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サイバーエージェントの米国での戦いかた [インタビュー]

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サイバーエージェントは今、執行役員でインターネット広告事業部門のグローバルビジネス本部を統括する岡田 寿代氏自らが米国に渡り、ニューヨーク支社を立ち上げて陣頭指揮取る。
同社は米国でどのように戦っていこうとしているのだろうか。ご本人にお話を伺った。

(聞き手:ExchangeWire Japan 野下 智之)

自ら赴き、東と西から攻める

― 米国ビジネスの現状とニューヨーク支社立ち上げの背景についてお聞かせください。

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サイバーエージェントでは、2014年にグローバルビジネスを始めて、米国の西海岸や韓国、中国などの立ち上げをするなど拠点を広げてきました。今後どこを狙うかという話の中で、一番マーケットが大きく、成長機会が大きな米国の市場に照準を当てました。

当社はもともと2008年に同じ米国のサンフランシスコにオフィスを作りました。そしてその後2015年に改めて広告事業本部がオフィスを作り再拠点化しました。

ご存じの通り米国の東と西とでは、文化が大きく違います。私たちはこれまで西ではゲーム会社の広告主とのお付き合いをさせていただきましたが、もう一方の東にも展開をして、両方の地域で取り組みをしてそれぞれの違いを踏まえてマーケットに適応していきたいと考えています。

今回米国の市場でしっかりと戦っていくために、私自身がニューヨークに赴き、駐在をして米国の東から西までの全てを担当しております。

― ニューヨークは今何名体制なのでしょうか?今後どのように組織を作っていくお考えですか?

今は3名ですが、6月には新卒社員も参画します。クリエイターの採用活動も現在行うなどしており、まさに今組織拡大を図っています。ニューヨークでは特に、クリエイターの採用を強化したいと考えています。デジタル広告の領域では、これからますますクリエイティブが求められるようになってきているからです。

米国参入の入り口は、メディアビジネス

― 米国ではどのように事業を拡大していこうとしているのでしょうか。

【「Daily Games」イメージ画像】

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出典:同社プレスリリース

まずは、「DailyGames」、「DailyApps」という、アプリを紹介する二つのメディアを立ち上げます。そして、アプリを運営する広告主のマーケティング支援をしてまいります。日本へのインバウンド需要を狙うのではなく、米国のお客様向けに米国におけるマーケティングの支援をしてまいります。

そのための私たちの戦略は、サイバーエージェントを、エージェンシーとしてではなくまずはメディアとして認知していただくということです。米国ではエージェンシーとして広告主を訪問すると、敬遠されがちです。最初はメディアとして広告主にアプローチをして、メディアを持つクリエイティブに強い会社として関係性を構築しながら、エージェンシーとしての強みを後から出していこうと考えています。

― 今回立ち上げたメディアの特徴についてお聞かせください

ゲームと非ゲームアプリを一覧で紹介するサイトです。ゲーム向け、非ゲーム向けとでわかれていて、それぞれで特集記事を動画で組むというようなものです。広告主に対する広告商品は、CPI固定型で提供をします。

― 広告代理店部門としてメディアを運営するのですか?

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はい、その通りです。サイバーエージェントの強みである、エンジニア、クリエイター、営業の全ての力を活かしつつ、最短でお客様のところに入り込んでいきたいと考えています。
米国の市場で成功している日本の広告会社は、そうそうありません。ですので、現地の広告会社がどのように成功しているのかを、注目しています。

― ちなみにどのような広告会社がベンチマークでしょうか?

60i3Qdigitalのような欧米系のアプリに強い代理店があり、彼らの動向は注目しています。
ですが彼らの成功の仕方と同じことをしていても、競争に勝つことは出来ません。
私たちがどのような強みを活かして勝っていくのかというところが重要なのです。

私たちサイバーエージェントがグローバルでNo.1を目指していくにあたり、何をしなければいけなくて、どうやっていくべきかをメンバーと議論し尽したなかで、この戦略に決めました。

― メディアの集客は自社でされるのですか?

