8回目のATS London:2017年にアドテクが今まで以上に必要な理由-ExchangeWire CEO Ciaran O'Kane
(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)
ATS Londonは今年8年目ですが、私はまだ初回の記憶が鮮明に残っています。Centre Pointにある古いビルで開催し、他のATSイベント同様に大変好評でした。Mike Nolet氏(元AppNexus CTO)や Ben Barokas氏が登壇したイベントでした。
Marco Bertozzi氏やKurt Hecht氏などのキーノートスピーチがあり、その当時Sky社のパブリッシャーエグゼクティブだったLouisa Wong氏は、バイサイドの全ての人々と激しく討論を繰り広げていました。 |
イベントは混沌としており非常に生々しい内容でしたが、デジタル広告のその後の激変の前兆のようなイベントでした。
8年もの間、M&Aによる大規模な広告活動、既存のデジタルブランドの消滅、ビジネス戦略の転換、デジタル広告におけるデータ重視などの変化が起こってきました。
その間、アドテクは何千回も死んだと言われています。 何度も多くの批判者が登場してきました。アドテクは、インターネットの収益化エンジンだけでなく、メディアでもある点をほとんどの人に理解されませんでした。
TV、ラジオ、DOOH、ITM(デジタルインフライト広告などの移動メディア)などのチャネルがデータ重視に変化していくにつれ、アドテクはセルサイドとバイサイドとの取引として進化を遂げました。 それは非常に簡単なことのように見受けられ Terry氏がLUMAscapesに新しい企業を追加し続け、業界は繁栄を遂げ、アドテク企業を売り続けているなら、問題はないと考えられていました。
私たちは現在アドテクのどこにいるのでしょうか? 2017年はどこから始まるのでしょうか? GDPR、サプライ・パス・オプティマイゼーション(SPO)、透明性、マシーンラーニング、ヘッダー入札、マージン縮小、インテグレーション、およびIOがゆっくりと消え去っていく中で、アドテクの恒久的な変化によって、事業の運営は決して簡単なものではありません。
ATS Londonの今年のアジェンダは、ExchangeWireのエキスパートが現在の業界の問題点に道筋を示すために開催されました。それでは、今回のアジェンダを紹介し、ATSに参加すべき理由を再確認したいと思います。
バイサイド・セルサイドの両方に重要な透明性とSPOの問題
私がアドテクの偉大な「レインメーカー」マイケル・バレットと一緒に、売り手側のすべてのテクノロジーに関して触れた後に、透明性に関するパネルディスカッションを開催します。ディスカッションでは価格の透明性、SPO、アドフラウドに焦点を当て、Guardian社のHamish Nicklin氏、Ebiquityのデジタル責任者Tim Hussain氏、及びヨーロッパ最大のディスプレイ購入規模を誇るブランドからの参加者2名によるセッションを行います。 議論は白熱したものになり、このトピックが業界にとってホットである理由についてオープンで率直な議論が聞くことができるでしょう。 業界の有識者が何を考え、どの様な戦略を抱いているのかについて理解することができます。
バイサイドとアイデンティティの密接な関係について
あなたはなぜGoogleとFacebookが私たちから商業的な成果を吸い上げているのかを理解できますか?それはもちろん IDにあります。 これらの企業のアイデンティティ層は非常に強力で、拡張性を兼ね備えています。私たちはどのように対抗出来るでしょうか? IDの現状に変化を起こし、独占状況を打破したいと考える主要な事業者から話を聞くことができます。それと合わせて、バイサイドのテクノロジートレンドについてカバーします。業界の独占状態を打破し、予算を奪い取ろうとする数多くの主要なプレーヤーの話を聞くことができます。 そのセッションの前には、買い手側のテクノロジーの将来の構成について学習します。 業界は大手企業に集中していくのでしょうか?それとも、モジュラーベースに移行していくのでしょうか?
Boris博士による「破壊的な」基調講演
私は正直言って、他のアドテク企業同様にBoris氏のファンです。彼は本当に多くの人から尊敬されています。 理論物理学で博士号を取得した彼は、アドテクの初期段階から多くのプログラムインフラを構築してきました。 彼は今までに、最も評判の良かったアドテクカンファレンスの基調講演を行なってきたATSの伝説的な人物です。
GDPR: 真実を知ろう
GDPRは、言うまでもなく、わかりづらいものです。 アドテクの終焉だと言う人もいますし、大きなチャンスだと考える人もいます。どのシナリオが正当なシナリオであるかを判断することは難しく、このトピックを語れる有識者によるプレゼンテーションとディスカッションを通して、業界がどのように法的な問題を乗り越え、データの取り扱いの問題を解決するかについて議論します。
エージェンシーかコンサルティングか:新たなサービスレイヤーは?
コンサルティング企業は過去数年にわたって積極的にクリエイティブエージェンシーを買収してきました。彼らは代理店業務に進出し、データ重視のマーケティングの世界で新たなソリューションを提供しようとするのでしょうか?私たちはこの点について取り上げ、今後5年に渡る新たなサービスレイヤーについて議論をします。
アドサーバの再生
ヘッダー入札についての別の記事を見ることがあったら、私は引退し、南大西洋の岩波の中で山羊を育て始めたいと考えてしまうかもしれません。
ヘッダー入札は、最もよく取り上げられるトピックで、アドテクの真実とも言えるかもしれません。 パブリッシャーにとって非常に重要な内容です。なぜ現状の問題に直面しており、なぜ統合的なオークションを行えるような広告サーバを構築できないのでしょうか?その答えは簡単です。 Googleはサイト運営者に権力を与える様な行為を好まないからです。全てがAdX に向かうことで全ての人から利益を得ることができます。私たちは現在、クライアント・サーバーヘッダータグやサーバ間タグ、ラッパーなどを活用しています。この延長上に未来はあるのかについて議論を行いたいと思います。
パブリッシャーに再び栄光を
プレス企業が危機にある点については悲しいことですが、取り上げないわけにはいきません。これはGoogle、Facebook、などの台頭により起きている点です。多くのパブリッシャーはこれらのプラットフォームにトラフィックと収益を依存するようになっています。私たちは何ができるのでしょうか? ビジネスモデルの多様化、協業など、業界の有識者によってパブリッシャーが如何に栄光を取り戻すことができるかについて議論をしたいと思います。
業界として現在直面している問題点を考えると、今回は最も期待感の高いイベントと言えるでしょう。ぜひ皆様とお会いできるのを楽しみにしています。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。