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台湾デジタルマーケティング市場を攻略する― 第四回:台湾のデジタル広告市場における最近のトレンド |WireColumn

 
 

Exchange Wireの読者の皆さん、お久しぶりです!ソネット・メディア・ネットワークス台湾の林 靜怡(リン チンイ)です。この連載がスタートして3カ月が経過しましたが、こちらが最後です。

1回目は「インバウンド事業向け、訪日台湾人の特徴とアピールするための広告戦略」についてまとめ、2回目は、「アウトバウンド事業のための、台湾のEC市場現状と最適な広告手法」についてお話しました。そして3回目の前回は、「日本人が見逃がしやすい台湾のプログラマティック市場の常識、年間出稿の動きとクリエイティブ制作」について、日本の常識と異なるキーポイントを中心に紹介しました。

今回は、市場規模や成長など、具体的な数字を挙げることで、皆さんが台湾のデジタル広告ビジネスに対してより深い知識を得ていただければと思います。

台湾デジタル広告市場のトレンド

統計資料をみると、日本の人口は約1.27億人で、名目GDP総額は、約45兆9620億ドルです。一方で、台湾の人口数は2,350万人、名目GDP総額は、約5兆2960億ドル。単純比較では、台湾は日本の約1/9の経済規模です。
インターネット広告市場規模は、台湾は日本の6%強(2015年時点)ですが、成長率は日本を大きく上回り、ポテンシャルの高さは明らかです。

表1.台湾と日本のインターネット広告市場規模と成長率

年度日本(億円)台湾(億円)成長率(日本)成長率(台湾)
20128,680446--
20139,3815268.1%17.9%
201410,51962212.1%18.2%
201511,59474410.2%19.6%

出典

人口: 內政部統計處(台湾)、総務省 統計局(日本)より引用

名目GDP総額: JETRO各国・地域データ比較

日本の広告市場: 電通報

台湾の広告市場: DMA(Digital Marketing Association / 臺北市數位行銷經營協會)

特にモバイル広告(主にアドネットワークやプログラマティックバイイング)と動画広告は、著しい成長を遂げています。(図1)。

調査会社IDCの資料によると、2016年度台湾のスマホ出荷量は約874万台*と、高い普及率となっています(AndoroidとiOSの比率は8対2)。また台湾人は1日のスマホ利用時間が長く、利用時間帯は日本のように通勤時間帯と深夜に集中している訳ではありません。ユーザーは、19~22時にテレビを見ながらスマホを操作(いわゆる「ながら視聴」)したり、日中の勤務時間でも操作したりしているようです。さらにモバイル市場でトレンドとなっている「高速通信の使い放題プラン」は、基本料金の範囲内で提供されているため、スマホ広告、特に動画広告にとっては追い風になっています。

*出典 「台灣智慧型手機市場2016年首度出現負成長
図1

図1. 各広告メニューの成長状況

出典:DMA(Digital Marketing Association/臺北市數位行銷經營協會)

「2011~2015年 台湾デジタル広告市場出稿金額」より、金額単位:億台湾元

DMAの最新情報(2016 年上半年廣告量調查)によると、2016年上半期(1月~6月)にデジタル広告の配信金額は111.95億台湾元(約414億円)に達し、2015年の同時期との比較では、約32%成長と急激に伸びています。また、テレビ広告の同時期の配信金額は、110億台湾元(約407億円)と、初めてデジタル広告がテレビ広告を逆転しました。通年のデータは間もなく公開されますが、2016年は台湾の広告業界にとって、デジタルメディア時代への幕開けとなる年になりそうです。

注)1台湾元=3.7円で算出

見逃せない配信手法のトレンド

1.モバイル広告

先程のDMAの最新情報を見ると、通年の市場調査とは、調査内容や分類が異なりますが、
2016年上半期に現在モバイル上で配信する広告(ディスプレイ、リスティング、動画などを含む)は67.28%となっています。そのうち、DSP配信を中心としたプログラマティック広告の出稿量は約26%を占めています。
これまでの連載でお話しした通り、台湾では、Googleアドネットワークとソーシャル系媒体のFacebook広告が、依然として強い状況となっていますが、近年のRTB広告も著しい成長を遂げています。広告主にとって、新規開拓も重要な課題のひとつですが、やはり台湾のような市場規模では、既存顧客の継続と顧客単価の向上が収益確保にあたって一番重要なことだと考えられています。

