「ディープネイティブ」がネイティブ広告の進化だ:ADYOULIKE社マネージングディレクターDale Lovell氏とのインタビューセッション
(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)
新たな技術と業界標準の普及に伴い、ネイティブ広告の人気が高まっている。チーフ・デジタル・オフィサーで英国ADYOULIKEのマネージングディレクターのDale Lovell氏は、ネイティブ広告がどのように変化しており、パブリッシャーと広告主が競争力の高い魅力的な広告体験をどのように提供するのかについてExchangeWireに語ってくれた。
― ADYOULIKE社のIBM Watsonとの統合の発表は、テクノロジーがネイティブ広告をどのように進化させているかを証明する好例だと感じています。
ADYOULIKE社は、世界規模で最大のネイティブ広告サプライサイドプラットフォーム(SSP)です。当社のDNA技術プラットフォームにより、すべてのコンテンツをカスタマイズし、デバイスをまたいで配信することができます。
IBMの画期的なWatson AI(人工知能)ソフトウェアを使用することで、顧客やパートナーのセマンティック・ターゲティングの改善が期待できます。ワトソンの例は、最新の広告プラットフォームの例の一つです。 WatsonはADYOULIKE社のプレミアムパブリッシャーのグローバルネットワークのすべてのデータを元に、人間が行うのと同じよう読み取ります。単純なキーワードをスキャンするのではなく、トピック、感想、セマンティクスを文脈的に調べます。
つまり、当社のプラットフォームは、関連性を重視し、ターゲットを絞った方法でネイティブコンテンツを配信します。各サイトの既存の編集コンテンツがどこで、なぜ、どのようにしてトピックを構成しているかを知ることで、広告主が最も適切なネイティブコンテンツを動的に提供するようにします。
―「ディープネイティブ広告」はどのように定義されますか?
「ディープネイティブ」とは、ネイティブ広告の進化だと捉えています。技術が向上するにつれて、人々は非ネイティブコンテンツに寛容的でなくなっています。一方で、私たちは、彼らが企業のものであれ何であれ、興味をもったコンテンツは閲覧することに気づきました。これによって、サイト運営者の既存のコンテンツにシームレスに統合することの重要性が明らかになります。このような形により、ユーザーは閲覧中にスムーズで快適な体験をすることができます。最良の結果を得るためにコンテキストに沿ったコンテンツを配置する必要があります。
より適切に配置がされたコンテンツは、より成功する可能性が高まると考えています。私たちは、より適切な環境に広告を配信することで、広告主様の投資収益率が向上し、消費者の利便性の向上にもつながると考えています。
― テクノロジーがネイティブ広告で果たす他の役割とその変化についてはどのようにお考えですか?
いわゆる「フェイクニュース」は業界にとって大きな課題です。デジタル全体でのブランドの安全性を脅かす実例は多くあり、企業が懸念を示すのも自然なことです。私たちは常にこの問題に対処するための対策を講じており、当社のIBM Watsonのパートナーシップは、ネガティブ及びポジティブの両方においてターゲット設定オプションを提供します。 IBM Watsonは1秒間に何千ページものページを分析できるため、マーケティング担当者やパブリッシャーに詳細なフィードバックを提供することができ、素早い対応が可能です。また、パブリッシャーは、適切でないページに広告が表示されないようにブラックリストを設定することが可能です。
私たちはブランド全体の安全管理確保のために、ネットワーク全体をIntegral Ad Science(IAS)に統合したところです。この技術により、広告主はより適切でターゲットを絞ったキャンペーンを提供することができ、ブランドの安全性に対する懸念も緩和されるでしょう。
― ネイティブ広告に対する広告主の意識はどのようなものでしょうか?広告主の視点から見た場合の問題点はどのようなものですか?
当社のパブリッシャーや広告主とのパートナーシップは、業界のネイティブへのシフトを示唆しています。例えば、Sizmek社とのパートナーシップにより、広告主やエージェンシーはSizmekプラットフォームの持つStrikeAd全体にカスタマイズされたネイティブ広告キャンペーンを配信できます。StrikeAdのネイティブインベントリにADYOIRIKEを含めることで、パブリッシャーの新しいネットワークが開放され、StrikeAdは広告のパーソナライズ、ターゲティング機能を高めつつ、デバイス間でのネイティブ広告リーチを進めることができます。
― パブリッシャーの観点からは、ネイティブの方がより効果的な結果にドライブをすることができるとお考えですか?
インフィードのネイティブ広告により、企業のコンテンツを、企業色の少ないストーリーの中に混ぜ込むことができ、顧客体験を向上させます。消費者は興味のあるものをクリックし、企業によるコンテンツであるかどうかはそれほど重要でありません。パブリッシャーは、強力なネイティブコンテンツを提供することで、広告主のリターンを提供するだけでなく、魅力的で関連性の高い広告エクスペリエンスを提供することができます。
例えば、最近発表されたTrinity Mirror社とのパートナーシップにより、デバイス間で互換性のある広告コンテンツが、パブリッシャーの社内チームに活用され、ネイティブ広告ユニットの利用の増大につながります。
― 業界の標準化は、ネイティブ広告の成長ペースについていけるとお考えですか?
デジタル広告部門は2016年も成長を続け、企業はデジタル広告をネイティブにシフトしています。ネイティブ広告は、2020年までに全世界の広告費の30%を占め、855億ドルの価値があると見込まれています。
明らかに、多くのアドテク企業やパブリッシャーがデータの透明性に関する問題に直面しています。私は業界が透明性と適切なコンテンツ確保のためにあらゆる努力を払っていると感じます。ブランドの安全性は、クライアントを保護する必要があるアドベンダーの鍵となります。
ネイティブ広告の素晴らしい点は、デジタル全体の変化に伴って進化し続けることができる点です。業界は標準を維持することを得意としており、クリエイティブの質とエグゼキューションは成功のために非常に重要な事柄となるでしょう。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。