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データフィード広告市場で成長中のビカムに密着 [インタビュー]

2016年6月にメタップスグループ傘下に入り、新体制のもとで成長を目指すビカム。データフィード広告の市場調査を実施し、その結果を公表。そして、先日、セルフサービス型も統合したデータフィードマネジメントサービスをリリースした。

市場調査の結果や、事業の特徴と今後の取り組みについて、同社執行役員 金森 純氏、セールス ディビジョン マネージャー 蠣原 侑也氏にお話をうかがった。

(聞き手: ExchangeWire Japan 野下 智之)

― 自己紹介をお願いします。

写真1

金森氏(写真左) 執行役員という立場で営業統括をしており、当社の事業売上の責任者をしております。当社に入社して11年目で、データフィード関連事業を10年経験しています。ビカムに入社以前は、ゴルフダイジェスト・オンラインでメディア営業をしておりました。

蠣原氏(写真右) セールスディビジョンのマネージャーを務めている蠣原です。セールスの最前線に立ち、データフィードの最適化提案とダイナミック広告の運用を担当しております。
現場のお客様の声をエンジニアに伝え、新しいツールの開発提案をしております。

データフィードという言葉がない頃からサービスを提供

― 貴社の事業についてお聞かせください。

金森氏: 当社では三つの事業を展開しております。まず一つはメディア事業です。当社社名でもあるBecome.co.jpという商品検索サービスです。2007年2月にサービスを開始し、ECサイトの広告主様にユーザーを送客するサービスとして提供しています。Become.co.jp経由での年間流通総額は約200億円に上ります。これまで利用いただいた累計顧客数は1,300社以上にのぼります。

【Become.co.jp】

図1

二つ目はデータフィード作成・最適化サービスで、Become Feed Creator(ビカムフィードクリエイター:BFCという名称で提供しています。現在普及しているデータフィード作成・最適化サービスとしての正式なメニューとしてリリースは2012年10月で、国内では初のサービスであると認識しています。

2012年はCriteoなどのデータフィード広告が日本において普及し始めた年で、この頃から広告主様からのニーズが高まり、データフィードサービスを提供する事業者が増え始めたのもちょうどこの頃です。

もっとも、当社ではそれ以前から、クローリングでお客様のサイトからデータ収集をし、当社の商品検索サービス"Become"掲載用のデータフォーマットに変換するサービスを提供しておりました。まだデータフィードという言葉がなかった頃です。

三つ目が、データフィード広告の運用事業です。Criteoが日本に上陸した当初から取り組んでまいりました。メインのお客様は、Become.co.jpの顧客の中のEC事業者様です。
データフィードの最適化を活かしながら、商品検索サービスで新規顧客獲得の支援を行い、、リターゲティング広告で購買ファネルの下方のニーズが顕在ユーザーにリーチする、といった2つのアプローチにより広告運用を行っています。

― 貴社の特徴や強みについてお聞かせください。

蠣原氏: 当社のデータフィードサービスについては、累計で200社以上のお客様に使っていただいています。これらのノウハウを元にした当社の広告運用は、広告主様、媒体社様からご評価いただき、Criteoの認定制度代理店制度において2スターの認定を獲得しています。2スター認定企業は、データフィードベンダーとしては唯一我々だけです。

Criteoの取り扱いは2012年から開始しているため、あらゆるお客様からのニーズにも素早くお答えすることが出来ます。この点は当社の強みであり、例えば他社さんで3週間を要する案件も当社では3日で対応できるくらいのスピード感があることを評価いたいだています。

そして、あらゆるお客様に対応できる精度の高いクローリング技術を有しており、お客様にご好評をいただいております。データフィードベンダーでクローリングを提供している企業の数は多くなく、これを活用することで、自社でデータフィード管理をすることが難しい広告主様にも対応することが出来ます。

その他の特色としては、ECのお客様が多い点です。商品検索事業も通じて10年近くのお付き合いになる広告主様もいるため、ECのお客様に関する知見が豊富なことは大きな強みです。

― 貴社は2016年6月にメタップスグループの傘下に入りましたが、それにより何が変わりましたか?

