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市場の垂直立ち上げでいち早くリテールのニーズをキャッチ-フリークアウトのジオマーケティング戦略- [インタビュー]

フリークアウトは、流通・小売業向けソリューションを提供するリテールテックプロダクトユニット「ASE(エース)」を発足し、新たなサービスをリリースした。

その活動内容や、新しいサービスの詳細について、株式会社フリークアウト リテールテック事業部営業統括部長田中ジミー基樹氏と、プロダクトマネージャー廣瀬隆昌氏にお話を伺った。

(聞き手:ExchangeWire Japan 野下 智之)

― 自己紹介をお願いします。

写真1

田中氏(写真右) リテールテック事業部で、事業開発とセールスを行っています。2011年入社以来エージェンシー様向き合いのセールスチーム責任者を務めていましたが、昨年10月、今の事業部の立ち上げを機にリテールテックのチームにジョインしました。

廣瀬氏(写真左) ASEのプロダクトマネージャーをしています。3年前からフリークアウトで新規プロダクトのプロダクトマネージャーを担当しており、位置情報のプロダクトに2015年から携わり、田中同様、昨年10月のリテールテックのチームの立ち上げとともにASEに参画しました。

フリークアウトの新ユニットは"すべてを見渡す目"

― 様々な課題を抱えるリテール分野の事業者をテクノロジーで支援するためのリテールテックプロダクトユニット ASE を立ち上げられたわけですが、どのようなものか教えてください。

田中氏: もともとフリークアウトはDSP、DMPを開発していて、メーカーやブランドの広告主向けにプロダクトを提供していました。けれども、今後は小売市場のEC化率もどんどん高くなってきており、フリークアウトとしても参入を検討してきておりました。そうした折、位置情報のデータを大手のデータプロバイダから提供していただけることになったので、部署として立ち上げてプロダクトを作りました。

提供を開始したのは、位置情報ターゲティング広告配信プロダクト「ASE Ad」と、オフライン行動分析プロダクト「ASE Analytics」です。

「ASE Ad」は、位置情報を使った広告配信、「ASE Analytics」は、オフラインでのユーザー行動分析ができるものです。「ASE Analytics」の管理画面では、どのような方が自社の店舗に来ているのか、競合の店舗に行っているのか。行っているとしたら、ユーザーの居住地域を町丁目レベルで分析できるのが強みです。

ASEという名前は「All Seeing Eye」つまり、すべてを見渡す目という言葉の略称です。

「ASE Analytics」は、小売事業者様にはもちろん、メーカー様、代理店様などにもご提供します。来店計測にはアプリSDKにより取得した、2千万UUの位置情報データを利用して、店舗に来店している人数を、自社の店舗に来店している人数も、競合の店舗に来店している人数も、合わせて見ることができます。

― データソースは国内有数のアプリベンダー、プラットフォーマーと提携しているそうですが、詳しく教えていただけますか。

廣瀬氏: 場所ごとに位置情報のデータを使って、デイリーで分析を回しています。データはあくまで提携しているアプリベンダーさんやプラットフォーマーさんから提供されたデータですので、すべての数がとれているわけではありません。管理画面上に出てくるのは、データをとれたものの実数です。

田中氏: これを曜日別だったり、時間帯別だったり、競合店舗分析のような感じで、それぞれたとえば「六本木ヒルズ」「虎の門ヒルズ」「ミッドタウン」の三地域施設の併用ユーザーの比率だとかを出します。

廣瀬氏: 六本木ヒルズと虎の門ヒルズの両方に行っているユーザーが全体の32%で、それ以外の68%はミッドタウンのみしか利用していない、という分析結果を期間ごとに出したり、併用しているユーザーのシェアを見ていたりしています。要するに競合分析です。他の商圏内に自店と他店があって、競合の動向やユーザーの併用率をするのに使うのです。

【ASE Analyticsデモ画面(曜日別来訪者イメージ)】

ASE Analyticsデモ画面(曜日別来訪者イメージ)

