「ドライバーのいない」マーケティング:デジタルマーケティングオートメーションは正しい道を進んでいるのか
(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)
ラスベガスで行われた2017年のCES、はドライバーを必要としないモビリティソリューションに多くの注目が集まった。自動運転のテクノロジーによって、目的地まで安全に着くまでの間、ドライバーは好きなことをして時間を有効活用できる。
CESのハイライトのひとつはBMW社による i Vision Future のテクノロジーで、センサーがハンドジェスチャーを理解する機能を備えていた。マーケットプレースにおける消費者の複雑なシグナルを理解し、半自動的にマーケティングを行い、「ドライバー」のリソースを軽減することは、マーケティング及び広告テクノロジーにとっても将来的な目標である。
プログラマティックによってAIを利用した統合マーケティングが進められる一方で、マーケティングテクノロジーとアドテクの境目は曖昧になっている。Adlicious社のマネージングパートナーであるDaniel Skoda氏が、ExchangeWireに独占的に寄稿し、「ドライバーのいない」マーケティングにおいて、道を間違えないための施策について語ってくれた。
まず自動運転の自動車と同様に、定義から考える必要があります。未来の自動車と同じように、デジタルマーケティングにおいても様々なレベルが考えられ、当然ながらリスク要因もあります。テクノロジーによって、消費者のシグナルを正しく理解し、ターゲットに対して正しく費用を投じられるのでしょうか?もしより複雑な「高速な」タスクにおいて、シグナルの解釈を間違えたらどうなるのでしょうか?
「レベル0」の車は、全く自動運転のテクノロジーを備えていません。一方で自動化の要素を備えていないデジタルマーケティングは存在しません。「レベル1」の車はクルーズコントロールをサポートしています。広告で言えば、ペースの自動化という意味で、予算に関する項目が自動化されている状態でしょうか。「レベル2」は車で言えば、(限定的ながら)正しい道路で手を離した状態にて運転可能にする技術を指し、マーケティングではアドテクによってメッセージが正しいオーディエンスに伝達されることを指すのかもしれません。
自動化は、全ての人が利用し依存することができる、マーケティング業界にとって効果的なテクノロジーであることは明らかです。今までの(メディア予約のような)マニュアルのやり方に対して、「運転をしない」アプローチはビジネスのスピードをより速いものにします。しかしながら、ドライバーが運転についての責任を負うのと同じように、システム設定がエクスパートによって確認され、調整されることで、より良いトラクションが生まれるような仕組みが必要です。
レベル3や4にある車のイノベーションによって、短い間、道路から目をそらしたり、緊急の何かに取り組んだり、少し長い時間「自動運転」のモードにして、データや地図からのシグナル、センサー、交通情報などに依存することが可能になっています。自動車における「視線なし」や「センサーなし」の状態と同様、人間のコントロールなしにマーケティング費用を自動化して運用される姿は想像しがたいです。
高度なレベルでの自動運転のテクノロジーによって、高速のジャンクションAからBへの運転など、ドライバーが時間のかかるタスクを行う必要がなくなります。これは運転席以外から得られる情報に多くを依存しており、誤った情報によるリスクは計り知れません。更にコネクティビティやAI、サーボモータに関連した技術要件は高いです。
マーケティングにおけるAの分析からBの予算割り当てに至るまでの道筋において、テクノロジーによって自動での有益なセグメンテーションを実行できます。私たちはマーケティングテクノロジーという場所にて運転を行っています。Chris Le May氏はこの場所での主要なリソースはデータであると述べています。それでは、ここに投資を行うのは安全で価値のあることなのでしょうか?(デジタル)マーケティングミックスにおいて、事故や道を間違うことなしにどのように目的地につくのでしょう?テクノロジーがあなたの究極的なKPIゴールを実現する日があるとすれば、いつになるでしょうか?
Google、OracleやIBMは年間2500億ドルもの費用を研究開発費に費やしています。それに対してドイツの自動車業界だけでも年間4000億ドルの費用を研究開発に費やしています。また、完全な自動運転が可能になる「レベル5」が市場で利用されるようになるのは2030年から40年にかけてと言われています。自動マーケティングの複雑化を過小評価すべきではありません。そういえば、Google/Alphabetは自動運転のテクノロジーに投資をしています。
マーケティングの世界においては、少なくともある程度、ドライバーレスに進む「実務的なシグナル」はまだ見つかっていません。多くの量のセンサーがアドテクには存在するのですが、それらは正しく配置され設定されているでしょうか?消費者のシグナルはどのように解釈され、ウェイトがおかれ、予算決定において活用されるのでしょうか?システムが正しくデジタル上の地図や消費者の動きを理解しなかったことで、誤った道を進んだり、貴重なマーケティング機会を失いたいとは考えないと思います。
プログラマティックのエコシステムは分散したマーケットプレースと言えます。DMPからDSPに接続することで仕事は完了ではなく、効果的な消費者との会話のために、より多くのことが理解され、管理される必要が有ります。(法的な対応は別にして)データ収集やプロセスは一つに過ぎません。デジタルマーケティングを正しい形で進めるために、競合を倒し、ベンダー依存がない形態において、いかにサーボモータを適切な運転に生かしながら、センサーデータを集めるのでしょうか。
「ハンズオフ」は多くの道路で実証されていますが、マーケティングにおける運転手であるあなたがデジタルの世界を運転するにあたり、自動化で行われる業務がどのようにつながっているのかを把握しなくてはなりません。個人の持つ専門領域、状況による優れた判断、あなたの車に関する経済・技術情報を活用して初めて、迷ったり、追い越されたりする心配がなくなるのです。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。