金森氏: 当社新代表の高木誠司が昨年10月に着任しました。それ以外の体制に関してはこれまでは大きな変化はありませんが、既にメタップスグループ傘下に入り半年以上がたち、今年はより連携を強化していく予定です。メタップスのクライアント層はアプリがメインですが、当社はWebをメインとしています。顧客層が被らないので補完関係が大きく、それぞれのクライアントソースやノウハウを生かした高い相乗効果を生み出すことができます。

蠣原氏: メタップスグループは、毎年新しいものを創り出すカルチャーを持っています。ビカムでも代表の高木を筆頭に、新しいものをどんどんと創り出して、前に出ていこうという動きが強くなっていることを実感しています。

― 今回データフィード広告市場を定義して市場調査を実施されましたが、その背景や理由についてお聞かせください。

図2

※本調査結果の詳細情報はこちらから入手可能

金森氏: 私たちは昨年の6月末に株式会社メタップスの100%子会社になりました。新しい代表取締役社長として高木が着任し、組織も新しくなり、新たな事業計画を立てる上で、我々が軸足を置いているデータフィード広告市場に関する定量的なデータが必要でした。

しかし、私たちが長年サービス提供しており、近年盛り上がりを見せているデータフィードを活用した広告、いわゆるデータフィード広告をセグメントした市場規模データが、世の中にはありませんでした。

であれば、関係会社様にご協力を仰ぎ、自ら市場調査を行おうと考えたのが、今回調査を行った一番の理由です。データフィード広告業界全体の発展のためにも意義があると考えました。

― 調査結果について解説をお願いします。

金森氏: 調査を通して、2016年の市場規模は648億円で、前年に対して約5割増という著しい成長が見られるということがわかりました。この結果は業界の主要大手各社様に聞いた結果をベースに数字を積み上げて推測しましたが、私たちの感覚と同じであり、データフィード広告市場の成長に更に確信を持つことが出来ました。2016年のインターネット広告市場は媒体費のみで1兆378億円でした。数年前のシェアは2~3%でしたが、現在は6%を超える水準になってきており、恐らく2020年には1割前後の水準になるでしょう。このように、インターネット広告市場全体におけるプレゼンスは今後も高まっていくことが明らかです。

データフィード広告のプレゼンスは、現場でも日に日に高まっていることを強く感じます。
ECの広告主様の場合、SEM、商品検索、アフィリエイト、ディスプレイ広告を出稿されているケースが多いかと思います。特にディスプレイ広告の予算配分は2015年の半ば頃からCriteoをはじめとするデータフィードを活用した動的リターゲティングのシェアが急激に増えてきたという印象です。

― 広告代理店さんの変化は何か感じられますか?

蠣原氏: 広告代理店様は、2015年頃からデータフィードの専門部署を設置する動きが進んできました。その後Criteo、Google DynamicXをはじめ様々な媒体に注力領域を広げつつあるという印象です。

― 調査結果の中で、特に印象に残った点はありますか?

蠣原氏: 配信先が従来の一般サイトから、検索サイト、ソーシャルメディアへと広がっていることでしょうか。有力媒体も新たに今後参入してくるという話も耳にします。これまで配信できなかったユーザーにも配信が出来るようになるので、データフィード広告は今後もまだまだ増えていくということを改めて認識しました。

また、今回の調査では業種別構成比も調べましたが、この結果には学びがありました。よく、データフィード広告はEコマース、人材、不動産、旅行の4業種の広告主需要が中心であるといわれてきましたが、中でもEコマースと、人材で3分の2を占めており、リターゲティングに加えGoogleやIndeedといった検索系のニーズもあること考えられます。今回の調査結果においてその裏付けが得られました。
また、一方で新たに電子書籍のカテゴリが伸びてきているという結果も得ましたが、肌で感じていたことを改めて確信しました。

金森氏: 私たちは従来ECのお客様を中心にお取引してきましたが、この領域が引き続き伸びているということが確認できたのはよかったですね。ECの分野はメディアビジネスも含め深堀していきますが、データフィード関連のビジネスでは、それ以外にも人材や旅行などの業種のお客様ともお付き合いが増えてきています。

また、将来的には、現在のECの業種に限定しているメディア事業を、他の業種向けにも展開していくことも視野に入れています。例えば、人材や旅行、不動産などの業界向けの検索サービスなどです。その事業計画を立てるうえでも参考になります。

図3

3つの事業領域全てに成長余地あり

― 貴社の事業における今後の展開についてお聞かせください。

写真2

金森氏: まず前提として、当社の3つの事業全てにおいて拡大の余地があるとみております。

データフィードベンダーの事業としては、データフィード広告市場が伸び、そして広告主様がデータフィードを使う広告メニューは今後も増えていくと考えております。広告主様や代理店様において、データフィードの利活用のニーズも比例して増えてくと思いますので、このことはそのまま当事業の拡大につながります。
今後、広告メニューやお客様のニーズも多様化してくると思いますので、サービスのアップデートは随時行っていきます。

直近では、現在提供しているアウトソース型のデータフィード作成・最適化サービスを発展させたBecome Feed Platform(ビカムフィードプラットフォーム:BFP)を開始いたしました。これまでのデータフィード作成サービスだけでなく、セルフサービス型も選択できるようにするなど、お客様からのあらゆるデータフィード広告ニーズに対応できるデータフィードのプラットフォームです。

