中小企業はいかにプログラマティック広告を利用できるのか?
(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)
世界銀行の統計によると、中小企業は、世界中の企業の約90%、雇用の50%以上を占めている。経済成長の根幹は、新興市場の中小企業から成り立っており、この点はマーケティング予算とも密接に関連している。(下図参照)。 ReklamStoreのCFO Hulya Altunbas氏は、インターネットは中小企業が広告を活用する機会を提供し、効果的なマーケティングによって成長する機会を与えていると述べている。彼女は伝統的な広告と比較して測定可能かつ低コストであるオンライン広告の効率性は、中小企業が売上を増加させるために必要不可欠であると、ExchangeWireに説明してくれた。
近年、プログラマティック広告によって、広告主に既存及び新規の顧客獲得のための新たな方法が提供されています。eMarketerの調査によると、2016年に、広告主は250億ドル、または全体のディスプレイ広告の73%をプログラマティック広告に利用しています。全広告におけるプログラマティックの割合は2018年には82%まで高まることが予想されています。モバイル広告におけるプログラマティック支出は、今年デスクトップの2倍となっており、70%のディスプレイ広告費用はモバイルによるものとなっています。
これらの数値からプログラマティック広告が、デジタル広告バイイングの主要な方法になっていることが明確ですが、これらの全ての予算が大企業によるものではありません。全ての広告主は、広告の努力によって最大限の成果を出そうと試みていますが、この傾向は予算が限られ、高いROIを必要とする中小企業にとっては顕著です。2013年のDeloitteの調査によると、中小企業の費用対効果は、大企業と比較して8倍もの効果を誇るという結果がでています。中小企業はSMEの効果によって、ローカルでもグローバルにおいても成長の機会は広がるのです。
中小企業によって様々なオンライン広告の選択肢があります。オーガニックサーチ、ペイドサーチ、プレミアムディスプレイ広告などによって中小企業のビジネスが成長する可能性がありますが、問題も顕在します。SEOはより競争相手が多くなっていますし、ペイドサーチにおけるCPCは値段が高くなっています。プレミアムインベントリーは、より大企業やメディアエージェンシーが占めるようになってきています。プログラマティックによるインベントリーの購入は、詳細なターゲティングを可能にする一方、中小企業が大きな費用を一度に払う必要はありません。その代わりに、広告主は特定のオーディエンスをターゲットとし、関連性の低いオーディエンスからの閲覧を避けることができます。これによってエンゲージメントを増やす一方でコストは抑制可能です。
プログラマティックは高額で、技術的に難解で、大企業にとってのみ活用が可能なソリューションと認識されがちですが、中小企業向け、またはロングデール市場とも言うべき市場に向けて、簡易化されたソリューションが、いくつかのテクノロジーベンダーにより開発されています。これらのソリューションによって中小企業は、企画からバイイング、ターゲティングまでリアルタイムで実行することができます。
中小企業にとって、プログラマティック広告における異なる手法を理解し、最も自社のビジネスモデルに合うものを知ることは重要です。プライベートマーケットプレースや、ダイレクトプログラマティックなどの手法は、費用がかかりまた方法も複雑です。一方でオープンなRTBを介したオープンエクスチェンジであれば、制限をほとんど受けずに利用が可能です。自社運用型のプラットフォームであれば、中小企業の広告主はDSP内の全ての利用可能なインベントリーから、予め決められたオーディエンスのデータにアクセスすることが可能です。詳細なターゲティングは行いたいものの、自社データを有していないような中小企業にとっての障壁は少なくて済みます。しかしながら、中小企業が大きなデータを扱うことは可能とはいえ、自社で持つファーストパーティやサードパーティのデータを運用型のDSPと統合して、データ管理プラットフォームを管理するようなことは難解です。
自社運用型DSPであれば、利用も簡単で、経験がなくても、多くの設定に基づいた予算管理などを含んだキャンペーン管理を容易に行うことができます。データターゲティングに関しても豊富な機能を備えており、ネイティブ広告フォーマットなどから、地理、関心、デスクトップでのコンテキスト、ディスプレイ、動画、モバイル、タブレットなどをベースとしたターゲティングが可能です。価格も制限要素にはならないでしょう。DSPは通常CPMに基づいたキャンペーンを行いますが、CPCによる価格体系も利用可能です。CPMは中小企業には高額と捉えられがちですが、コンバージョンに基づいた料金体系があることで、小規模の広告主であっても、必要な計測値やKPIに基づいてパフォーマンスを重視した形での施策実行が可能です。
中小企業や小規模のエージェンシー間での、プログラマティック広告の採用率は、大企業やメディアエージャンシート比較すると小規模に止まっていますが、その必要はありません。プログラマティックは大企業のみが利用出来るラグジュアリーなテクノロジーではありません。プログラマティックを支えているテクノロジーは、小規模の予算のみが利用可能でありますし、予算におけるリターンを重視するような企業にとっても非常に価値のあるものです。私たちのトルコをベースとした自社運用型DSPサービスであるReklamSelifeは、中小企業が即材に利用可能なドメインとオーディエンスのセグメントを準備しています。トレーニングや教育もまた、キャンペーンのパフォーマンスを改善する上で非常に重要な要素で、自社運用のプラットフォームを持つ企業は小規模クライアントに対してもこれらを提供すべきだと思います。中小企業は新たな方法に対しての学習意欲が大きく、成長のためのチャンスに対して貪欲です。中小企業は、決定プロセスがはやく柔軟を有しているため、プログラマティックについての理解が深まるにつれて、マーケティング戦略の核として活用できるようになると考えています。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。