。つまりオフラインでもオンラインのようにデジタルデータを活用し、高速にPDCAを回すことで「顧客体験を最適化」することがOMOの根底にある考えと言えるでしょう。

図6:OMOとは「Online Merges Offline」(直訳で「オンラインとオフラインの融合」)

出典:オプト

その為には顧客一人一人のデータを把握する必要があり、そのデータを蓄積するためのプラットフォームとしてCDP(Customer Data Platform)が注目を集めています。

(機会があれば別の機会にCDPについては触れたいと思います)

今後、リテール(有店舗事業者)業界は飛躍的にデジタルシフトが進んでいくでしょう。その中心にはOMOの考えがあり、OMOを実現するためにCDPのようなデータプラットフォームが普及していくと考えています。「位置情報」というデータもOMOを実現するための手法の一つになっていくはずです。

最後少し話が大きくなりましたが、位置情報を活用した来店プロモーションは、あくまで顧客体験を最適化するための一つの手段に過ぎないということを念頭に今後のプロモーションに活用して頂きたいと考えています。

ABOUT 本郷 一也

本郷 一也

株式会社オプト オムニチャネルイノベーションセンターO2O戦略部 部長 兼 

株式会社コネクトム 取締役

大学卒業後、株式会社オプトへ入社。 2007年オプトグループのクロスフィニティへ出向後、営業・プロダクトマネージャーを経て2013年2月に執行役員に就任。子会社であるクロスフィニティ台湾の董事(取締役)を経験後、2018年1月株式会社オプトへ帰任。O2Oプロジェクトの立ち上げに従事し、グループ横断組織オムニチャネルイノベーションセンターを組成。同年4月株式会社コネクトムの取締役に就任。有店舗事業者の販促課題をデジタルの力で解決に導くことをビジョンとしている。