RTB(Real Time Bidding)のロジックをベースしたDSPは「広告主にとって価値のあるユーザーへ広告を配信する」という特徴を持っているため、モバイル広告においても、より効率的な配信が可能です。台湾のある大手広告代理店は、「今年のプログラマティックバイイング予算は、去年より1.3~1.5倍拡大する」と宣言しました。以前の連載でもお話しをしましたが、DSPサービスの戦国時代に入っている台湾市場で、自分の商品に一番相応しい配信メディアを選択するには、メディアの配信設定の詳細、運用人員の対応と市場知識を持つことが必要になっています。

2.動画広告

日本での一般的な動画広告は、YouTubeのTrueViewをはじめ、Facebookなどで見られる獲得系動画(インストールや購入誘導目的とする短時間動画)と、ポータルサイト・動画広告アドネットワークから提供されるディスプレイ用広告の2点です。

台湾でもFacebook、YouTubeの動画広告は好調ですが、その他に、「ビデオアドネットワーク」というサービスも支持を得ています。人気映画やドラマなどの在庫を多く持つサイトがあり、動画広告専用枠の提供と、ビデオの放送途中にTVCMのように動画広告を配信する形式があります。現在、ほぼ中国系の企業がプラットフォームをもっており、台湾の企業は、代理契約の形で市場に参入しています。代表例は、「愛奇芸」で、日本に置き換えると「Hulu」や「Netflix」などの海外発のVODサービスに似ています。現在、2016年の台湾の動画広告市場の急成長は、「ビデオアドネットワーク」の活躍と深い関係がありますので、台湾でも関連サービスの開発について業界で話題となっています。

3.直播(生放送)

ニコ生実況者、ストリーマー(動画ストリーミングで発信している人)など、日本のみなさんの方が詳しいと思います。最近台湾で流行っているのは「直播」というネット生放送です。代表例としては、「PikoLive」(皮克直播)などがあります。日本の生放送と変わらず、実況主が自分の主張やテーマを自由に語ったり、コメントを送る視聴者とインタラクティブなやりとりをしたりしています。その他の特徴として、台湾の「直播」は、「打賞」(日本語の「おひねり」の意味)という面白い機能も付いています。「打賞」というのは、視聴者がプラットフォーム上で「プレゼント」を購入し(お花、車、お城など)、コメントと同じように実況主へ送ることができます。実況主もプラットフォームも「打賞」から収益を得ることができます。昔からゲームパブリッシャーはよく生放送を活用していますが、最近旅行や生活用品メーカーなどもプロモーション手段として「直播」を利用しており脚光を浴びています。

日本と台湾の両方からビジネスに携わってきた私からみると、海外広告市場の開拓はとても面白い仕事であると思っています。異なる文化とリソースによって広告内容や配信手段も様々で、さらに台湾のような競争の激しい市場は、常にハイスピードでサービスが進化・発展を遂げています。

今回、機会をいただき4回の連載で簡単に台湾のインターネット広告戦略と市場の今についてご紹介いたしました。海外展開・プロモーションにご興味があれば、ぜひ台湾市場をご検討ください。また、弊社ソネット・メディア・ネットワークス台湾は、現地への配信を検討される際に、現地広告市場に関するコンサルティングにも対応していますので、お気軽にご連絡いただければと思います。

それでは、皆さんの事業の発展と飛躍をご期待申し上げます。鴻圖大展!

ABOUT 林 靜怡 (リン チンイ)

林 靜怡 (リン チンイ)

ソネット・メディア・ネットワークス台湾(台灣碩網媒體網路股份有限公司)

台湾大学を卒業後、日本の大学院にて修士・博士を取得(専攻は木造建築)。
台湾にて広告PR関係の会社を起業、約3年間に経営に携わり、日本の総合広告代理店に勤務を経て、ソネット・メディア・ネットワークスに入社し、台湾事業の立ち上げに参画。
現在は、ソネット・メディア・ネットワークス台湾にて、日本法人、グローバル企業、台湾現地企業へプログラマティック広告のビジネス提案を行っている。