ソーシャルログインによるID連携のパイオニアを目指す -ソーシャルPLUSの戦略- [インタビュー]
フィードフォースが提供するソーシャルログイン導入実装支援サービスのソーシャルPLUSが、今年4月にメッセージマネージャーをリリースし、LINEとの連携を本格的に開始した。
これにより、サイト運営者はどのようなことが出来るようになるのか、広告で実現できる今後の可能性も含め、フィードフォースのソーシャル PLUS プロダクトマネージャー兼カスタマーサクセスチームの岡田風早氏と、ビジネスディベロップメントチームの 高山光氏にお話をうかがった。
(聞き手:ExchangeWire Japan 野下 智之)
― 自己紹介をお願いします。
岡田氏(写真左): 私はソーシャルPLUSのプロダクトマネージャーをやっておりまして、兼任としてカスタマーサクセスチームの運営も担当しています。
フィードフォースには、カスタマーサクセスチームの立ち上げ担当として入社しました。
ソーシャルPLUSのカスタマーサクセスチーム立ち上げの流れでプロダクトマネージャーに就任し、昨年からはLINE社との連携を推進しています。
高山氏(写真右): 私はビジネスディベロップメントチームに所属していて、主にソーシャルPLUSに関するアライアンスを進めています。フィードフォースには新卒で入社し、去年9月のビジネスディベロップメントチーム発足にあたって同時にアサインされました。
現在は、様々なカートASPやECサイト構築パッケージサービスへのソーシャルログイン機能を標準搭載するためのアライアンスや、LINEログインを軸にLINE ビジネスコネクトパートナーとのアライアンスを中心に、外部パートナーとの提携・協業を通じてプロダクトのスケールを図っています。
6つのソーシャルログインを1度の開発で
― まず、ソーシャルPLUSのサービスの概要と特徴についてお聞かせ下さい。
岡田氏: はい、ソーシャルPLUSはソーシャルログイン機能を既存のWebサイトに導入できるASPサービスで、FacebookやLINEなど複数のプラットフォームに対応したログイン機能を一度の開発で丸々導入できるというところが大きなポイントです。
通常であれば、FacebookであればFacebookログイン、LINEであればLINEログインとそれぞれ個別に開発が必要です。当社サービスは、そういったものを1回の開発で合計6プロバイダを設置できるのが特徴です。
具体的にはLINE、Yahoo! JAPAN、Facebook、Twitter、Google+、mixiの6つのプラットフォームに対応しています。
ソーシャルログインは、各プラットフォーム側で不定期に仕様変更があるので開発して終わりということではありません。随時仕様変更をキャッチアップして、その度に改修する必要があります。開発者視点では、仕様変更情報の継続的なキャッチアップや必要となる改修作業自体はもちろん、そうした不定期な仕様変更への対応が差し込みとなり本来やりたい開発に支障が出てしまうことも負荷になってきます。こうした負荷を削減して本来やるべき開発に集中するために、自社開発でソーシャルログインを導入されていた企業様が仕様変更に負荷なく対応できるソーシャルPLUSに乗り換えるケースも最近増えてきています。
― ソーシャルログインの普及の状況と課題についてお聞かせ下さい。
岡田氏: 普及状況は、正直なところまだこれからという感じです。ここ数年立ち上がった新しいサービスにおいては、実装されているケースも多いのですが、いわゆる大企業の有名なサイトほど実装されていないというところが現状です。
課題のポイントは2つあります。
1つ目は、どの企業も利益に直結するところから施策を実施していく傾向があるので、ソーシャルログインでユーザーの利便性を改善するというようないわゆるUI/UX周りの施策についてはどうしても後回しになってしまう傾向があるということです。
2つ目は、大きい企業ほど会員データベースなどバックエンドのシステムがレガシーなケースがあるので、なかなかそこに手を入れることを後回しにされてしまうということです。
企業と個人のOne to Oneコミュニケーションを実現
― 今回のリリースの内容とその背景についてお聞かせ下さい。
高山氏: 「Next ID Alliance」構想は、企業と生活者がLINEを使ってOne to Oneのコミュニケーションを実現する仕組みを構築していくことが目的です。One to Oneのコミュニケーションを実現するためには、企業サイトのユーザーIDとLINEのIDを連携させていくことが重要です。今回のリリースではその重要性をアピールするとともに、ソーシャルPLUSがそのハブになることでID連携を簡単にできることを訴求していくものとなっています。
<「Next ID Alliance」における、LINEログインによるID連携から
One to Oneメッセージ配信を実現するエコシステムのイメージ >
お客様がご利用されているカートASPやECサイト構築パッケージサービスにおいて、ソーシャルPLUSを簡単に導入できる仕組みを今回のパートナー企業様にご協力いただくことで実現しています。
