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コミュニケーションの改善と効果で、日本の広告会社のサービスレベルを引き上げる [インタビュー]

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2018年5月1日サイバーエージェントは、従来よりも幅広いクライアント層に対する広告・マーケティング支援業務を提供する、株式会社サイバーエースを設立した。

その背景や、限られた広告予算規模のクライアントから得られる収益範囲で、どのようにサービスレベルを維持しながら収益化を図っていくのかについて、同社代表取締役 西島大氏にお話を伺った。

(聞き手:ExchangeWire Japan 野下 智之)

月額予算50万円から対応

― 自己紹介をお願いします

2009年に新卒で入社し、インターネット広告事業本部 西日本事業部、大阪支社に配属になりました。3年後に福岡異動し局長として、6年半ほど九州地区の責任者をしていました。
九州では、売上の7割が通販、残り3割がスマホゲーム系、教育、不動産などのクライアントでした。直近は、北の札幌まで営業範囲を広げています。
そして、今月5月に当社立ち上げに当たり東京に異動してきました。

― 貴社は九州でもこれまで大手の広告主に絞って取引をされてきたのですよね?

そうですね、やはりマーケットのトップのお客様、大きなデジタル予算を持っているお客様から攻めていきました。これからチャレンジしていきたい、これから事業を大きくしていきたいというようなお客様をサポートしきれていなかったのがこれまでです。これは会社の課題であると思っており、何度も歯がゆい想いをしてきました。

今回設立したサイバーエースでは、月額の広告予算が50万円規模のお客様もお手伝いをさせて頂けるようになりました。

― そうするとグループ全体として見たとき、ターゲットクライアントの月額予算の下限を下げられたということですね?

はい。引き合いを戴いた場合には、そのような形でお手伝いさせていただきます。
今後、大手広告プラットフォームを中心に共同でセミナーをするなど、新たにお取引をさせて頂けそうなクライアント層を獲得しに行くつもりです。

― 拠点は東京に置くのでしょうか?

はい、地方には、初回は訪問しますが、その後はクライアントと一定のコミュニケーションが取れ、信頼関係が構築できたタイミングで、テレカンやオンラインツールでやり取りをします。地方拠点については、今後、顧客のニーズを伺った上で、必要があれば作っていこうと思います。

― エリアという観点でターゲットはどこかに設定しているのでしょうか?

最初は首都圏をターゲットにします。首都圏において、現在サイバーエージェントとお取引がなかったクライアント層をターゲットにします。
そして、大阪、名古屋、福岡、札幌などに広げていく予定です。

バックアップは、1000名を超える運営体制

― 競合が多い中でどのように差別化をされていくのでしょうか?

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当社では、広告運用やクリエイティブ制作を専門に行う子会社があります。約1,000名の体制を構える株式会社シーエー・アドバンスでは、広告運用を専門に行っており、またクリエイティブにおいては、静止画のバナークリエイティブを制作する株式会社モノクラム、動画クリエイティブを制作する株式会社ムービーモンスターと連携を図ります。
このバックアップ体制に加えてテクノロジーを駆使することで、広告効果を生み出し、顧客接点を最大化する仕組みを作っていく予定です。

― 予算規模がそう大きくないクライアント層向けの広告代理店ビジネスは、収益性の観点から、皆さんなかなか進出しするのが難しい領域であるといわれていますよね。

はい、その通りです。これまで大阪と福岡で営業を行っていた際に、「この予算規模だと取引をしてもらえないですよね」「他の代理店さんで取引しているけど全然連絡を貰えないのです」というようなお客様の声を良く聞くことが多々ありました。

私たちは、このような状況を是正したいと思っていました。元々は、子会社化ではなく事業部レベルで取り組もう、という話でしたが、役員と話をする中で、やるのであれば、会社として切り出し徹底して取り組んでいこうということになり、今回の子会社設立に至りました。

広告代理店ビジネスは、常に生産性が課題になり、クライアントの月額予算に合わせてサービスレベルを調整せざるを得ないこともあります。ですが一方で、クライアント側からすれば、1億円であれ100万円であれ、それは大切なお金です。100万円のご予算でも、満足度を最大化させて差し上げることが必要です。そこを両立させる仕組みづくりをまさに今、進めているところです。

各広告プラットフォーマーも、今回の当社の取り組みに対して大きな期待を寄せていただいており、今後協業をしていく予定です。

ツールを使い、頻度を高めてスピードを上げる

― 現在仕込んでいるプロダクトはありますか?

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はい、将来的に独自性のあるプロダクトを提供していくことも視野に入れています。
また、クライアント向けのレポーティングについては、自動化に向けた準備を進めています。データの集計や送付などの作業を不要にすることで、より顧客に向き合う時間を増やしながら生産性を高めることが出来ます。これによりクライアントとのコミュニケーション頻度を高められると考えています。

テレビ会議やChatWork、Slackなどを使い、レスポンスの頻度を高めてスピードを上げてまいります。クライアント側からも、このようなコミュニケーションツールを使いたいというご要望もいただいていますし、その導入支援も我々でサポートさせていただこうと思います。

― クライアント側の業種はどのようなところが多いのでしょうか?

Webでビジネスが完結するダイレクト系のお客様、例えば単品通販系のEコマースや、大学などの教育機関、日本に進出したばかりの外資企業、大手企業の新規事業部門、スタートアップ系のアプリ企業などをターゲットにしています。

クライアントの満足度を上げることに集中

― 今後事業を拡大していかれるに当たってのお考えをお聞かせください。

まず、クライアントの満足度をどれだけ高めることが出来るのか、ということに集中していきます。現状、中規模クライアント領域の市場では、広告会社とクライアントとのコミュニケーションのあり方が課題であると思っています。そのためにコミュニケーションツールや仕組みを作っていくなどにより、これを解消する。
そしてもう一つは、効果をしっかりとクライアントにお戻しする。
この2点に集中し、顧客満足度を徹底的に高めていこうと考えています。

これにより、日本の広告会社のサービスレベルを引き上げていくつもりです。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。