【ASE Analyticsデモ画面(競合分析イメージ)】

ASE Analyticsデモ画面(競合分析イメージ)

田中氏: このツールで広告配信をしなくてもかまいません。ツールだけ使いたいという方にも月額でお使いいただけるようにしていて、実際にお使いいただいています。

たとえば、スーパーやアパレル、製造小売、あるいはアミューズメント施設などの200店舗にトライアルで導入していただいています。競合や併用しているユーザーのデータを見て、自店の来客が落ちた日には、競合店のどこで客足が伸びたのかを見ています。それによって、プロモーションや商品のラインナップを変えたり、セール時期を前倒しにしたりと、広告だけではなく、店舗の判断材料としても使っていただいています。分析ツールは店舗の施策の判断材料として使っていただいていることが多いです

廣瀬氏: リテールのお客様には、まだデジタル広告を採用しているお客様が少ないので、デジタル広告を使っていただくきっかけにもなると考えています。

「ASE Analytics」の導入目標は年内1000店舗

― トライアルでの導入事例や今後の展開イメージについてお聞かせください。

田中氏: トライアルで導入していただいているアパレルの店舗さんでは、性別・年齢に加え、推定生活圏を調べています。これでチラシによる来客効果を見て、どのエリアからの引き合いが強いから、チラシのプランニングを変えていこう、というような用途で使われています。

コンサルテーションに我々が入らなくても、どこがいい、どこが悪いということが可視化できるようなUIにもっと近づけていきたいと考えています。ツールは、自店舗1店舗に加え競合店舗を設定した分析をパッケージとしてお使いいただけます。6月13日のリリース後も、適宜機能のアップデートを行っていく予定です。

田中氏: 今は分析ツールと広告は切り離して考えています。来店動機はチラシなどオフラインの施策に加え、価格や店舗までの距離が重要です。競合店が近くにあるので行かないとか、多様な要素がからんでいますので、店舗全体の広告を含めた販促ツールになることを目指したいです。

【ASE Analyticsデモ画面(性別・年齢分析イメージ)】

ASE Analyticsデモ画面(性別・年齢分析イメージ)

【ASE Analyticsデモ画面(推定生活圏イメージ)】

ASE Analyticsデモ画面(推定生活圏イメージ)

メーカーでも飲食店、小売店への営業をする際のサポートツールとして使いたいという方がいらっしゃいます。飲食店に営業する時は、どういった方々が飲食店に来ていて、競合だとどの店舗に行っているのかを見ます。そして、たとえばメニューを開発したり、価格の設定を考えたり、ランチをやるべきかどうかの判断に活用にします。

導入いただく業種は問いませんが、営業をかけているのはGMS(大手の総合スーパー)やホームセンター、ディスカウントストア、家電量販店、自動車のディーラーが多いです。位置情報取得精度毎のデータボリュームを鑑みて、大型の路面店さんから導入していただいているところです。

導入の目標として、年内1千店舗を目指しています。

「ASE」が提供するのはリテールテック

― 広告プロダクトでは、位置情報に基づきセグメンテーションしたオーディエンスに、LINEやSNSを通じた広告配信が可能だということですが、詳しくお聞かせください。

田中氏: 「ASE Ad」で活用するデータを提供していただいているアプリも、交通系のアプリや飲食、カレンダーなど日常的に使うアクティビティの高いアプリが中心のため、良質なデータを大量に保有しています。さらに、Redを通しLINEAds Platformへの配信ができ、クリックスルーの来店コンバージョンもビュースルーの来店コンバージョンも見ることが可能です。
他にもFacebook、Instagram、Twitter、YouTubeなど、大きなSNSのプラットフォームにも配信できます。こうしたデータの質・量と配信面の部分は自信をもってプッシュできるポイントです。

