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クオリティー担保で“媒体力”アップもサポート Yahoo!コンテンツディスカバリー [インタビュー]

 

急速な市場成長が続くレコメンドウィジェット市場。シェア拡大を目指す「Yahoo!コンテンツディスカバリー」の戦略と、Yahoo! JAPANならではの独自のサービスポリシーや取り組みについて、プロダクトを統括する宇都宮 正騎氏に伺った。

(聞き手:ExchangeWire Japan 野下 智之)

― Yahoo!コンテンツディスカバリーの概要について教えてください。

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Yahoo!ニュースに掲載されている記事のテキストの下には「こんな記事も読まれています」という案内とともに二段に分けたコンテンツが表示されます。レコメンドモジュールと呼んでいますが、これを提供するサービスが、Yahoo!コンテンツディスカバリーです。

Yahoo!ニュース上では、このモジュールの上半分が他のYahoo!ニュースの記事へのリンク、残りの下半分が出稿主様が広告として出稿しているスポンサードコンテンツへのリンクになっています。これを一体として出していくという仕組みです。

ユーザーには記事を読んでいる感覚のまま、他記事や企業の展開するコンテンツへ遷移して楽しんでいただけるサービスになっています。

― 技術基盤として提携、採用されているTaboola社のエンジンの特徴は?

Taboola社は、レコメンドモジュールを提供するだけの事業者ではなく、さまざまな媒体社様のメディアとしての力や収益性の向上につながる、各種ソリューションを提供しています。

Taboola社のエンジンを使って、質の高いコンテンツリンクをYahoo!ニュースの記事に関連して表示するだけでも、CTRの差が倍近く出ることがあります。CTRが高まると当然、回遊性やPV数、1セッションあたりのPV数も上がり、媒体力も高くなっていく。ユーザーはそれだけ時間を費やしているので、媒体への満足度も高まります。Taboola社では記事の自動編集や編成機能も開発していますので、パブリッシャーファーストでサービスを提供していくという考え方が軸になっています。

― 媒体社へのエンジンの提供は無償なのですか?

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はい。代わりに出稿コンテンツ枠を設置してもらっています。出稿コンテンツは質にとてもこだわっています。いわゆるLP(ランディングページ)と呼ばれる、いかにも広告のようなページは出さないのがポリシーで、ユ-ザーが読んで楽しめる、見て楽しめるものを対象にしています。

配信されるコンテンツには、出稿主様が自身で制作されるものや、媒体社様との編集タイアップ広告、Yahoo! JAPANが広告主様向けに制作した広告特集ページもあります。

媒体社様が、Yahoo!コンテンツディスカバリーにご出稿いただくと80媒体以上のメディアに同時に掲載されるので、そこからの集客も可能です。例えばある出稿主様が新聞社の媒体に編集タイアップ広告を出稿されたとして、レコメンドモジュール内にその誘導枠が表示され、新聞社の媒体へ飛ぶこともあります。

― 出稿コンテンツの質を保つための特徴と仕組みは?

「広告もコンテンツであること」にすごくこだわっているので、審査基準をしっかりと満たしたものしか表示されない仕組みになっています。

審査のフローは大きく分けると、まず関連法規や取り扱い禁止サービスなどのベーシックなものをチェックし、LPではなくて記事や動画など楽しめるフォーマットになっているかという確認をします。その上で中身を見て、ユーザーにとって役に立つのかという点まで審査します。ルール作りにはYahoo!ニュースに協力してもらい、Yahoo!ニュースの編集の考え方を参考にしました。公共性や大勢にとって関心事になりうるか、なども考慮しています。
例えば、ユーザーに受け入れられやすい、CTRが高いコンテンツは、よりたくさん配信されるようになります。

― 配信実績はどのくらいですか?

