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小売店からメーカー、来店促進から棚取り支援へ-Fringeが語る、広がる来店計測の可能性 [インタビュー]

デジタルマーケティングサービスを提供するFringeは、同社が運用を手掛けてきたGoogleストアビジットの来店コンバージョン数が累計で330万件を突破したことを公表、来店施策の専門チーム”Store Visit Marketing Team”も発足させた。

国内でGoogleストアビジット運用の先行事例ともいえる同社の取り組みを踏まえて、Googleストアビジットの広告運用における取組の詳細と今後の展望について、同社広告ビジネス事業部シニアマネージャー三木良平氏と、同アカウントエグゼクティブ廣島嘉宜氏に、お話を伺った。

(聞き手:ExchangeWire Japan 野下 智之)

Googleストアビジットを先行導入

自己紹介をお願いします

三木氏 現在広告事業の事業職は60名程で、私は小売店様を中心として、個別化したKPIを追っている広告主様のマーケティング支援をするチームを統括しています。

廣島氏 私は三木と同じチームに所属し、運用コンサルをしています。前職も同様にリスティングのコンサル系の会社に所属していました。提案から運用までを行っています。

貴社におけるGoogleストアビジット導入支援のこれまでの経緯についてお聞かせください

廣島氏 当社ではGoogleのストアビジットを、2016年6月に小売店様向けに導入を開始しました。この頃既にGoogleは米国では既にストアビジットの提供を開始していましたが、日本はまだ正式な提供は始まっていませんでした。この小売店様は、日本でのストアビジットの導入は初期の1社であると聞いております。

Googleストアビジットの導入には条件があります。一つはGoogleマイビジネスに住所情報を登録して、アカウントと連携をさせることです。そして二つ目は、店舗数が30店舗あることが必要、そして、クリック数が月間で10万クリックあることが必要というものです。

当時クライアントの小売店様のオフラインとオンラインとで売上の最大化を図ることが必要とされていました。

当社が日本において初期の頃からGoogleストアビジットの取り扱いが出来たのは、クライアント様に恵まれたということ、そしてもう一つはGoogleさんから理解を得られて、良い関係性の構築を築くことが出来たからです。

当社はGoogleストアビジットを先行的に使わせていただくことが出来、先進的な事例を作ることで他社との差別化を図っていきたいという気持ちがありましたが、それがかないました。このクライアントである小売店様とは、Googleストアビジットの導入を機にお付き合いを始めました。

導入のポイントはGoogleマイビジネス

Googleストアビジットは、実際にどのようなステップを踏んで導入に至るのでしょうか?

廣島氏 まずは、広告主様にGoogleマイビジネスに登録をしていただくことが必要です。

細かい設定が幾つか求められますが、Google広告との紐付けさえすれば、実装可能になります。

三木氏 ただ、作業としてはGoogleマイビジネスを紐づける登録作業が、意外と複雑であったりもします。この点を理解することは、当初私たちも苦労した点です。

廣島氏 Googleマイビジネスの整理が出来ていないということが、意外と実情であったりもします。同じ会社の中でも、誰が管理をしているのかということも、統一されていなかったりすることもありますので、まずはそこを管理するところから始める必要があります。

累計330万件のコンバージョンはどのようにして積み重ねてこられましたか?

廣島氏 広告主様が増えたという側面もありますが、私たちがこれまで継続して支援してきたクライアント企業様の来店実績が蓄積してきているということが大きいです。来店計測に対応するGoogleのプロダクトも、当初の検索連動型広告のみから広がり、現在はGDNやYouTubeのTrueViewにも対応をしています。

当社の事例では、特にYouTubeのTrueViewとの相性が良く、これまでの累計来店数における貢献度が高いという状況です。

広がる顧客層、小売店からメーカーへ

貴社ではメーカーによる広告出稿の来店計測も支援しているのですか?

廣島氏 はい、2017年12月に実施した施策です。このメーカー様は店舗を持っておられず、あるドラッグストアチェーン店様の店舗への来店数を可視化しました。

三木氏 メーカー様の営業戦略の一環としてドラッグストアの売り場の棚取りをするための施策として実施しました。

廣島氏 小売店への送客にどれだけ貢献しているのかということをレポートすることで、小売店に対する販売促進活動につながるということが、メーカー様にとってのメリットになります。

メーカーとして小売店にどのくらい送客に貢献しているのかというファクトデータを獲れるというのは、非常に価値のあることになります。

このメーカー様については、現在も他の薬局様への送客施策で支援させていただいています。

三木氏 これはメーカー様側にとっても、インパクトのある新しい施策であったとのことです。

成功要因は、正確なターゲティング設定

施策が成功した要因は何でしょうか?

廣島氏 正確なターゲティング設計にあります。来店をKPIとしたときに、比較対象に上がるのは、テレビまたはチラシです。テレビはもとより、チラシに関してもWeb広告ほどの精度の高いターゲティングが出来ません。当社のクライアントである小売店様に関しては、非常に細かいターゲティングをして広告を当てています。

そして、それぞれのターゲティングごとに、来店率を計測しています。

三木氏 入札もまた同様に緻密に行っており、店舗からの距離に応じて単価を変える、例えば店舗から半径5キロメートル以内のユーザーには入札単価を高くするというような細かな調整を行っています。

Googleストアビジットの来店計測支援サービスの提供にあたり、何らかのフィーを取られるのですか?

廣島氏 導入フィーはいただきません。通常の広告運用におけるマージンとしていただく形になります。

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三木氏 今後については、例えばメーカー様の棚取りを支援するコンサルティングをさせて頂くというような、新しいビジネスモデルも考えています。

小売業の企業様にとってもビジネスチャンスがあると思っています。小売業者側でプロモーションを展開する際、その費用の一部をメーカー様に協賛をしてもらい、小売業者様はローコストで来店数を増やすことが出来るというようなことも出来得ることになります。このような領域を私たちが支援することも出来るかもしれません。

廣島氏 ドラッグストアやコンビニ、家電量販店、スーパーなどがターゲットになりますね。

棚割のプロモーション支援サービスも視野に

このビジネスに関して、今後の目標についてお聞かせください

三木氏 直近でGoogleがアフィリエイト住所オプションという機能をリリースしました。これにより、メーカー様は小売店様のGoogleマイビジネスと連携をする必要なく、小売店企業の来店コンバージョンを計測することが出来るようになりました。

これを使ったメーカー企業様への提案は業界でもこれからであると認識しており、当社としても積極的な提案をしていきたいと考えております。

写真2

廣島氏 全国で83ヶ所のチェーン店が対象となっており、これらのチェーン店を訪問したユーザーの来店数は、チェーン店単位で集計できるようになりました。

メーカーからしたら、これらの店舗にどのくらい誘導できたかが可視化できるようになるのです。

三木氏 当社がベータ版から取り組んできた来店コンバージョン計測のノウハウをもとに、O2Oのパッケージ商品を作り、広告主様に提案を進めていくというようなことを、この1年間はしっかりと取り組んでいきたいと考えています。

廣島氏 メーカー様からご要望があれば、来店効果のレポートを携えて、小売店様への棚取りの営業に同行もさせて頂くというようなことも視野に入れて取り組んでまいります。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。