【Become Feed Platform】

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図5

元々当社では、2015年にグローバルフィードioというセルフサービス型のツールを開発していました。一部のお客様、代理店様にテスト的に使っていただいていましたが、まだこの時期は代理店様や広告主様にデータフィードが普及しきれておらず、その有効性に対する理解も今ほどは進まなかったため、一旦サービスをクローズしました。

その後、2016年後半頃から広告主様は広告代理店様のデータフィードに対する活用のフェーズも変わり、広告主様や広告代理店様が、データフィードをただ単に広告配信用の商品登録データとして使うのではなく、広告運用の最適化において戦略的に使うフェーズに移行した今のタイミングにリリース時期を合わせました。

写真3

このツールでは、データフィードを使った広告の配信や最適化といった基本的なことが出来るようになっています。今後市場がデータフィード広告の運用において求められることは日に日に高度化しています。例えば、ユーザビリティーに対応したデータのリアルタイム更新の技術や、各媒体の広告メニューごとのオプションに正確に適応して広告効果を高められる機能などをプラットフォーム上で管理できるようなツールを皆様にお届けすることを念頭に置いて今後の開発を進めてまいります。

蠣原氏: 特に広告に表示される情報のリアルタイム性については、今後改善されていくべき余地として残されています。そこで現在当社では、データフィード広告向けのデータ収集の更新頻度を高めて、リアルタイムに近い形で提供可能な機能を開発いたしました。

データフィード広告業界の課題として、広告で表示された商品を見たユーザーが、実際に広告をクリックしてECサイトを訪れたときには、既に在庫が切れてしまっているというような状況も起こり得ます。
このような課題に対して、当社では、この原因である情報更新の遅れの要因を取り除くことへの取り組みを、ベンダー側から進めています。

蠣原氏: 機能面における当社の強みは、データのリアルタイム更新や、画像認識機能などです。データフィードはこれまで広告配信の手段に過ぎませんでした。ですが、今後はBFPの中で管理をして、広告主様、代理店様に、データフィードでどのようなことをすることが出来るかを認識していただきたいと思っています。当社では、データフィードに対する苦手意識を払しょくしていただき、また広告配信の手段に過ぎなかったデータフィードを、広告運用効率改善のツールとしても役立てていただけるようなサービスにしていきたいと考えています。

― 広告代理店さんのニーズの変化を意識されて機能に取り込まれているのですか?

蠣原氏: はい、私自身が広告主様や広告代理店様のところに行ってニーズをお聞きすることが多く、皆様の声をエンジニアにフィードバックし、機能改善に繋げています。

金森氏: データフィードの管理や運用に関しては、ベンダーにアウトソーシングをして全て任せてしまいたいという方もいらっしゃれば、ベースデータはアウトソースし、簡易な修正、変更は自ら行いたい方、、社内にノウハウを蓄積したい、あるいはご自身で全て対応されたいという方もいらっしゃるなど、広告主様・代理店様のデータフィードの運用に関するニーズは様々です。

このような多様化していくニーズに、当社ではBFPの機能を通じて対応して参ります。

金森氏: 三つの事業のうちの二つ目、広告運用サービスについては、現在当社はCriteoさんやKANADEさんをはじめ、複数の媒体を代理店の立ち位置で運用しています。広告代理店様と同じ立場になってデータフィードを使い実際に広告を運用してみないことには、データフィードでどのように広告効果を上げていくべきかということが肌感で分かりません。

私たちも実際に運用をすることで各媒体の特徴を把握し、各広告メニューの今後のプロダクトアップデートにも素早く対応し、それを広告効果につながるようなプロダクトの改善に繋げていくことが可能です。

今後も、市場の成長に沿って、データフィード広告の運用サービスを提供していきたいと考えてりますし、事業としてさらに伸ばしていけると考えています。

三つ目のメディア事業ですが、当社はBecome.co.jpという、データフィードが活用できる商品検索メディアを自社で持っています。これにより、開発したデータフィード関連のプロダクトをすぐに自社サイトでテストすることが可能です。
また、先ほど申し上げたように、現在のEC関連のメディア事業のノウハウをもとに、他業種のメディアへの横展開を検討しております。

当社は「Data to Value」、つまりデータを価値に変えることをミッションとしています。
弊社のメディア事業、データフィードマネジメント事業、データフィード広告運用事業は、データフィード最適化をコアに密接にリンクしております。データフィード広告市場の成長とともに、我々も今後大きく成長していきたいと思っております。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。