ピクセルトラッキングをAPI連携に置き換える ― シンプルかつ簡単な工程で得られるメリットとは
(翻訳:Performance Horizon社)
ピクセルベースのトラッキングを測定手法として使うのがどんどん難しくなってきていることは、マーケターのほとんどの方がご存じであろう。サードパーティークッキーの扱いに関するポリシーを導入し、ピクセルベースのトラッキングをブロックまたは制限しているブラウザもあれば、定期的にcookieを削除するウェブ利用者も増えている。したがって、最終的にはピクセルベースの測定をもっと信頼できるトラッキング手法に置き換える必要があるという考え方が、マーケティング現場の全体で強まっているのは無理もない。API連携がこの課題を解決してくれること、そしてAPI連携が実は難しいものではないことを、Performance Horizonのデプロイメント責任者、Si Fung氏(写真)が、ExchangeWireへの独占寄稿で明かしてくれた。
私が在籍するPerformance Horizonが主に関わっているアフィリエイトマーケティングでは、ピクセルベースのトラッキングが歴史的に広く使われてきました。デジタル広告や広告配信でも、ピクセルベースのトラッキングが一般的です。利用シーンにかかわらず、ピクセルベースのトラッキングは同じ障壁に直面しています。
弊社をはじめ、同業の各社は、数ある課題のなかでもブラウザのポリシーやユーザーのcookieの削除による影響を最小限に食い止めようと大いに努力しています。しかし、多くの専門家が、最終的にはピクセルベースのトラッキングから他の方法へ移行せざるを得ないとコメントしています。
そこで、API連携の導入です。
API連携によるトラッキングの改善
ピクセルベースのトラッキングが現在直面している課題を克服し、トラッキングとデータの完全性を守る最善の方法は、マーケティングテクノロジーソリューションプロバイダーの協力を得てAPI連携を構築することです。API連携には次のメリットがあります。
- | サードパーティークッキーを使用しないので、ブラウザのポリシーの影響を受けません。 |
- | より安全な情報の転送によって、移動中および保存中のデータのセキュリティを強化できます。 |
- | 堅牢かつ安全な方法であらゆるコンバージョンを追跡して測定します。cookieのブロックや削除が原因でトランザクションを捕捉しそこなうことがなくなります。 |
このような利点を考えると、多くのマーケターはピクセルベースのトラッキングをAPI連携に置き換えたいと考えるはずです。ただ、これまでは、API連携は難しい、あるいは導入に時間がかかるといった誤解があって、導入を先送りにしていた方が多いようです。
それでは、その懸念を取り除くお手伝いをいたしましょう。私がデプロイメント責任者として率いているチームは、毎年、多数のグローバルクライアント様が各種の連携手法を導入するのをお手伝いしています。連携の導入過程では、最初にピクセルベースのトラッキングを検討する企業が大多数ですが、API連携がいかに有利で簡単かを知ると、その考えを変える企業が少なくありません。
APIで 工程が簡単に
API連携は非常にシンプルで簡単な上、ピクセルベースのトラッキングを使うよりも高い信頼性を得られます。どれほどシンプルなのかを、アフィリエイトの場合を例にとってご説明しましょう。
1. | まずはじめにリンクによるリダイレクトがお使いのソリューションプロバイダーにて処理されます。 |
2. | 続いて、ソリューションプロバイダーが一意の識別子(ID)を作成します。Performance Horizonではこれを「clickref」と呼んでいます。このclickrefで、ソリューションプロバイダーは、利用者と、利用者がクリックしたリンクおよびそのリンクを掲載する媒体社の紐付けが可能になります。 |
3. | 次に、そのclickrefが広告主へと渡され、そこでファーストパーティのcookieが作成されます。これで広告主はその利用者を過去のマーケティング活動と紐付けられるようになります。 |
4. | 利用者が何かを購入した場合、広告主はファーストパーティのcookie内でclickrefの有無を確認し、ソリューションプロバイダーのAPI接続を開始します。 |
5. | 接続を介して、この購入の参照元となった特定のclickrefとともに、すべてのトランザクション情報が返されます。SafariのIntelligent Tracking Prevention(ITP)などのブラウザーポリシーによって影響を受けるのはサードパーティーのcookieだけで、ファーストパーティのcookieは無関係です。 |
コーダー1人、1~2週間の工程
API連携を導入するには、確かに技術チームのリソースが必要です。では、どの程度必要なのでしょうか。間違いなく、皆様が考えているような、何ヶ月もかかるというイメージより短いと思います。基本的な作業は、必要なデータを転送するようAPIを設定するのと、clickrefの値をcookieに取り込むためにストアのページに1行のコードを挿入することです。
これにどのくらいの時間がかかるかですが、API連携の作業に専念させられるコーダーが会社にいるなら、わずか1週間ないし2週間の工程です。企業によっては、すぐに業務を割り当てられるコーダーがいないために、もう少し時間がかかる場合もあるでしょう。とはいえ、必要なリソースはかなり少なくて済むのが普通です。
API連携への移行にあたって
コーダーを確保できるかどうかは、技術チームのリソース量と、会社がどれだけAPI連携を重視するかにかかってきます。API連携を技術チームの優先事項に加えてもらうには、基本的な情報として、次の4つを提示することをお勧めします。
1. | なぜ、ピクセルベースのトラッキングが難しくなってきているのか、そしてなぜ、最終的には置き換える必要があるのか。 |
2. | ITPなどのブラウザーポリシーや利用者によるcookieの削除が原因で、すでにピクセルベースのトラッキングが売上を逃している実態に関する情報。 |
3. | データの完全性と品質、それに情報セキュリティや消費者のプライバシーの向上に役立つソリューションとして、API連携がいかに優れているか。 |
4. | 社内の上層部がリソース投入の必要性を理解できるよう、基本的な作業の概要と、APIの利点。これについては、皆様のテクノロジープロバイダーがお手伝いできるはずです。 |
API連携は、従来型の広告、あるいはアフィリエイトプログラム活動のどちらからでも、オンラインのコンバージョンをトラッキングする手段として、より強固で確実、かつ正確な方法です。今すぐ、技術チームとAPI連携について話し合う予定をいれましょう。明日ではもう遅いかもしれません。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。