フェイスブック ジャパンとアイレップが初調査、Facebook広告とサーチの最もイイ関係とは!?
アイレップとフェイスブック ジャパンは2016年10月にFacebook広告の効果を最大化する最適な予算投入投下量に関する共同調査を実施した。
この内容や取り組みの背景、その結果によるビジネスインパクトについて、アイレップとフェイスブック ジャパンの関係者に話をうかがった。
(聞き手: ExchangeWire Japan 野下 智之)
■インタビュー対象者:
アイレップ 執行役員第2メディアマネジメント本部 星合 知長氏
アイレップ 第2メディアマネジメント本部 ソーシャルメディア戦略グループ
グループマネージャー 佐藤 允氏
フェイスブック ジャパン Marketing Science Lead 秋葉 大輔氏
フェイスブック ジャパン Partner Management Lead 永松 朋子氏
サーチ広告が強い日本市場でのフルファネルマーケティングの意義
-今回の共同調査実施に至る背景をお聞かせください。
星合氏(アイレップ): Facebookに広告費を投入した際、どのような成果があるかについて、具体的な数値で検証することを目的として、昨年5月ころにフェイスブック ジャパンにご相談いたしました。その際のメンバーを中心にアイレップ営業やストラテジストなどを含め、半年という長期間に渡って手掛けたプロジェクトです。
秋葉氏(Facebook):今回の調査ではFacebook広告の広告効果だけでなく、Facebook広告が検索にもたらす相乗効果を数値化することが出来ました。
-Facebook 広告の直接効果と間接効果について、それぞれどのようなものかをお聞かせください。
秋葉氏(Facebook):Facebookはフルファネルのマーケティングコミュニケーションに対するソリューションを提供しています。アッパーファネルの認知、ユーザーの態度変容や行動変容へ与える広告の直接効果だけではなく、間接的な心理効果があります。今回、主に間接効果を証明することを考えて本調査に取り組みました。フェイスブック ジャパンとしてはこのような調査をしたのは初めてです。
-調査の内容と結果について解説をお願いします。
永松氏(Facebook):例えばユーザーに商品を購入してもらう場合、実際にはスマホで見て、気になったものを後々検索してコンバージョンするケースも多いかと思います。商品の事前認知をどこで得ていて、どこで最終的な検索という行動にもつながっているのか。この調査はフルファネル全体での消費者の行動を明らかにする調査の一つとして取り組んでいます。
佐藤氏(アイレップ):様々なメディアがある中で、最終的なコンバージョンはGoogleやYahoo!などのサーチを経由していることが多いと思いますが、カスタマージャーニーを考える上では、どこかのタイミングでFacebookを経由している可能性も高いと考えられます(図1参照)。Facebook広告はユーザーが購入へと向かう通り道にビルボードを置こうというものです。最終のラストクリックだけを評価するのではなく、「Facebook広告に接触したことを正しく評価しましょう」という提案をするために、この調査を行いました。
図1
秋葉氏(Facebook):直接効果を指標にしている広告主様はCPAやCPIの高低を見ていると思います。ですが、広告は、購買過程にあるユーザーの態度変容や行動変容を起こすためのものです。
直接効果だけを見て判断するということは、本来広告がなくても買ったであろう消費者にも広告を届けていることであり、広告の適切な予算配分をしているとは言えません。広告主にとってのROASを最大化するためにはラストクリックだけを見るのではなく、フルファネルで見ることは必須です。
Facebook広告とサーチの相乗効果と予算量の相関性
―認知やユーザーの態度変容はどうやって計測しているのですか?
秋葉氏(Facebook):対照実験、リフトテストをやっています。これは製薬でよくやる手法ですが、例えば実験する薬を本物と偽薬とに分け、それを投与する対照群と実験群とを完全に区別し、それぞれにおける差分、つまりリフト分を見ています。これはリフト分が実測でき、純粋な広告効果を科学的に見られる方法です。本調査の場合は、Facebook広告を見せるグループと見せないグループを作って結果を見ています(図2参照)。
図2
例えると、全く同じような人々が住む、全く同じような街を2つ作り、一方にはFacebookが看板広告を出し、もう一方には看板広告を出さない、その差分を見ることで、広告の純粋な効果を測定する、という手法です。例えば、これがペットボトル飲料の看板広告だとしたら、そのペットボトル飲料の売れた数の差を見る、ということです。その数の差をリフトと呼び、Facebook広告の純粋な貢献によるコンバージョンとします。
ラストクリックの先に、マルチタッチアトリビューションといって、すべての広告とのタッチポイントに対するアトリビューション(広告寄与)を計測する方法があります。出稿企業の最適な広告予算配分ができるよう、すべてのカスタマージャーニーにわたってマルチタッチで計測し、それぞれの広告貢献度に応じて予算配分することを我々のビジョンに掲げています。
秋葉氏(Facebook):先ほどの例に沿って話しますと、今度は「街」を合計6つ作ります。それを、広告を表示するグループと表示しないグループの組み合わせを1セットとし、3つのセットを作ります。このセットは、Facebookではセルと呼んでいます。一つ目のセルは、少しだけFacebookの看板広告を出している街とまったく看板広告を出していない街、2つ目のセルは中くらいの数の看板を出している街とまったく出していない街、そして3つ目のセルは、ものすごい数の看板広告を出している街とまったく出していない街です。
各セルへの投下予算量を変えた上で、Facebookプラットフォーム上で広告キャンペーンを実施し、コンバージョン数を計測し、各セルのコンバージョン数のリフトを割り出します。本調査では、お客様のWebサイトへの流入数をコンバージョンとして、Facebook広告がお客様のWebサイトへの流入に寄与するか否か、そして最適な予算額を割り出すことを目的に調査を実施いたしました。
