現在のデジタル広告主を解説する:パフォーマンス重視企業とエンタープライズ系企業
(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)
サービスレイヤーは複雑な環境です。既存代理店、コンサルタント、ベンダーは、それぞれにマーケティング担当者と直接仕事を行なっていますが、それぞれがサービスレイヤーに関して 異なる角度からアプローチしています。
既存代理店は、複雑な環境下でのプロセスの効率化を実施している最中です。大手ブランドのクライアントが投資を抑制し、FacebookとGoogleのデジタルにおける独占が続く中、彼らのビジネスモデルの変化の必要性は他よりも緊急です。
(監査企業を含む)コンサルタントは、高いレベルのコンサルティングを提供することで、エージェンシーモデルを破壊することができると考えているようですが、どの程度時間がかかるのかについてはわかりません。
ベンダーは、代理店から活用されない場合を考慮し、ブランド企業に直接アプローチをしています。複雑なサービス契約内容を伴う世界規模でのテクノロジーに関する取引は一般的なものとなっています。
それぞれの戦略を理解するためには、現代のデジタル広告主を、パフォーマンス重視の広告主企業とエンタープライズ系の広告主企業とに分け、詳しく理解する必要があります。
ある賢明な読者から、この点はブランドとパフォーマンスの関係と変わらないのではないかといった問い合わせをTwitterを通して受けました。これはある程度正しいのですが、この新たな定義はより細かなもので、テクノロジー、データ、収益性、透明性、実現性などとの関係性をより重視しています。
以下では、パフォーマンス重視の広告主とエンタープライズ系広告主について細かく解説をおこない、ベンダー、代理店、コンサルティング企業のビジネスチャンスについて解説をしてみたいと思います。
1.パフォーマンス重視の広告主(The Outcomes-Based Advertiser)
成果を重視する広告主は、結果のみに関心があるともいえます。 GoogleとFacebookの成功は高い成果に基づいており、成果が伴わない場合、投資は引き上げられてしまいます。サービスレイヤーでは、広告主のメディア投資のリスクを減らし、合意に基づいた結果を提供する必要があります。 透明性は、メディア支出の配分とパフォーマンスによって提供されますが、このシナリオにおいてマージンは問題ではありません。
Source: ExchangeWire
- 図表内テキストの翻訳 -
上部:結果重視の広告主上部2:独立した測定及びアトリビューション図表左から:広告主>エージェンシー・TDA・ベンダー>メディア>公表されないマージン>合意に基づく結果(CPA、CPIまたはその他の測定値)下部左:グロスによる費用割当、サイトURL、キャンペーンのパフォーマンスをクライアントに共有下部右:エージェンシー・TDA・ベンダーは自社の費用を用いて在庫を前もって購入することで広告主の支出リスクを軽減
機会はどこにあるのか
既存代理店(The Holding Groups)
彼らはこのビジネスの多くを獲得する機会があります。 しかし、私が最近の記事で指摘した(https://www.exchangewire.com/blog/2018/02/27/outcome-based-model-logical-route-agencies/)ように、クライアントとの働き方は変換期を迎えています。
テクノロジー・ドリブン・エージェンシー(The Tech-Driven Agency)
TDA(The Tech-Driven Agency)は、この分類においては広告主を選択できる強力な立場にあります。アドネットワークは、代理店の仲買により情報は閉ざされており、クライアントにより近づいて行く変化を見せています。 AppNexus / IPONWEB / DBM / The Trade Deskなどの裏側を構築している最適化ソリューションの数々は、成果主義のビジネスにおいて収益性の高いビジネスを構築できることでしょう。
コンサルティング企業(Consultancies)
コンサルティング企業はメディア事業を好まず、より現実の世界における投資を好むでしょう。
2.エンタープライズ系広告主(The Enterprise Advertiser)
エンタープライズ系広告主は、パフォーマンス重視の広告主よりも複雑ですが、デジタル購入予算の規模が大きい場合には無視することはできません。 彼らは、テクノロジー、データ、サプライチェーンなどの領域での内製化を検討しています。
Source: ExchangeWire
- 図表内テキストの翻訳 -
最上部:エンタープライズ系広告主左上部:内製化のためのエコシステム左青丸:エンタープライズ系広告主横赤丸:テクノロジーベンダーとの関係、データ管理・メディア購買、サプライチェーン管理
オレンジ丸:コンサルティング戦略、マニュアルオペレーションと透明度の高いオペレーション実施、クリエイティブ右:メディアOutsorced:アウトソーシングDirect..:直接的な購買
機会はどこにあるのか
既存代理店(The Holding Groups)
彼らはこの分野で多くのものを失っています。 P&Gのマーケティング責任者であるMark Pritchard氏やその他のFMCG企業は、内製されている項目だけでなく、あらゆる場所でのコスト削減を検討しています。 マージンを増やすような機会はありません。データ、テクノロジー、および運営は全て内製化されています。エージェンシーは「コンサルティング戦略」実行のために運営やクリエイティブに関しての業務を獲得しようと懸命に動いています。運営やテクノロジーの導入などの分野は利益率の高い事業と考えることができます。このタイプのクライアントはプログラマティック化が進んでいます。ビジネスの多くを失い、低マージンのマニュアルプロセスのみが残されることでしょう。
テクノロジーエージェンシー(The Tech-Driven Agency)
これは勝利を収めるのが大変な作業です。メンテナンス性の高いブランド企業に携わるメリットは財務上の利益に繋がりません。P&GとAudience Scienceのように、あまりにも多くの注記事項が存在するケースが見受けられます。TDAへの私のアドバイスは、とにかく注意深く対応することです。
ベンダー(Vendors)
ベンダーのここでの大きな機会はテクノロジーの販売です。エンタープライズ系広告主は管理が難しいため(上記参照)、大きく運営に関わらない方が良いでしょう。
コンサルティング企業(Consultancies)
コンサルタントは、このビジネス、特に「戦略的コンサルタンティング」を求めています。 Cレベルとの緊密な関係を築くことで、コンサルタントはこのビジネスの大部分を獲得する可能性が高まります。 クリエイティブに関しても魅力的な対象として写りますが、すぐに収益性に問題がある点に気づくでしょう。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。