「スマホの動画視聴のあり方、解を見つけたい」 サイバーエージェント「LODEO」が目指す世界 [インタビュー]
今後の動画広告市場で急速な普及が予想される縦型動画を先んじて提供を始めた動画広告アドネットワークの「LODEO」。運営するサイバーエージェントのアドテクスタジオ LODEOカンパニープロダクトマネージャー、加藤徹氏に、縦型動画広告の魅力やプロダクトのこだわりについてお話を伺った。
(聞き手:ExchangeWire Japan 野下 智之)
― LODEOのサービスやビジネスモデルについて概要を教えてください。
動画のアドネットワークを提供しています。アウトストリーム型といわれる領域で、スマートフォンのWEBメディアやアプリ上で動画広告の枠を在庫として抱え、そこにユーザーが来訪した時に、動画広告が自動再生されるような仕組みのプロダクトです。
配信面としては、プレミアムメディアと呼ばれる、良質なコンテンツを提供している法人運営メディアを中心にネットワーキングしています。主に大手新聞社や出版社系、スマホの大手メディアや情報アプリと連携しています。
「スマホ動画は縦型」が、徐々に浸透
― 動画広告市場のユーザーの視聴環境や行動の変化を感じることはありますか。
コンテンツとしての動画と動画広告そのものをスマホで視聴するという行動自体に対し、ユーザーの抵抗感がなくなってきていると感じています。特にFacebook動画の自動再生機能が出てきたあたりから、スマホで動画が自動再生されるような視聴環境にユーザーも慣れてきたようにも感じています。一方で全体の環境を見ていくと、格安SIMのようにデータ制限があるようなプランの市場が大きくなってきている面もある。そのような制限の中で動画広告をユーザーごとに適切に見せられるかどうかは、今後の課題でもあります。マーケットを攻略していく上では考えるべきことです。
― 縦型動画広告のトレンドはいつ始まったのでしょうか。
「縦型動画広告のマーケットがくる」という話は数年前から各広告代理店やメディア関係者からチラホラと出始めていましたが、その当時の国内ではまだ急伸長する市場とは受け止められていなかったと思います。ただ一方で海外では「Snapchat」の急進、「Meercat」などのライブチャットサービスなど縦型動画を基礎としたメディアやコンテンツがどんどんユーザーを獲得して伸びていっている。日本国内でも「C CHANNEL」のような縦型動画に特化したメディアも出てきて急成長しています。ユーザーもスマホカメラでの動画の自撮りや撮影した動画の公開や交換行動も活発になり、縦型動画ならではの動画の表現や構成などが広く認知活用され始め、浸透スピードが加速してきました。
― ユーザーにとって縦型動画であるメリットは何でしょうか。
シンプルに、スマホを片手で持ったまま大きく動画を見られることだと思います。通勤時の電車の中など、片手でそのまま見ることができるのは大きなポイントです。
スマホを横向きにしても片手で見ることはできますが、ほとんどのメディアのスマホ向けのコンテンツが縦向きに作られている中で、横型の動画は縦の画面で小さくしてみせるか、ユーザーにスマホを横向きにさせるという行動をとらせて視聴させるしか大きく見せる方法はありません。片手で操作することが基本となっているスマホのなかでは、動画広告を見るためにわざわざスマートフォンを横に持ち変えるという行動は現実的に起こりにくいと思います。そういう意味でも、ごく自然にユーザーが動画に触れることができるのは縦型だと思っています。
― 縦型動画の普及状況を教えてください。
縦型動画が形成する市場規模を明確に言えるほどのデータなどは実はまだほとんどありません。全体のマーケットはまだ数字では測りきれないのですが、縦型の動画の視聴行為そのものの数は増加していることは、各種調査結果からも明らかです。
縦型で高いブランドリフトを実現
― LODEOの縦型動画広告に関する特徴についてお聞かせください。
アウトストリーム型の動画ネットワークを運営していく上でのポイントは、一つは良質な配信面に露出すること、もう一つはリーチがとれること、そして配信した結果としてきちんとブランドリフトさせることです。これがプロダクトを作っていく上での大事な思想だと思っています。
また、ユーザーのメディア閲覧の邪魔にならないことも大切にしています。ユーザーの見ている可視スペースと時間を力ずくで奪うようなプロダクトにはしたくない。できるだけユーザーの邪魔にならずにスムーズに視認してブランドリフトするという、一見すると相反する課題をきちんと一つのプロダクトの中で成立させて解決できることが重要だと思っています。視認性がもっとも高く動画を最後まで見てもらうために占有面積にこだわっているのですが、スマホの画面をほぼ占有しながらもきちんと動線の中で広告を閉じることができることや、次のコンテンツの始まり方が画面の中でデザイン的に工夫されて設計されているか、ユーザーがスムーズに移動できるかを、フォーマット開発においては重視しています。
― 効果に関する事例はありますか?
