ブランド企業は、動画広告キャンペーンを最適化するためにサプライパートナーと直接取引を
(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)
広告主は常にブランドの安全性が保証され、ビューアビリティが高く、透明性の高いプレミアム動画広告枠を求めている。そのために最適なオーディエンスにリーチすることでキャンペーンの目標を達成する必要である。そのための解答はサプライヤーとの直接的な関係なのだろうか?ExchangeWireは、SpotX社ブランドパートーナーシップ部門のシニアディレクターであるCassidy Diamond氏から、企業がどのようにしてインサイト、データ、効果的なサプライパートナーの知識を活用し、ターゲットを達成し優れたキャンペーン結果を得られるのかについて話を聞いた。
プレミアム動画広告の広告枠需要はこれまで以上に高く、デジタル動画エコシステムの複雑さも増しています。ブランド企業は「プレミアム」という言葉から、高いビューアビリティ、ブランド安全性を確保したコンテンツ、評判の高いパブリッシャー、完全な透明性などを期待しますが、ターゲット化したオーディエンスの間でこれらのKPIを、規模感を持って達成するのは簡単なことではありません。
多くのブランド企業は、より多くの優れた動画コンテンツにアクセスするために、バイサイドとの関係を拡大しようとしていますが、優秀なバイサイドパートナーを見つけることは簡単なことではありません。プログラマティックが真にマーケティングに統合されるにつれて、ブランド企業は考え方を変え、サプライパートナーと直接結びついて、メディアプランニングとキャンペーン実行において、360度アプローチを実行するべきなのです。
サプライパスの最適化
DSPはブランド企業にとり依然重要なパートナーである一方、ブランド企業がメディアサプライチェーンとテクノロジーパートナーを管理するにはさまざまな要素が絡みます。その過程で、動画サプライパートナーの特定、審査、選定といったプロセスが必要になります。
仮に二つのDSPがパブリッシャーへのアクセスを提供するとしましょう。動画広告の領域は、特にプレミアム動画の分野において供給不足に陥っています。ターゲットオーディエンスやKPIによって更に精査が進むと、希少性や拡張性、パフォーマンスの問題が大きな課題となっていきます。
更に、70を超える全ての主要なDSPと接続されたサプライパートナーであれば、全てを単一的に管理できるインサイトを提供することができます。統合的なインサイトデータにアクセスすることで、ブランド企業は、プライベート取引の活用、バイイング方法の多様化、オーディエンスターゲティングの改善などを行い、サプライヤーを最適化することができます。
キャンペーンプランニング時にインベントリーの状況を把握
バイサイドからすると、現在利用可能な多くのプランニングツールは、プライベートマーケットプレースにおける予測とバイイングにおける対応がなされていません。反対にサプライサイドは価格変化や需要レベル、入札に関するビューアビリティ、コンテキスト、デバイス、バーティカルなどの様々な変化における行動結果の変化についてのデータを有しています。これにより、ブランド企業は必要な在庫の価格、インベントリー獲得が叶わなかった背景や、パブリッシャーの売上優先度などを理解でき、最大限に効果を上げるための方策について理解することができます。バイイングモデルがプライベートモデルにより遷移していく中で、ブランド企業が在庫機会についてより具体的な状況把握ができることは重要です。サプライパートナーに対してキャンペーンのブリーフィングを行い、潜在的な在庫予測について把握することは、目標達成のためには必須です。
オーディエンスとKPIに関するマーケットプレースの生成
プレミアム広告枠は、ビューアビリティ、パフォーマンス、オーディエンス、デバイスの種類など、特定の基準に従ってパッケージ化することができます。本質的に、優れたバイヤーはサプライパートナーに対して、オープンなマーケットプレースと同様の規模で、安全性と透明性を兼ねたプライベートマーケットプレース上で、カスタマイズされたマーケットプレースの提供を求めます。これが実現できる企業は、キャンペーンに際して、アドサーバー事業者にブリーフィングを行い、最も優れたインベントリーをDSPとともに用意するように働きかけることができます。
このような方法でインベントリーを確保し、類似したサプライ環境の準備を促進する可能性が高まります。私たちは、希少なオーディエンス対象を求めるバイヤーに対して、世界各地から同様のインベントリーを確保するようなサポートを行っています。
進化したオーディエンスターゲティングの活用
スマートでパーソナライズされた広告を提供することは、パブリッシャーと広告主の両方が現在取り組んでいる大きな課題です。パブリッシャーは自社のファーストパーティデータを活用して、広告主が特定の番組やプロフィールに合致するオーディエンスをターゲットとする環境を提供する必要があります。一方で、広告を購入するユーザーは、さまざまなデータセットをターゲットにするために、独自のオーディエンスデータを用意する必要があります。
例えば、自動車会社はリース終了日に近づいている顧客のリストをターゲットにすることができます。広告を配信するよう選択されたパブリッシャーは、家計収入や人口統計など広告主が持っていないファーストパーティデータを持ちます。それらを組み合わせることで、キャンペーンは特定の年齢層や所得階層の購入意向者を特定し、単一のデータが活用されたときよりもより強力なターゲティングを実施することができます。
このようにデータを活性化することの価値を過大評価することはできない一方で、セキュリティが確保されていない環境で情報共有を行なった際の、データ漏洩に対するリスクへは注意を払う必要があります。それを念頭においた上で、パブリッシャーは、ファーストパーティデータを元に取引の機会を最大化する一方で、これらが他の環境で利用されたり、特定の消費者が異なるメディアに遷移するような状況を防止する必要があります。
グローバルでの最適化
グローバルブランドにおいては、世界レベルでバイイングプログラムを実行する際に更なる問題に直面し、地域レベルでサポートできる専門家からのサポートが必要となります。サプライパートナーの入札プロセスの一部には、ローカルの専門性を有したSSPの特定と企業の拠点地域へのサポートが必要となります。
サプライパートナーの洞察力・スキル・知識を活用することで、動画広告のバイヤーにとって、より大きなコンテキストや理解が促進され、キャンペーンの成功がもたらされます。企業は、在庫品質基準、ブランド安全性への取り組みに加えて、パートナーがより効果的かつ効果的な結果につながるインサイトとデータ提供をする能力があるかに基づいてサプライパートナーを選択します。このようなパートナーと協業できるのは企業側にとっても大きな成功の源泉とも言え、サプライパートナーの重要性は今までに無いほどに高まっています。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。