サイバーエージェント台湾現地トップが語る、台湾のWebダイレクトマーケティング最新事情【後編】 -日本の運用実績を有効活用し台湾でNo.1に- [インタビュー]
インタビュー【前編】に引き続き、台湾市場の特徴や日本との違い、Webマーケティングの実態、業界全体の課題、サイバーエージェント台湾支店の活動やその強み、また今後の展望についてサイバーエージェント 台湾支店の小野雄輝氏にお話をうかがった。
(聞き手: ExchangeWire Japan 野下 智之)
成長市場の光と影-人間関係がものをいう
― 台湾事業における課題があればお聞かせください。
課題は人材確保と離職率についてです。台湾では転職率が高く、数年のサイクルで転職をしながらキャリアを高めていくというのが一般的な考え方として定着しています。一つの企業内で昇進をしていくという考え方はあまりないのです。ここで企業内のノウハウの流出も懸念されていますので、この流動的な人材動向を踏まえ、どのように優秀な人材を育てていくかは、事業の成功を収めるうえで大きなカギです。
台湾の人件費は日本よりも安く、初任給では日本の半分プラスα程度の水準です。台湾では物価水準が上昇しているにもかかわらず、初任給の水準が長年変わっていないことが、社会的な問題として取り上げられています。
一方で、雇用主からすると、大変優秀な人材を高くはない人件費で確保できることは大きな魅力です。当社台湾支店のスタッフは、私以外は皆現地の者ですが、全員日本語を話すことが出来ます。また、英語はもちろんのこと、ロシア語を話せるスタッフもいます。メンバー皆、非常に優秀です。
― 台湾のデジタル広告業界には、いまどのようなニーズがあるのでしょうか?話題になっていることがあればお聞かせください。
台湾では、日本と比べて足りていないものを埋めていこうというような、日本との比較を念頭にしたニーズの発生の仕方というものがあります。
その点では、台湾ではいわゆるEC向けの良質なアフィリエイトネットワークが存在していないことが挙げられます。
その理由の一つは、日本でアフィリエイトネットワークに参画し、ネットワーク内で大きなシェアを占めているサイトや有名ブログサイトなどのメディアの力がネットワークよりも勝っていることが挙げられます。彼らは純広告や他の収益手段で収入を得ることを選択しており、アフィリエイトネットワークのようなものに参画しません。
とはいえ、いわゆるロングテールのメディアやブログサイトなどを集めれば、有力なネットワークを構築し、良質なアフィリエイト広告を提供できる機会はあると思っています。
― 台湾にも貴社のような大手のデジタル広告代理店は多数あるのでしょうか?
はい、現地にもYahoo!、Facebookなど特定の媒体に強い広告代理店は複数あります。
ただし、台湾ではデジタルの広告代理店は、日系や欧米系の大手広告会社グループ傘下に入っているケースが多いです。
また、驚くべきことに台湾の業界紙では、どの広告主が年間幾らくらい広告を出稿していて、どの広告代理店と取引をしているというような情報が公開されているのです。
日本と比べるとそのような情報に対しておおらかなのでしょう。また、広告主と広告代理店との関係性がソリッドで、日本と比べると流動的ではないことにも起因しているのかもしれません。
日本の運用実績を有効活用し台湾でNo.1になることが目標
― 台湾支店のサービス体制、サービスの独自性についてお聞かせください。
台湾支店は立ち上げてまだ1年少しということもあり、現在のメンバーは営業と運用、クリエイティブ担当の機能に特化し、メディアの仕入れに関しては、日本のチームと連携をしてサポートを受けています。
当社の特徴は、とにかく広告運用に特化していること。取り扱う媒体は、Facebook、Google、Yahoo!、LINEなどの運用できる広告のみで、現段階では純広告は取り扱っていません。
Facebook、Google、LINEなどのプラットフォームは、日本も台湾も共通です。我々の最大の強みである運用力をそのまま生かすことが出来ると考えています。
― 現状のクライアントソースについてはいかがでしょうか。
日本から台湾に進出している企業で、現在台湾でECを開始した企業、そしてこれから台湾に進出をしていこうとしている企業が中心です。ゆくゆくは、現地の企業の支援も行っていきたいと考えています。
― 今後の展望についてお聞かせください
台湾には、まだ日本よりもサービスのIT化が遅れているものがあります。金融や人材サービスはその一つです。例えば我々がサービスのITという仕組みづくりのノウハウから輸出して、現地企業を支援していくというようなことも出来ると考えております。
数年内に台湾でインターネット広告の領域でNo.1になりたいと思っております。単に売り上げ規模のみを追求するのではなく当社の強みである運用力を大きな武器に、台湾で必要とされる企業として存在感を高めていきたいと思っております。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。