―「ASE Ad」と「ASE Analytics」との利用時の関係性をお聞かせください。

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田中氏: 広告配信から来店コンバージョントラッキングまでは「ASE Ad」のプラットフォームで。そして、店舗に来ている方の分析は「ASE Analytics」で行います。これはGoogle Analyticsと同じようなイメージですが、普段からどういう方が来ていて、どういう他の競合企業・店舗へ行っているのかという分析をアナリティクスツールで行います。 サイトの分析が店舗の分析に置き換わったようなイメージです

「ASE Analytics」はアドテクよりもリテールテックの方が、親和性が高いかもしれません。もっとも、まだβ版をローンチして間もないので、広告主さんのほうで我々が想定していないような使い方をされるようになるかもしれません。要望をいただいて、可能なことであれば機能を実装してやっていきたいと思っています。

廣瀬氏: 顧客ヒアリングを重ねてきた中で、広告の文脈とは違った方々にお話を聞く機会がありました。そしてそこで得られた知見やアイデアも入ってきました。今回のリリースにより、興味を持ってくださるお客様がいれば、さらに新しい形に進化していけると思っています。

田中氏: 競合店と相対した時にどういった施策をするかは、店舗の店長様や本部の方の経験に基づくご判断によるところが大きく、定量化が難しかった部分だと考えています。実際に、商圏内のどういった競合店舗にユーザーが行っていて、その店舗と自社の店舗がどういうふうにバッティングしているのかを知り、どう解消していくのかという判断材料にお使いいただけると考えています。

― 来店計測はどのようにされているのでしょうか?ビーコンは使っていないのでしょうか?

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廣瀬氏:来店計測に用いるデータについては、利用可能なデータの中から精度情報が粗いものを除外しています。精度はOS側が位置情報を取得する際に決まってしまうため、取得するときのタイミングで改善するのは現時点では難しいです。また、得た情報の中から絞っていくと、情報が少なくなってしまうので、我々も課題としてどうしていくかを考えているところです。

田中氏: ビーコンを置けば一応解決はしますが、クライアントさん側でも、店舗にビーコンを設置する工数がかかるなど負荷が小さくありません。そして、負荷をかけて設置したからといって期待しているようなデータボリュームが取れるかというとそうではないのが現状です。

リテール向けソリューションを継続して開発

― 今後の機能改善はどういう方向性のものを考えていますか?

廣瀬氏: 「ASE Analytics」に関しては、ニーズが高いのが競合店分析の用途です。したがって、より深く分析が出来るための機能開発をしていく予定です。例えば、競合店がイベントをやって来店が跳ね上がっている状況でも、表やチャートだけでは見えづらかったりしますので、アラートをしてくれるような画面や、差異がなぜ発生するのか、原因分析にまでたどり着けるようなUIが求められていると思います。そういったところを開発していくつもりです。

田中氏: 競合分析にご活用いただいている企業様が多いので、競合店になぜ行ってしまったのか、自社のロイヤリティーの高いユーザーはいつの時点で獲得できているのかなどを、さらに分析していきたいです。

田中氏: 「ASE Ad」については、広告配信対象のオーディエンスが、アプリSDK由来の2千万ユーザーに、Bidリクエストから位置情報を得られた2千万のユーザーを加えて、のべ4千万ユーザーという大きなボリュームを持っていることが特徴です。(※1) その位置情報保有オーディエンスに対して広告配信在庫も月間2,200億impと国内最大級の在庫に配信可能です。

リテール事業者様に対してのソリューションは、マーケティングツールに限らず、第2弾、第3弾をリリースしていく予定です。年内には出せるかどうかが決まると思います。機動力を持ち、いち早くニーズをキャッチして市場を垂直で立ち上げ続け、広告配信だけではなく、それ以外のプロダクトや、これまでには市場になかったようなツールを世に出していきたいと思っています。

※1 (2017​.​07​.​12 フリークアウト社からの補足)
SSPのBidリクエストから取得できる位置情報については、「ASE Ad」の Red を通じてのDSP配信でのみ利用しております。DSP以外での広告配信、および、「ASE Analytics」の分析元データとしては、一切利用しておりません。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。