インプレッション規模で、全デバイスで月間約250億インプレッションです。もっとある月もありますが、配信量がYahoo!ニュースが中心で、ニュースは内容によって数字が変わってくるので、多少の増減はあります。

パソコンとスマートフォンの割合は、インプレッションで考えると若干PCの方が多いでしょうか。

― どのような出稿主が出稿していますか?

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健康食品や美容系の出稿が多いですが、ここ数カ月でバリエーションが増えました。官公庁からの出稿もあります。

ファッション系も増えています。コーディネートや小物の紹介ですね。これから春にかけて人材系や不動産などが増えていきます。

伸びている出稿主様は、コンバージョンのみで判断するのではなく起点評価で活用してくれています。その商品を、ユーザーがどこで知ったかをさかのぼってリサーチしていくと、Yahoo!コンテンツディスカバリーへの評価がすごく高まるのです。そういう考え方をしている出稿主様には、継続的にご出稿いただいています。なにかを知ってもらう、深く認知してもらうという点はYahoo!コンテンツディスカバリーの得意分野です。

それまで知らなかった人にお知らせすることで、需要を喚起していく。それで、検索してくれたりSNSでアクションしてくれたり、買ってくれたり。そういう起点づくりを行っています。

― 販売チャネルに関連してですが、代理店でレコメンドウィジェットを運用する発想はあると思いますか?

まさに今、それをお願いしているところです。代理店様がYahoo!コンテンツディスカバリーを取り扱っていただくケースは多いのですが、彼らはもともと運用が得意なので、意識してくださるところはあります。

― スポンサードサーチのように、オンライン経由での提供も考えていますか?

ロードマップの中長期的なところのスコープには入っています。

― 媒体社がYahoo!コンテンツディスカバリーを導入するのはどのくらいの時間がかかるのでしょうか?

ケースバイケースですが、大体ご契約後1カ月程度でしょうか。

― 動画対応は考えていますか?

はい。Taboola社が動画の会社を買収し、彼ら自身もこれから動画領域へ動くので、当然それをローカライズして我々の方でも利用したいという意向はあります。

全体のUIなどを考慮の上、フォーマットに工夫を重ねながら慎重に対応を進めていく必要があります。

― 業界全体について教えてください。レコメンドウィジェットの市況感はどうですか?

2016年の春から夏にかけて大変な勢いで市場が伸びたと感じました。我々もですが、業界的にもとても伸びていますね。コンテンツマーケティング軸で活用されているのは月10億円くらいの規模になっていると感じます。

出稿の熱がすごく上がっているので、需要は高まっている一方で、供給不足になっている面もあります。各事業者は、いかに在庫を獲得するかがポイントになっています。

― 今後サービスをどのようにしていきたいですか

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昨年キュレーションメディアに関する報道もありましたが、Webコンテンツの品質の担保は課題だと考えられています。Yahoo! JAPANでは、コンテンツの品質を担保するため、厳しい審査基準を設けるなど徹底して取り組んでおり、その方向性はぶれずにやっていきたい。この方法でシェアを伸ばしてきており、それがYahoo!コンテンツディスカバリーの強みだと思っています。

もう一つはコンテンツマーケティングの軸で、スポンサードコンテンツを作るだけでなく、コンテンツの制作や発信も行っています。その際にも、ユーザーの心を動かすコンテンツを出していくことを心がけています。

コンテンツで出来るつかみは色々あります。実際にやったのが、ヤフーの社会貢献事業とYahoo!ニュースとYahoo!コンテンツディスカバリーの三者の連携。Yahoo!ニュースのスポンサードコンテンツでNPOの記事を作成・公開し、地震で被害にあった熊本の子供達の現状を伝えて、寄付を募りました。その記事をYahoo!コンテンツディスカバリーを使って、関心が高いと思われる方に届けて露出を広げたところ、取り組み全体で15,000人以上の方が寄付をしてくれました。

これって、動きとして新しいと思うのです。世の中に現状を知ってもらい、寄付という行動に転化させる。こういうこともコンテンツだとできる。これは、Yahoo! JAPANならではの取り組みであると思います。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。