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縦型動画の強み、C CHANNEL×LODEO「【最先端】スマホ動画活用セミナー」

スマートフォンで視聴する動画市場のますますの広がりが期待される2017年。動画メディアの成長やスマホ動画広告の動向についてトップランナーがノウハウを披露した共同セミナー「【最先端】スマホ動画活用セミナー」が1月25日に開かれた。

スマホ動画メディアの先駆けである「C CHANNEL」代表の森川亮氏、インターネット広告取り扱いトップのサイバーエージェントの動画プロダクト「LODEO」責任者の加藤徹氏が登壇し、事業の特徴やプロダクトへの思いを明かした。

「最後まで見せる動画」はスマホで実現できるか?

写真:1「スマホで動画を見る時代は本当にくるのか」。そうよく問われるという森川氏は、昨今のSNSを通じた情報の過多によって、文章ではなくタイトルや画像のみで情報を得るひとたちの存在を指摘し「スマホが登場して、ゲーム産業も音楽産業も変わった。おそらく10年以内にはテレビ産業も変わり、確実にスマホで映像を来る時代が来るだろう」と述べた。

2015年に立ち上げたC CHANNELは、「短い時間の中に情報をいかに詰め込むかが重要」(森川氏)と1分程度の短さの、料理やヘアメイク、DIYなどさまざまなハウトゥー動画を提供し、直近の月間再生数は今月が約6億再生とのこと。海外展開を広げており、タイや台湾、インドネシア、中国、韓国のほか、春にはフィリピンやベトナム、マレーシアなどでもサービスを提供する予定。それぞれ各国・地域でトップの再生回数で、自社メディアに加えてFacebookやTwitter、KakaoTalkやWeiboなどの動画サイトでも展開している。

動画は視聴だけでなく、撮影にもスマホを使用。テレビ局経験のあるスタッフの手による高品質な自社制作動画のほか、自社のオープンスタジオでは「クリッパー」と呼ぶ500人ほどのインフルエンサーが自撮りで撮影、編集も行うため、コストが低く撮影スピードも速いという。

特徴は、縦型動画ということと、エンゲージメント数の高さだ。縦型だとスマホ自体の形を生かせることと片手で持てるため、「この傾向はますます高くなると思う」(森川氏)。ソーシャルで重要なのは拡散数だが、ポイントはハウトゥー動画であること。過去に拡散された動画は面白い”ネタ系”が主だったが「今はネタ系ばかり拡散すると、フォロワーなどに馬鹿にされてしまう。役に立つ動画をテンポよく配信することが重要」(森川氏)。

ハウトゥー動画の場合は見て参考にするユーザーが多く、「ヘアスタイル動画で約70%、料理動画で約55%が視聴後に実際に試したとの調査結果が出た」として「広告でも最後まで見たいという気持ちが強い。繰り返して見るので再生数で5倍、エンゲージメントは10倍という結果」と語った。

動画の後にコマース事業も始めたそうで、「ユーザーの購買行動を促せるのも動画ならでは」と指摘。特に今後本格的にサービスを展開する中国は、オンライン販売に親和性が高い国民性のため、「コマースで業績を上げたい企業にとってはパワフルな味方になれる」と胸を張る。

写真:2

再生完了率が高いため、一番売れているのはネイティブ広告だという。料金はトライアルが1カ月で動画2本制作込みで300万円とのことだ。C CHANNELの自社アプリとウェブ、FacebookとTwitterで配信し、継続割引やオプションでLINEとインスタグラム配信も可能。また、既存の横長の素材を生かすメニューや、カテゴリそのものを”ジャック”することもでき、写真:3ネクストのホームズに「住まい」カテゴリを販売し動画を制作、配信した事例がある。

HowTo動画以外にも、ドラマやダンス、歌などのエンタメコンテンツの準備しており、ストーリーの中で見せる方法やインフルエンサーを使って見せる施策の計画を立てている。また4月には東京で大規模な動画の中のHowTo動画の体験型イベントを予定しており、それらの組み合わせでスポンサーの幅の拡大も示唆。
「HowTo動画はユーザーの再生完了率や、その後のアクション率が高く、そうしたデータも一緒に提供できる。これらのデータを活用したマーケティングも、同時に可能になる」と話した。

コンテンツ表示最優先でも、動画も見せる

次に登壇した加藤氏が率いるLODEOは、スマホに特化した動画プロダクトだ。

サイバーエージェントの調査データによると、2017年度の動画の市場成功見込みは1000億超。「スマホは600億を超えて、PCのマーケットを超えてくる」と加藤氏は語った。

動画広告は、YouTubeに代表される動画メディアの中に動画広告が挿入される「インストリーム型」、Facebookなどソーシャルのインフィードに動画が自動再生される「ソーシャルインフィード型」、LODEOなどストリームの外へ流す「アウトストリーム型」の3つの形式に大別できるが、動画マーケットの広告予算は「恐らく7~8割がYouTubeとソーシャルが占めている」(加藤氏)。

一方で、国内で4100万人いるといわれるスマホユーザーへの動画広告のリーチという点でとらえると、プラットフォームの競争の激化で1社あたりのリーチ数は少なくなっており「TrueViewやFacebookなどプラットフォームへの出稿が集中してきているなか、当初の期待通りのリーチ数、規模感を出せなくなってきているのが現状」と指摘。
実際にYouTubeやFacebookも自社プラットフォームだけでなく外へネットワーク化して広告を配信できるよう力を入れてきているそうで「動画の配信可能性は、その外の”在庫”をどう活用するかが肝になる」と解説した。

アウトストリーム型動画は、一般のウェブサイトやアプリで再生される動画広告で、枠がビューアブルで自動再生させるケースが多い。基本的には無音再生で、到達可能なリーチ数の大きさが見込まれることと、再生開始課金形式を採用しているプロダクトの多さも特徴。提案時は、広告主からはリーチ、メディアにとっては収益性などのほかに「コンテンツを見ているところに動画が差し込まれて、ユーザーの心象が悪くならないか」という点を一番気にされることが多いという。

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「動画広告に対するユーザーの意向はシンプルで『できるかぎり邪魔しないでほしい』としか思っていないので、コンテンツの表示が最優先なのは絶対にぶれてはいけない。でも確実に広告を見てもらうという、一見相反する課題を解決できれば価値が高まる」(加藤氏)。

そのためLODEOでは、同じクリテイティブの動画広告を形式を変えて配信する実験やブランドリフト調査を実施。画面占有率90%の縦型広告と、一般的な横型のアウトストリーミング動画で前者に高い効果が得られたそうだ。

その結果、画面の占有率9割を超える動画で強いインパクトで訴求可能「タテフル」、上下にバナー広告のような画像が挿入でき、疑似的なLPを作成する「ダブルパネル」、動画広告下部に他の動画への再生ボタンを用意した「フリックパネル」の3つのフォーマットを用意することとした。ダブルパネルは上下部分へブランドのキャンペーンページなどへのリンクをはれば、通常は別料金が必要な誘導も視聴だけで済み、フリックパネルは同じ配信面上で連続的な再生が可能なためシリーズ物のCMなどへ有効性が見いだせるとのこと。

それらを、運営元もユーザーの目的も堅実な、プレミアムメディアへネットワーク化し、ユーザーにとってストレスにならないデザイン、再生速度の速さなどで展開。また近日には視聴完了率の最適化機能をリリース予定。「同じクリエイティブでもメディアによって当然効果は違う。適応するクリエイティブのマッチングの構築なども、プログラマティックに最適化していきたい」と話した。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。