Google Chromeのアドブロック対応はアプリ広告移行のよいきっかけに
(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)
アドブロックは新しいものではないが、継続的に新規機能がリリースされ、広告主やパブリッシャーにとって頭痛の種となっている。
Mobfox社のテクノロジー部門VPであるNoam Neumann氏は、これらの変化は、モバイルアプリ広告への移行を進めているパブリッシャーにとっては正しい方向性であると語ってくれた。
Googleの新しいアドブロックをサポートしたChromeは、2018年2月15日に公開されます。このバージョンでは、フルページインタースティシャル広告、自動再生音付き広告、フラッシュ広告などCoalition for Better Adsが設定したガイドラインに基づいて侵害的な広告をブロックします。
この動きは、業界の強大なプレイヤーが業界標準を設定する例の一つです。2016年にGoogleはChromeですべてのAdobe Flash Playerコンテンツをブロックし、2017年にはads.txtの採用を拡大しました。
この新しい変更により、Chromeのアドブロッカーが広告業界全体にどのように影響するかについてはまだ疑問の余地がありますが、パブリッシャーにとっては、アプリ内モバイル広告に移行を検討すべき大きな変更点であると感じます。
アプリ内広告におけるポジションを確立できていない企業は、GoogleのChromeの今回の変更によって、管理のしやすい広告コンテンツとフォーマットをサポートし、高いリテンション及びクリックスルー率、より良いデータ利用やオーディエンスターゲティングが実施できる上に不正行為の少ない新たなプラットフォームに気づくことが出来たという観点から、Google Chromeに感謝をしても不思議ではありません。
パブリッシャーにとってのインパクト
Google Chromeのアドブロッカーのリリースは、デスクトップやモバイルウェブを重視しているウェブパブリッシャーにとっては確かに難しいことです。 ほとんどの事業者にとって、2月以降、Googleの業界シェアが高まるにつれて、少なくとも初期段階では広告収入が減少する可能性が高いと考えられています。
しかし、一部の人は、パブリッシャーが現在の活動を改める良い機会だと考えて楽観的に捉えている人もいます。彼らは、魅力的なデスクトップやモバイルのウェブパブリッシャーがデジタルユーザーエクスペリエンスに優先的に用いられ、プレロールが廃れ、スキップ可能な広告がより多く採用するなどによって、高品質な広告がもたらされる潜在的な可能性を信じています。
パブリッシャーがすべきことは?
パブリッシャーにはいくつかの選択肢があります。 Chromeをサポートしないサイトのみを選択することもできますが、Chromeが世界で最も利用され、世界シェアの50%以上を占めることを考えても、あまり現実的なオプションとは考えられません。競合はほとんど存在しないような状況です。
もう一つの選択肢は新たなバージョンにおける抜け道を活用することです。CMSWire社によると、Googleの新しい広告標準にはいくつかのギャップが存在しています。 たとえば、ユーザーがあるコンテンツにアクティブでなくなった際のポップアップ広告表示は、現在ガイドラインで禁止されていません。
ブランド企業は、広告なしでコンテンツの収益をあげるための、手数料やサービス・商品販売などの新たな代替手法に焦点を当てる必要があるかもしれません。
しかし、最も可能性の高いシナリオは、この変化によって、デスクトップおよびモバイルウェブパブリッシャーが、アプリ内モバイル広告へのシフトが業界全体に起きるという点です。業界の動向として、GoogleとFacebookはウォールドガーデンを構築し続けており、パブリッシャーは代替となる収益ソリューションを探しています。アプリ内の広告には様々な付加価値があり、ウォールドガーデンの支障を受けない最適なソリューションです。
アプリ内広告への動き
アドブロックは新しいものではありません。 2011年に3,000万人のユーザーがデスクトップブラウザでアドブロックソフトを使用していましたが、2016年12月には2,36億人がデスクトップブラウザ上で、3.8億人がモバイルブラウザ上で広告をブロックしました。広告ブロックの人気が徐々に高まり、広告主やパブリッシャーにとって障害となっています。
しかしながら、アドブロックソフトは、モバイルアプリにはそれほど影響を与えていません。 その結果、アプリにおいては、広告主が広告のフォーマットやコンテンツを引き続きコントロール可能で、コンテンツや商取引の推進におけるより魅力的な環境となっています。
消費者は、モバイルWeb上ではわずか13%の時間しか費やしていないのに対して、アプリでは87%もの時間を消費しています。さらに、アプリ内広告は、現在最も急速に成長しているモバイル広告の形態です。米国のアプリ広告収入は2020年までに70億ドル以上増加すると予測されています。これまでのところ、モバイルウェブに固執しているのはニュースサイトだけで、ゲームやソーシャルメディアなどはモバイルウェブよりもアプリ広告を優先するように変化してきています。
Google Chromeの変更によりアプリ内機能が強化され、時間の経過とともに、アプリ広告の需要と競争は増していくでしょう。アプリ内のプログラマティック在庫はパブリッシャーにとってより収益性の高いものと変化していくでしょう。
Google Chromeのアドブロッカーの登場と、一方で、アプリ内モバイル広告が、ファーストパーティデータがより活用でき、広告詐欺の被害にあう可能性が少ない点、ユーザリーチやリテンションの面でより優れている点を考慮すると、アプリ内広告へのシフトはパブリッシャーがとるべき賢明な選択肢のように感じます。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。