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2017年の業界予想(前編):広告主はいかにデジタルマーケティングを活用すべきか?

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

2016年はデジタル広告市場のエコシステムがダイナミックに変化した年だった。濃淡はあったものの、記憶すべき一年というべきだろう。今回は2017年を予想する恒例のコラムとして、ExchangeWireは業界のリーダー100名以上の意見を募り、彼らの業界予測を収集した。このシリーズの第二弾として、業界のエクスパートが変化の慌ただしい環境の中で、広告業界の将来に関する意見を寄せてくれた。

広告主は価値を証明する動きを果たしていく

Heather Dansie氏

「 2017年においては、今までにないくらいに流動性について、広告主からの注目が集まっていくでしょう。個人に関するデータが今まで以上に収集可能になる一方で、人間の行動は広義で予想できないものです。よって、広告主の戦略は柔軟で流動的であるべきです。仕事、生活、日々のルーティンなどは変化していくものです。65歳以上やミレニアムの生活習慣といった偏見は既に正しくありません。それに加えて、政治的かつ社会的な変化によって、消費者は翌月、更には翌週のことに関してさえ不確かに感じています。今までの信念にこだわるのではなく、2017年には広告戦略はより価値の創出及びポジティブな体験の提供に注力すべきです。オーディエンスのターゲティングは、従来の「(テレビシリーズで放映されるような典型的な)子供像」のような固定的な消費者像ではなく、プログラマティックによるコンテクストテクノロジーをより活用した形になっていくでしょう。消費者と「感情」をより密接に結びつけたソリューションに着目すべきです」

Starcom社、シニアリサーチディラクター、Heather Dansie氏

ブランドが消費者の立場になってより活動

Paul Neto氏

「2017年には、消費者が動画広告をどのように鑑賞し反応したかなどの高度なインサイトの利用が可能になり、企業はより「消費者の立場にたって」活動するようになるでしょう。行動情報や、コンテキスト、心理的な要素をパブリッシャー、企業、エージェンシーが活用することで、視聴傾向に関する「いつ、どこ、どのように」といった情報を、より理解することが可能になります。そして、マーケッターは広告が消費者にどのように捉えられているかのインサイトを把握し、次回のキャンペーンにおいて消費者が望むタイミングでメッセージを配信することが可能になります。消費者第一のアプローチをとり、より
優れたターゲティング機能を活用することで、広告主は自社のROIを高める以上の結果を得ることができます。消費者は自分に適切でない広告に辟易としており、広告ブロッカーの導入に繋がっています。消費者の声を聞き、適切な広告のみを配信することができれば、広告主はアドブロッカーの導入を検討せず、結果として業界全体に利益をもたらすことができるでしょう。」

YuMe社、リサーチ部門シニアディレクター、Paul Neto氏

マーケッターが戦略的なクリエイティブの制作に再び注力

Lidia luttin氏

「管理者的なマーケッターはもう必要とされなくなるでしょう。2017年はマーケッターの役割に、遂に変化が必要となる年となるでしょう。テクノロジーの進化によって、管理者的な機能は自動化され、より多くの時間をクリエイティブや戦略に使うことができます。マーケッターはマネージメントとクリエイティブの狭間に立たされる必要がなくなり、両方の役割を自身でこなすようになります。このような変化によって、マーケッターは、より営業プロセスや他部門との協業が求められ、決定プロセスにおける役割は強まります。マーケティングの現状の課題はモーメントを掴むことです。企業がリアルタイムに起きている出来事やトレンドに対応して、より適切でエンゲージメントが期待できるようなコンテンツを、消費者の感情が高ぶっているタイミングで配信することが必要です。
一方で、完全なブランドガイドラインを遂行したり、グローバルに一貫したコミュニケーションを行うことは、特に異なる地域でチームを管理する場合においては困難です。しかしながら、2017年には企業は、仮にコミュニケーション戦略が円滑にまわるようになると、このような環境においても順応する必要がでてくるでしょう」。

Bynder社、CMO、Lidia Lüttin氏

全てのチャネルにおける統合が進む

Mark Wrighton氏

「パフォーマンスマーケティングの観点においては、2017年はより顧客や売上を増やすためのアフィリエイト戦略を重視する企業が増えるでしょう。SEOからPR、ディスプレイ広告に至るまでカスタマージャーニーにおける全てのタッチポイントにおける統合が内側で進むでしょう。計測の観点で言うと、単一のソースにて、マーケッターが全ての行動をトラッキングできるようなツールへの需要が増加していくことでしょう。複数のプラットフォームを活用した際のデータ差異に関する問題を避けるために、パフォーマンスパートナーからデータを統合し、単一のプラットフォームで適切な計測を行いたいという需要が高まっています。また、市場においてアフィリエイトから遠ざかり、パフォーマンスパートナーとの協業に移行していく流れが起こるでしょう。このことによって、データ取引のメトリクスが、CPAからCPCに変化していきます。マーケッターやパフォーマンスパートナーはこの変化に備えておくべきでしょう」。

Impact Radius社、EMEA地域バイスプレシデント、Mark Wrghton

企業が予算の割り当てを見直す時期

Paul Dyson氏

「この5年から10年の間で、グローバルブランドにおいて、それぞれの国で多くのサブブランドを展開するような形態が増えてきています。この変化によって、消費者にリーチする形態も多様化するようになりましたが、マーケッターの業務形態も複雑化していきました。2017年は、メディア予算を最適化するためのグローバルポートフォリオマネージメント(GPM)という考え方がより広がっていくと考えています。計量経済学やベンチマークに基づき、GPMは国、ブランド、製品、メディアチャネル、時間、リターンなどに基づき、予算の割り当てについて最適化を行うことができます。実際、GPMの効果は計り知れません。いくつかのケースでは、クロスマーケティングの投資最適化によって、ROIが2倍となり、数百億の利益増大の機会につながったケースもあります。GPMはグローバルブランドにとって、ローカル市場の問題点を見つけ出し、ローカルクライアントチームにグローバルな視点を与えるための、非常に優れたツールです。経済の不確かな中で、マーケッターは行動を起こす必要があり、成功した場合には大きなリターンが得られるでしょう。」

Data2Decisions社、創業者、Paul Dyson

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。