まずはお客様のWebサイトへの全てのチャネルからの流入数のリフトを見ました。全てのチャネルには、オーガニック検索、サーチ広告、Facebookなどの有料広告や、アフィリエイト広告、またURLを直打ちして訪れるユーザー流入まですべてを含みます。
さらに、上記の流入のうち、サーチエンジン経由の流入リフトを測定しました。
―調査結果の説明をお願いします。
秋葉氏(Facebook):広告を表示しないグループの人たちを1とした場合、そこからそれぞれのグループのコンバージョンがどのくらいリフトしているかがわかりました。
Facebookの予算量が少ないセルでは、全くFacebook広告を出稿しない場合に比べ、1.6倍くらい流入が見られ、中規模の予算量のセルでは、全くFacebook広告を出稿しない場合に比べ、2.1倍の流入が見られ、そして大規模の予算量のセルでは、2.7倍の流入が見られました。つまり、Facebook広告に接触した場合、(接触しなかった場合に比較して)最大2.7倍の流入があったということです。こうして最適なスイートスポットを導き出しました。また同様に、サーチからの流入に絞り、予算量別の流入数のリフトを見ました。
永松氏(Facebook):これが先程言った間接効果です。Facebook広告がある場合とない場合において実際の流入量へどのくらい影響があったか、流入量に対するFacebook広告の貢献ということです。
図3:Facebook広告「広告を見せたグループ」対「広告を見せないグループ」のWebサイト流入リフト率
図4:Facebook広告「広告を見せたグループ」対「広告を見せないグループ」の検索からのWebサイト流入リフト率
図5:Facebook広告を見た前後の購買ファネル(イメージ)
Facebookの相乗効果を定量的に可視化
星合氏(アイレップ):私達は、最終的なサーチとFacebook広告の相乗効果がこのような結果になると想定はしておりました。ですが今まではこの相乗効果に対して実際どのくらいの費用を投下すればよいのかという点が、広告をプランニングする立場として具体的にわかっていなかったのです。
仮に100万人のオーディエンスがターゲットとなったとき、Facebook広告をいくら投下すれば、どのポイントになるのかが調査で明らかにできました。たとえば、このキャンペーンはこのくらいのオーディエンスサイズがいますというケースで、このくらいの金額を投入すれば、サーチであればこれくらい、全チャネルであればこれくらいの効果が出る。というプランニングができるようになりました。
秋葉氏(Facebook):お客様からは、「Facebook広告を出したら他媒体からの流入が増えた。」ということをよく言われます。ですが、どのくらい増えたのかが定量的な数値としてわかりませんでした。今回調査を通じて他媒体が増えるという感覚値をある程度定量化でき、そこから適切な予算量を割り出せるようになったのです。
―業界へのインパクトや波及効果は大きいのではないでしょうか?
佐藤氏(アイレップ):Facebookへの広告出稿を停止したことで、サーチエンジン経由の流入が減少したという経験をお持ちのお客様からもお問い合わせをいただいており、共通の課題であることを改めて認識できました。また成果計測の指標について、ブランドリフトなのかサーチリフトなのか、あるいはコンバージョンでのリフトを見るべきなのか、案件に応じた正しい指標についての提案も増えてきております。
秋葉氏(Facebook):今のラストクリックという、直接効果とコストだけしか見ずにそれをベースに予算配分する傾向は、マーケティング機会をロスする可能性があると我々は思っていて、広告主に少しでもマルチタッチアトリビューションを受入れていただけるように取り組んでいます。
ファネル全体を見据えたメディアプランニングが重要
―マーケターは、Facebook 広告とサーチ広告とをどのように組み合わせて使うのが最適なのでしょうか?
永松氏(Facebook):どうしても最終的なサーチやコンバージョンなどに頭が行きがちですが、今回の調査結果から、実際にはそれ以前に見たFacebook広告が消費者の最終的な行動に大きな影響を与えていることが明らかになったので、今後はより、ファネル全体を通して認知を醸成し、検討に影響を与え、最終的にコンバージョンを与えるかを見据えたメディアプランニングやマーケティングをやっていく必要があると、伝えたいと思います。
秋葉氏(Facebook):ラストクリックCPAやCPIというのは、木を見て森を見ずだと思います。種を蒔いて水をやり育てて森全体の生態系を維持しなければ、伐採だけだといつか枯れてしまう。そのためにはフルファネル、アッパーファネルからローワーファネル全てに対して予算を最適化する、いろんな指標を見ながらいろんな考えを持って、広告を出稿していただければと思っています。そのための調査の仕組みもFacebookが用意しています。
佐藤氏(アイレップ):Facebook広告を出稿する上で、「全てのチャネルからの流入を最適化させる場合」、「検索エンジン経由からの流入を最適化させる場合」といった、目的に応じて、ユーザー1人当たりに対する予算設計を考えていくことが重要だと思います。
また、指標に関しては、1回だけの調査でなく、定期的に継続することで、何がトリガーとなってユーザーの態度変容に影響を及ぼすかを見極められるため、是非とも長期的な取り組みとしてFacebook調査を捉えていただきたいです。
星合氏(アイレップ):アイレップではFacebook広告の取扱いが大幅に増えてきています。今回はサーチエンジン経由の流入を調査しましたが、今後もお客様からご要望戴くテーマに合わせ調査設計を行ってまいりますので、お気軽にお問い合わせください。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。