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デジタルプロモーション最前線!運用型広告で効果の最大化を目指す―第三回:今さら聞けない、アプリプロモーションを始める前に知っておきたいこと |WireColumn

 

インターネット広告代理店のオプトが執筆する本連載では、運用型広告を活用する上で外せないメディアをピックアップし、活用のポイントを3回にわたり解説していきます。最終回の今回は、いまや200万個以上もの数が溢れていると言われる「アプリ」のプロモーションの基本についてです。

1.アプリプロモーションの現在

スマートフォンの普及に伴うユーザーのモバイルシフトが本格的に進む中で、広告もまた例外ではなく、2016年のインターネット広告費1兆378億円のうち、スマートフォン広告費は6,476億円と6割を超え、前年比で130%と高い成長を遂げています*1。

スマートフォン広告費の成長の中心ともいえるのが、アプリプロモーション。いまやインターネット上の様々な場所で、ゲームやフリマ、キュレーションメディアなど、アプリを宣伝するための広告を見かけるようになりました。アプリプロモーションが、国内で本格的に始まったのは、2012年から2013年にかけて。Webブラウザとは効果計測の方法が違うスマートフォンアプリ向けの広告効果測定SDK*2が登場したことで、アプリのプロモーションが活発化し、2011年に249億円だったスマートフォン広告費の成長を牽引、2012年に856億円、2013年に1,166億円と拡大しました*3。

2.アプリプロモーションの目的の変化

アプリプロモーションが活発化した当初は、広告配信が可能なメディアが今よりも少なく、また細かい広告運用を行うツールも整っていなかったこともあり、インストール数を効率的に増やすことを目的としたプロモーションが一般的でした。しかし、この4~5年の間でアプリの数は200万個を超え、同時に広告配信が可能なメディアも増え、アプリのデータプラットフォームツールも整備されました。

【図1】

いまや、インストール数だけではなく、アプリのKGI達成に向け、より使ってくれるユーザー、より課金してくれるユーザーを分析し、そのユーザーを狙ったプロモーションが必要になっています。

3.アプリプロモーション効果計測ツールの変化とデータ活用

継続率や課金量、申し込み数などのコンバージョンを重視したプロモーションを行うためには、効果測定を正しく行う必要があります。アプリプロモーションにおいては、広告効果測定SDKを導入することで計測を可能とします。

このSDKにも、アプリ市場変遷の過程でトレンドが変わってきています。初期のインストール数重視型プロモーションの場合、流入元別に効果測定ができていれば問題なかったため、コスト面や運用者の使い勝手、サポート体制面などから、国内製のSDKが利用されるケースがほとんどでした。しかし、国内製のSDKは、特定の広告代理店が開発・提供している点から、プロモーションの柔軟性が失われやすいという問題もありました。しかし近年、海外製SDKがローカライズされ、日本へのサポートも充実してきており、SDKの選択肢が広がっています。

プロモーション目的の複雑化と、SDKの選択肢の拡大によって、それぞれのSDKが持つ機能を踏まえた選定や導入・測定に向けたコンサルテーションが必要となってきました。上記の環境変化に加えて、アプリの測定が難しいとされる要因の一つに、アプリストアの存在があります。Webと異なり、プログラムの書き換えの都度アプリストアへの申請が必要となるアプリは、効果測定手法を切り替えるたびに工数や費用がかかることとなり容易ではありません。そのため、効果測定SDKを導入するもっと前、アプリの開発段階からプロモーションのターゲットやKPIなどを見据えたSDKの選定、効果測定地点の設計が重要となります。

SDKの選定が重要な一例として、広告ID*4の取扱いや蓄積方法が異なる点が挙げられます。広告IDは、ユーザーのアプリインストール時に収集され、ユーザー分析に活用するもので、インストール済みユーザーの除外や、休眠ユーザーの呼び戻しを目的としたリエンゲージメント広告配信施策を可能とします。広告IDをデータとして取り出すための方法はSDKによって異なり、サービス提供会社に問い合わせが必要なものもあれば、管理画面から自由に取り出せるもの、自社でサーバーを立てて蓄積しカスタマイズができるものなど運用方法は様々です。こうした背景から、オプトでは、広告IDの蓄積、分析、活用に自社開発の「Spin App」*5を活用し、SDKの導入から初期設定までを専門チームでコンサルティングしています。

