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市場は次の成長フェーズに-サイバーエージェント事業責任者に聞く2018年のインフィード広告市場- [インタビュー]


サイバーエージェントは、インフィード広告の市場調査結果を公表した。
2014年以降3回目となる調査結果の背景について、同社 インターネット広告事業本部 統括の淵之上 弘氏にお話を伺った。

(聞き手:ExchangeWire JAPAN 野下 智之)

ソーシャルがけん引し順調に成長

― インフィード広告市場の現状についてお聞かせください

図1

インフィード広告市場は引き続き順調に伸びており、2017年も高い成長率で推移しました。
Facebook、Twitter、Instagramなどの需要が大きく拡大して市場全体の成長をけん引しました。動画フォーマットと親和性の高いインフィード広告は、ナショナルクライアントによるブランディング目的の活用も増えています。

― 貴社での取り扱い媒体の状況についてお聞かせください

写真2

今当社で主にインフィード媒体とカテゴライズして運用をしているのは、Facebook/Instagram、Twitter、LINE、Yahoo!インフィード、スマートニュース、Amebaなどです。

インフィード広告と他の広告とでは、同じクリエイティブを使い続けたときのCTRの減衰速度が異なります。バナー広告の場合は、効果の高いクリエイティブのバナーを入稿すると1か月くらいは大きな低下は見られません。インフィード広告の場合、1週間ほど同じクリエイティブを使い続けると、CTRはかなり低下します。これを各媒体ごとに検証して、この媒体はインフィード型、あるいはこの媒体は(バナー)アドネットワーク型であるというような判定を社内で行いました。(バナー)アドネットワークの場合、なかなかCTRが落ちないという特性が見いだせます。
そして、当社では運用方法の観点で各媒体をインフィード型、あるいはアドネットワーク型と分けて運用をしています。

Webとアプリ、どちらに振れるか?

― 広告主のトレンドについてお聞かせください。Webプロモーション需要とアプリプロモーション需要の現状と今後について、どのように認識されていますか?

まず、前提として出稿額はほぼ全ての広告主業種で伸びています。全体における比率(シェア)という観点では、Webとアプリとではそれほど変わらないという認識です。アプリにおいては、ゲームアプリの比率が少し落ちてきていますが、非ゲームの割合が高まっています。

Webとアプリ、今後市場がどちらに振れていくかについては、今はまだ定まっていないと認識しています。

今後増える、広告会社の見せどころ

― 広告プラットフォーム・媒体側で注目されている動きはありますか?

図2

FacebookやTwitterなどの広告プラットフォームによるフォーマットの開発は日進月歩で行われており、様々な見せ方の新しいフォーマットが出てきています。提供される場としてはかなり自由度が高くなってきており、私たち広告会社が出来ることが増えてきました。まさに広告会社によるクリエイティブの腕の見せどころは増えてきています。

当社が注目する縦型フォーマットは、特にInstagramのストーリーズ広告を中心に活用が進んでいます。この広告では広告をタップするのではなくスワイプするという新しいモーションが取り入れられているのが新しいところであり、今後も普及が進むと予想しています。

― ユーザーとインフィード広告との関係には、変化は見られますか?

以前よりも広告の質の良し悪しがより際立つようになりました。質の悪い広告は、ユーザーにクリックされなくなりました。そして広告プラットフォーム側にユーザーの情報も溜まってきており、質の悪い広告はそもそも表示されないようになりました。このため、広告ごとの効果の差が際立つようになってきたと感じています。

また、バナー広告においてしばしば見られるユーザーによる誤タップが、インフィード広告においては少なくなりました。

広告のクリック率は、インフィード広告を取り扱い始めた頃から比べて、全体的に下がったという印象は持っておりません。恐らく広告プラットフォーム側も、クリック率が下がらないように様々な対策を講じているのでしょう。

― 現在認識されている課題についておきかせください

写真3

Webとアプリなどの複数のチャネルで展開する広告プロモーションにおいて、それぞれをどのように評価するのかについては、現状の課題でもあり今後のチャンスであるともいえます。

現在のアドテクノロジーにおいては、Webとアプリとでは広告効果計測の方法が異なるため、広告主はどちらに、あるいはどのように予算を配分すべきかを判断するうえで、まだあいまいな部分が残されています。当社でも現在Webとアプリの両方の効果・効率を検証し続けている段階です。

また、各プラットフォーム・媒体で、広告の成果ポイントの定義さえも異なっています。全体の中でこれらの媒体が定義する成果をどう評価していくかということに日々取り組んでいます。

― 2018年の市場についてお聞かせください

図3
2018年のインフィード広告市場は、これまでの急成長を経て次の成長フェーズに移行するでしょう。過去数年に見られたLINEやYahoo!インフィードなど大きな新しい媒体の追加による成長は今のところInstagramくらいしか見当たりません。また、既に規模も大きくなっており、成長率は2017年と比べると緩やかになるのではないでしょうか。

広告フォーマットの動画化が引き続き進むでしょう。また縦型やインタラクティブなものが普及してくるでしょう。Facebookのキャンバス広告や、ゲームのプレイアブルアドのように、広告上でユーザーが何らかの行動が出来るというようになってくるでしょうし、当社としてもそのような方向性で注力をしてまいります。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。