はい、自社でやります。自社でマーケティングをすることにより、お客様のどのようなクリエイティブが最適であるかという秘訣が分かることは、メリットになります。
ですので、広告主へのクリエイティブの勝ちパターンのご提案もしやすいですし、しっかりと効果でお返しすることも出来ます。

メディアへの集客は、まずはFacebookやGoogleを中心に活用して、質のいいユーザーを獲得します。

Facebook、Google以外の選択肢を現地の広告主に提供

― 米国と日本とではマーケティング事情はどのように違いますか?

日本と比べると米国では店舗を持つ企業によるアプリを使ったマーケティングがとても進んでいます。アプリマーケティングに対して大変注力しています。
また米国の人たちは、全てをテクノロジーで解決しようというマインドは強いです。入札、レポートなどから全てを仕組み化するというところはすごいですね。

米国におけるアプリプロモーションは、FacebookやGoogleで運用をするのがメインです。恐らくは全体予算の6-7割をこの二つの媒体に割いています。ですが最近は、多くのアプリプロモーションがこの二つの媒体に集中し、獲得単価の高騰が課題となっています。
一方で、アプリ面のアドフラウド問題も深刻化する中で、配信先を広げることに慎重にもなっているのです。

そこで私たちは、アプリ広告主のために、単価をある程度固定して質のいいユーザーを獲得できる媒体を作り、提供をしていきます。
これは、日本で成功した私たちの取り組みを米国で展開したらどうなるのかということを検証するという、私たちのチャレンジでもあります。

― 現地での営業活動についてお聞かせください。どのように広告主にアプローチをしているのでしょうか?

基本的にはイベントでアプローチをして知り合いになったり、後は日本に進出したりとかアジアに進出したりされたときにお付き合いのあるお客さんもいらっしゃります。
活動の地域は基本的には、ニューヨーク、LA、サンフランシスコ、あとはイベントが数多く開かれるラスベガスが中心になります。

米国で成功をつくり、他の地域に

― 今後のお取り組みについてお聞かせください

米国の市場は引き続き伸びています。私たちにとっても大きな参入機会が目の前にあり、現地に根差した会社を作り上げてまいります。

今後は現地の人材を採用し、現地に根付いたエージェンシーを作っていきたいと思っています。少し英語が喋れるだけでは、現地では太刀打ちが出来ないことは明らかです。今まで各地で組織を作ってきた中で、国ごとにカルチャーがあります。私自身が現地でサイバーエージェントという会社自体の文化も理解してもらいつつ、現地に根差した組織を作りつつ、戦略作りを進めています。採用をした後は、現地のメンバーに任せていくという感じにしたいと思っています。

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繰り返しになりますが、米国のマーケットに対しては、サイバーエージェントの名前を、まずはメディアビジネスにおいて広げていきます。「DailyApps」、「DailyGames」という、良いメディアを持っているサイバーエージェントとして広告主と信頼関係を構築し、そこから広告会社としてのビジネスも広げていきます。当社は、メディア、マーケティング、クリエイティブすべての機能を持っており、海外の市場においても勝てるポイントは多いのです。勝つことを信じて、チャレンジしていきたいです。

また別角度ですが、中国や台湾から米国に進出する企業も、まさに支援させていただきたいと考えています。サイバーエージェントが中国で支援している中国の広告主による米国への進出も増えており、米国におけるプロモーション支援の需要も高まっています。
また、日本の市場が成熟しつつある中、日本のゲーム会社も海外への展開も増えていますが、2018年は米国への進出も増えるのではないかとみています。日本の広告主のご要望にもこたえて、支援をさせていただきたいと思っています。

米国は独特かつ最先端な市場です。この市場で成功を収めたら、ゆくゆくはそのモデルを欧州や東南アジアにも持っていきたいと考えています。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。