【図2】

SpinApp全体像

「Spin App」を活用することで、アプリ内行動データの収集と分析が一元管理でき、プロモーションの打ち手を増やすことができます。例えば、短期間で複数回アプリを起動しているユーザーの広告IDを取得し、FacebookやTwitter、Yahoo!などで類似ユーザーに対する拡張配信を行うことが可能です。この方法は、継続率の高いユーザーへアプローチできるため、通常のインストール類似配信に比べて、同程度のインストール単価でありながら、継続率が110~120%高いユーザーを獲得できたという実績も出ています。

【図3】

SpinAppを活用したターゲティング

4.メディアプランニングの変化

プロモーションKPIとしてインストール数が最も重視されていた頃は、アドネットワーク広告とリワード広告が一般的でしたが、SDKとメディアとの連携が進み、十分な効果測定が出来るようになったことで、配信メディアも変化してきています。

リワード広告は、低単価で大量のインストールが獲得できる反面、継続率や課金量などの質の点での課題もあります。現在では、アドネットワークやソーシャルメディア、Googleなど、幅広い広告メニューを実施し、メニューごとの効果を分析、最適化していくメディアプランニングが一般的となっています。特にFacebookやTwitterといったソーシャルメディアについてはスマートデバイスとの親和性が高いため、効果測定SDKとの連携が進んでおり、インストールや起動、課金などのデータを用いた類似拡張配信やリエンゲージメント施策が盛んに行われています。

Webプロモーションでもシェア率の高さを誇るGoogleでは、検索連動型広告やGDN、YouTubeといった従来の広告メニュー別配信から、機械学習による配信最適化を行うUniversal App Campaign*6へ統合していくことを発表しており、メディアプランニングを行う上での大きな変化となっています。

このようにテクノロジーの変化やプロモーション目的の多様化に伴い、アプリプロモーションも進化を続けています。その進化を的確に捉え、プロモーションの戦略設計からデータ収集~分析~活用を行えるかどうかが重要となっています。

5.アプリプロモーションのこれから

これからのアプリプロモーションではインストール数だけをKPIにするのではなく、SDKを導入し、アプリのKGI・KPIをきちんと可視化し、目的に合わせたプロモーションを行うことが必要です。

いまやロイヤルユーザーとのコミュニケーションに最も有効といわれるアプリプロモーション。Webサイトを主要チャネルとしてきた企業でも、アプリの活用やプロモーションが活発化しており、これまでにWebサイトで蓄積したノウハウをアプリに転用しながら、アプリとWebとを一気通貫させたプロモーション戦略を組んでいかなければならない時代となっています。変化を続けるアプリ市場で勝ち残っていくには、データを活用したプロモーションに対応していくことが重要であり、そういった観点で社内体制やパートナー選定を行っていく必要があると考えています。

※1…CCI・D2C「2016年 インターネット広告市場規模推計調査」
http://www.cci.co.jp/news/release/2017_04_17/1.html

※2…SDKとは、Software Development Kitの略称で、ソフトフェア・アプリケーションを作成するための開発ツール全般を指します。本記事では、広告効果を測定するために利用するSDKを指します。国内におけるSDKは、2012年に株式会社CyberZが「F.O.X」、2013年に株式会社アドウェイズが「PartyTrack」を提供開始。

※3…CyberZ/シード・プランニング スマートフォン広告市場規模予測
https://cyber-z.co.jp/news/research/2013/0315_520.html

※4…広告IDとは、WebにおけるCookieに近いもので、デバイスごとに設定をされた匿名かつ変更可能な広告配信識別IDであり、iOSではIDFA、AndroidではAAIDと名称が異なるため、合わせて広告IDと呼んでいます。

※5…Spin Appとは、高速で進化/高度化するアプリプロモーションの効果最大化を実現するアプリデータマネジメントツールです。アプリデータの取得、管理、分析、施策活用まで一元管理が可能。
https://spin-app.jp/

※6…Universal App Campaignとは、アプリストア内の登録情報や、いくつかの広告クリエイティブと目標のインストール(イベント)単価、過去の配信実績などに合わせて、Googleの全ネットワークを対象に、機械学習を活用して自動で最適な配信を行う、アプリインストール広告のキャンペーン。

ABOUT 松村 一平

松村 一平

株式会社オプト 
アプリプロモーションコンサルタント
2012年オプト入社。人材教育業界を中心にSEMコンサルタントとして従事。
2015年にアプリプロモーション専門部門の立ち上げに参画し、企業のアプリプロモーションのPDCA業務の支援を行う。中でも、ソーシャル広告、インフィード広告など運用型広告を活用したプロモーション、自身の趣味であるゲームやアニメの知見を生かしたゲームユーザーの心理に基づいたゲーム企業のプロモーション戦略立案や運用設計を得意とする。