そして、ソーシャルPLUSのLINEログインを通してID連携をし、ID連携済みの会員に対して、当社が連携しているビジネスコネクトパートナーのツールを中心に、LINEのメッセージ送信に対応しているCRMツールなどのメール配信ツールやウェブ接客ツールを通して、セグメント配信などのOne to Oneのコミュニケーションが実現できるというコンセプトになっています。
― LINEとの提携の話は、いつ頃からどんな背景で話が進んで現状に至っているのでしょうか。
高山氏: 2016年3月にLINEが新たなビジネスプラットフォームとして提供開始した機能の中にLINEログインがありました。当社のソーシャルPLUSが対応可能なのではないかと考え、当社からアプローチをし、LINE社と協力して取り組んでいきましょうということで始まりました。
LINEログインは企業の利益に直結する
― LINEとのソーシャルログイン連携によって、サイト運営者は今後どのようなことを出来るようになるのでしょうか。
岡田氏: 今までのソーシャルログインとは、新規会員登録時のフォーム入力支援と再訪問時の離脱を防ぐことを目的としていたと思います。一方、LINEログインについてはその2つの要素だけではなくて顧客の会員IDとLINEアカウントを紐付けることでLINEで直接顧客にアプローチできる「メッセージング」の要素が加わっています。
ここが非常に大きなポイントです。ソーシャルログインは便利ですが、一般的には企業の利益へ間接的に影響を与える形になります。しかし、LINEログインに関しては、メッセージングで直接アプローチできるので企業利益に直結する可能性があるところが従来との大きな違いです。
また、LINEログインでID連携を行うことでユーザーの属性ごとにメッセージを出し分けできることも大きなメリットとなっています。昨今、Emailがなかなか開いてもらえないという課題を各企業様は抱えているのですが、そこにLINEのメッセージを新たなチャネルとして加えていきたいという需要もやはり増えてきています。
すでに実践されている企業では、Emailと比べてLINEのメッセージはCTRも圧倒的に高いという結果も出ています。LINEのメッセージは直接アプリの中でブラウザに遷移できるのでCVRにも優秀な数値が出ているというのが現状です。
― 今後LINEとソーシャルログインを使ってそのサイトの運営者がデータを連携させることで、広告配信の領域ではどのようなことが出来るようになりますか?
岡田氏: 広告もメッセージ配信と同じで、いかに精度の高いコンテンツでアプローチできるかというところが一番重要になってくるかと思います。
今は、広告の精度を上げる情報の取得元がCookie任せになってしまっていると思います。今後は、間違いなくここにID連携というものが加わってきます。理由としてはやはりブラウザやデバイスなど外的要因に影響されずにユーザーの属性分けを行うにはID連携が一番確実だからですね。
そのためにも、ソーシャルログインの導入というところだけでなくてメッセージによるコミュニケーションで属性情報を増やして広告につなげていくというのは自然な流れになってかいくと思います。
IDをベースとした一気通貫マーケティングの第一人者に
― 今後のお取組みについてお聞かせください。
高山氏: 集客からリテンションまで、サイト内外での施策をIDベースで行うことについて、今後チャレンジしていきたいと考えています。
Facebookでは、IDを軸とした広告でのターゲティングに取り組まれている企業様もいらっしゃいます。
Facebookログインで取得したIDを使い、例えばカスタムオーディエンスを作成して、広告のセグメント配信を行うといった感じです。
LINEでも今後は同様に、LINE Ads Platformを活用してサイトまで集客し、サイト内ではLINEログインを使って会員IDとLINE IDを連携してもらいます。
その後、会員登録や購買、予約後のリテンションの部分でも、LINEメッセージを使ってOne to Oneマーケティングを実現していくといった、そういう使い方はもっとチャレンジしていきたいと考えています。
LINEでは、ユーザーとのミスコミュニケーションを避けるためにメッセージの精度をいかに上げるかが重要です。
精度を上げるためにはユーザーのリアルタイムの趣味や好みの傾向などの情報を取得する必要があります。
例としてはユーザーが気軽に返答できるチャットボットを活用して、アンケートやコンテンツ提供から属性情報を取得し、新たに取得した属性情報を活用してメッセージの精度を上げていくということが大切になってきます。
今回発表させていただいた「Next ID Alliance」では、LINEでOne to Oneマーケティングを実現できる仕組みを提供し、ID連携の重要性を訴求していきます。
そして将来的にはIDベースでの一気通貫マーケティングが主流となる、そんな世界の実現を目指していきたいと思っています。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。