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フィンランドのプログラマティックパブリッシャーの現状

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

今年初頭の統計データによると、プログラマティック広告はフィンランドで大きな成長を示している。フィンランド広告協会によると、2015年12月の販売データにおいて、75%の広告主はプログラマティック広告の取り扱いを行っている。これは、最近プログラマティックの取引をより円滑に行うため、アライアンスを組み始めたフィンランドのプブリッシャーにとっては良いニュースのように感じられる。フィンランドでは、Sanoma Corporation、Alma Media Corporation、Otavamedia、Aller Media Oy、A-lehdet Oy、MTV Oy、 KSF Media、Kaleva365 Oy、Improve Media Oy、Keskisuomalainen Oyj などの企業がフィンランド・オートメイティッド・ギャランティード・マーケットプレース(Finnish Automated Guaranteed Marketplace)を立ち上げた。

ExhangeWireはAlma Media社で、フィンランドオートメイティッド・ギャランティードマーケットプレースのボードチェアマンを勤めるMerja Pyhälä氏、Improve Media Oy社のCEOであるIlkka O. Lavas氏、MTV.fi社のプランニングディレクターであるPasi Raassina氏に、フィンランドでのプログラマティック市場の現状、問題点、パブリッシャーアライアンスの他の市場における機会について話を聞いた。

― フィンラインド市場における過去1、2年間の主要なトレンドはどのようなものですか?

Ilkka Lavas氏(以降IL: デジタル広告は常時、フィンランドでは2桁の成長を誇っています。2016年前半のデジタル市場は前年比13.7%の成長です。

Merja Pyhälä氏(以降MP: デジタル広告に関する投資は増えています。そのうち半分程度がソーシャルやサーチの巨大なグローバル企業に対して支出されています。フィンランドの広告市場が特殊なのはプリントがまだ大きな影響力を占める点で、新聞の購買数や購読数は高いものがあります。

― フィンランドのパブリッシャーが統合される意味はどのような点にあるのでしょうか?

Pasi Raassina氏(以降PR: グローバルな巨大企業はメディアバイヤーに好意的なオファーを行っており、対抗する必要があるのです。

MP: 2、3年前に、私たちは他のパブリッシャーと一緒にオートメイティッド・ギャランティードについての議論を開始しました。その時以来、プロフェッショナルバイヤーたちにとって、なるべく容易な方法でデジタル広告のスペースを提供することを目指してきました。非常に早期に、私たちは協業することが必要であるという結論に行き着きました。共通のツールやマーケットプレースは全ての人々にとって簡易かつ効率的です。

IL: デジタル市場にはすでに多くのツールが存在します。私たちのサービスを利用する上で、多くの追加ツールが必要とする事態は避けたいと考えました。私たちは、この市場において単一のソリューションを選択することが道理に適っていると感じています。これによってバイヤーは一つの簡単なツールでオートメイティッド・ギャランティードされたデジタルキャンペーンのバイイングが可能になるのです。

― デジタル広告のバイヤーにとってのサービス利用のメリットはなんでしょうか?

MP: 中間業者なしに保証されたインベントリを簡単に透明性の高い形でバイイングできる点です。このプロセスにおいて、バイヤーは一つのツールで、バイイングしたい商品の在庫状況を確認でき、価格交渉ができ、ターゲットを選択し、クリエイティブを追加することができます。Adform AGを利用することでバイイングプロセスにおける大きな時間の節約につながります。

― このアライアンスの結果として収益面での改善ができると考えていますか?

MP: これは収益化というよりもプロセス改善の手段です。しかしながら、バイイング方法が容易になれば、販売もより簡単になると考えて良いのではないでしょうか。

PR: 個人的には、アライアンスによる収益改善は繋がっていません。全てはメディアバイイングを迅速に行うという点に依存しています。広告商品に変化はありません。

― このようなアライアンスを組む上で困難な点はどのようことでしょうか?

IL: メディア企業は広告枠の名前をつけるにしても様々な文化があります。私たちは、単一のマーケットプレースを編成する上で、名前から他のメディア特有の問題まで議論する必要があります。全てのインベントリはマーケットプレースにあるのに、名前が異なるため、パブリッシャー間でのバイイングが難しいといったような問題を避ける必要がありました。

MP: フィンランドでのアライアンスの組成は非常に容易でした。私たちは、良い関係にあり、同一の目的を達成したいと考えていました。私たちのアライアンス、または、「パブリッシャーグループ」と呼んでいますが、においては信頼と共通の関心によって成り立っています。私たちは、オートメイティッド・ギャランティードを一緒に成し遂げるために、共通の会社の立ち上げや、公式な同意書などを交わしてはいません。全ての企業がAdformと独自の同意を交わし、全ての企業が独自の商品を独自の価格で販売しています。私たちは、同一のマーケットプレースにおいて、バイヤーに対して共通のツールを通じてサービスを提供し、ツール改善のために共通の開発を行い、ニーズを発掘しようと努めています。このやり方は、ここではうまく作用していますが、他の市場でうまくいくかどうかは定かではありません。

IL: アライアンス内での議論は前向きなもので、同時にプログラマティックが進化し、保証されたインベントリをバイイングするための、より優れたソリューションが提供されるようになっています。

― 他の国でも同様のことが起きると考えていますか?同様のアライアンスを検討するパブリッシャーへのアドバイスはありますか?

PR: 恐らくフィンランドのような小さな国においては、ジョイントプロジェクトが、市場に変化を与える唯一の手段でしょう。パブリッシャーが他社と異なる自社の商品をスタートする際に、利用方法がメディアエージェンシーにとって難解であるという事態が考えられます。彼らは多くの新たなシステムを利用することを好みません。

MP: 私たちからのアドバイスとしては、共通の目的、関心を持つことの重要性です。そうしないと、このような非公式で信頼をベースとしたチームワークは機能しません。英国の場合は、もしかしたらエコシステムが出来上がっているのでより容易かもしれません。何かサポートが必要であれば私たちは喜んで疑問に回答します。

IL: 他の市場で同じような問題を抱えているバイヤー、売り手へのアドバイスとしては、Adform Automated Guaranteedのような新たなツールを使って、現状のバイイングプロセスをどのように改善していくのか、業界内でよく話をすることが重要だという点です。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。