複数のクライアント様からご要望をいただき、実際に縦型と横型で配信して効果の比較をしました。結果、ユーザーの広告認知は明らかで、縦型動画の方が横に比べて約20ポイント高い数値が確認できました。クリエイティブによる変数もあるのですが、広告商品の利用意向でもほとんどのクライアント様で、横型よりも高い傾向が出ています。ブランド認知でも、縦型の方が約10ポイント大きく出ているケースもあり、全体として明らかに縦型の方が貢献できそうだというという手応えを感じてきています。
クライアントの業種は、飲料、アパレル、映画関係、自動車、コスメなどさまざまですが、どちらも縦型へ前向きな反応をしていただいています。デモやモックをお見せすると関心をもっていただけることがほとんどですし、やはり「縦に使うスマホは縦に広告を出すことが自然だよね」という声を多くいただく。早速トライしてみたいという感想をすごくたくさんちょうだいするようになりました。
動画の素材としては、縦の動画枠に合わせた縦型動画を制作することがベストだと考えていますが、現実的には縦型動画を個別で作ることプランしている企業は少ないのが現状です。したがって、今はテレビコマーシャルで使った広告素材を縦型にトリミングをして編集し直して配信することがほとんどです。ただし、その場合出演しているタレントの権利の都合や、横から縦への編集で重要な要素が見切れてしまうというような課題がでてくることもあります。
そこで、当社では、従来の横向きの動画素材をそのまま活用でき、縦の枠でめいっぱい使うためのフォーマットも必要だと感じて、他のダブルパネルやフリックパネルというフォーマットも開発しました。
― 縦型動画広告の展開イメージは?
クライアント様にとっては、全体の動画予算が決まっている中で、メディア単位での予算配分のプランはあっても「縦動画の配信予算でこのくらい」というような予算の取り方というのは現状はあまりケースとしてはないでしょう。したがって、広告企画段階で「縦でも見せられるような動画作ったほうがいいね」「飲料だからスマホでは縦で見せたほうがいいのでは」など縦の動画を作るべきだという議論や風潮がもっと当たり前に定着していく必要があると思っています、そのようなケースの場合には「縦型ならLODEOだったよね」とお声がけいただくことが徐々に増えて来てはいるのですが、まだまだ啓蒙をしていく必要があると思っています。
スマホで見る動画は縦で見る方が自然だよねという周知をしっかり行いつつ、縦での素材の用意がマーケティングの戦略上で普通になってくるような状態を、私たちが引っ張って作り上げていきたいと思っています。
動画広告にもアドテクを
― 今後のLODEOの展望について教えてください。
LODEOでは、テクノロジーを駆使して動画のスマホでの視聴のあり方の解を見つけることを目指しています。今の動画広告マーケットは、テレビコマーシャルの補完という立ち位置での活用がほとんど。テレビではリーチし切れないユーザーやいろんなネットワークに対し、テレビコマーシャルのために作った素材である程度の面の指定とある程度のターゲットの指定をし、CM動画をただ流す、というプロモーション設計がまだまだほとんどを占めているのが実態です。
広告を当てるターゲットや投資配分などを精緻に最適化する技術が進歩してきたアドテクノロジーの世界の中でも、まだまだ動画広告市場は発展途上だと考えます。動画を見せるべき相手に対して、見せるべきタイミングや場所、見せるべきクリエイティブや見せるべき長さで、配信側がしっかりと制御して広告を当てていくような精巧なアドテクプロダクトを目指したいと思っています。
まだ構想段階ではありますが、場合によっては縦にも横にも自動制御されるようなフォーマットがイメージとしてはありえます。クリエイティブだって、人によってはコピーワークが最初に出てくるような動画が最後まで見てもらえる可能性が高いし、別の人には商品や使っているカットが初めに出てくる方が効果的かもしれない。クリエイティブの変数をどんどん増やしていくようなプロダクトであったり、配信される面や尺できちっと最適化をかけていったりするようなプロダクトに仕上げていきたいと思っています。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。