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「悲しさ」や社会問題さえ訴求効果のあるテーマに―Unrulyが東京五輪に向けての動画コンテンツ戦略を指南

 

動画広告配信プラットフォームのUnrulyが、2月21日、都内にて、2020年開催の東京オリンピックに向けた動画コンテンツ戦略に関するセミナーを開催した。

Unrulyの研究部門では、動画視聴に対する消費者反応についての分析が日々行われている。この分析結果を基にした動画コンテンツ戦略のコンサルティングを業務の一環としている同社が、今回は2020年東京オリンピックの公式スポンサーとして登録された各企業の担当者のみを主な対象とした説明会を実施。同研究部門の責任者を務めるイアン・フォレスター氏がロンドン本社より来日し、2012年のロンドン大会、2016年のソチ大会(冬季オリンピック)、2016年のリオ大会における実例を挙げながら、2020年の東京大会に活用できる様々な知見を披露した。

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インサイト・グローバル・ヴァイスプレジデント
イアン・フォレスター氏

フォレスター氏は、動画コンテンツにおいては、視聴再生数の中でシェア数が占める割合を示す「シェア率」がKPIとして有効であると主張。広告投入量と連動しやすい視聴再生数とは異なり、シェア数は「お金では買うことができない」ため、動画コンテンツの質や広告の費用対効果を計る上ではシェア率が有効な指標となるという。

このシェア率において、2012年のロンドン大会で目覚しい成果を示したのが、米一般消費財メーカーのプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)の動画広告だった。「Best Job(最高の仕事)」と題して、子育てを行なう母親の苦労とオリンピック選手たちの奮闘ぶりを関連付けた本動画は、競合他社の10倍以上という爆発的なシェア数を獲得した。フォレスター氏は、大会開会前の4カ月前には既に大多数の視聴者へのリーチを達成していた配信戦略も功を奏したと評価。また閉会のタイミングに合わせて、金メダルを獲得した英国代表選手を次々と登場させたスポーツ用品メーカーのアディダスの動画広告も東京大会に向けて参考にできる一例として紹介した。

写真2

ジャパン・カントリー・マネージャー
香川晴代氏

オリンピックに連動した動画広告のコンテンツは、必ずしもスポーツに関連した内容に限定されない。冬季五輪は夏季五輪ほどの注目を集めることが難しい傾向にある中で、2014年のソチ大会では、社会問題の側面から視聴者の関心をうまく掴み取った広告が見られた。主催国のロシアにおける性的少数者(LGBT)の処遇に関心が向けられた本大会では、シェア数において、LGBTをテーマに扱った動画広告3作がベスト10入り。著名企業ではないにも関わらず、カナダの社会活動団体カナディアン・センター・フォー・ダイバーシティ・アンド・インクルージョンが配信した動画広告が多大なシェア数を獲得した事例などについて説明した。

2016年のリオ大会では、パラリンピック選手が持つ高い能力についてユーモアを交えて取り上げた英民放局チャンネル4の動画広告がシェア数で1位に。3大会を比較すると、動画広告コンテンツの内容や切り口などが段々と多様化してきていることが分かる。

フォレスター氏は続いて、Unruly独自の測定ツールを使い、今回紹介した各動画広告を見た視聴者はどのような感情を喚起させられたのか、またブランドの想起率や購入意思の度合いなどを数値化したデータを披露。従来はスポーツ関連広告ではあまり取り扱われてこなかった「悲しい」「面白い」といった感情を訴求する広告さえも近年の大会では見られるようになってきているという。こうした事例を踏まえた上で、どのような感情訴求が効果的であるか、また時事問題との関連付ける際の注意事項などについて語った。

ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長

ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。