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デジタルメディアの透明性を再定義する

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

メディア及び広告業界のテクノロジーの急速な進歩によって、メディアからデータに至るまで全ての分野で、エージェンシー、メディア、テクノロジーパートナーから、より高い透明性が求められるようになっている。 Stack I/OのマネージングパートナーであるRyan Kangisser氏はExchangeWireに、これらの変化は、広告及びパフォーマンスの理解改善のソリューション投資を検討する全ての人にとっての良い機会となると語ってくれた。しかしながら、デジタルエコシステムにおけるブランドへもたらされる透明性については、未だにばらつきが残っているとのことである。

「透明性」というのはデジタルメディアにおいては、多面的なものであり、「標準的な」定義は現在のところ存在しません。定義については様々な解釈があり、ほとんどが(エージェンシー、テクノロジーベンダーなどの)実行者側の財務面にフォーカスしたものとなっています。しかしながら、リソースやプロセス面、及びエンドユーザーや広告主にとってどれだけの情報が共有されたのかといった点は余り言及されません。これではあまり効果がなく、多くのブランドが新たな時代になっても大きな変化が生まれていないと感じ始めています。

業界は、よりオープンで、情報開示がされ、企業とサプライヤーの間で財務、運用、契約における透明性が高く、首尾一貫した標準化を求めています。これによって、企業は彼らの目的や利益に応じて施策が、正しく管理され、最適に構成されているかを知ることができます。

それでは、透明性とはどのようなものなのかを探っていきたいと思います。

メディア

広告主は、テクノロジー、データ、リソース、マージンが組み合わさった「バンドルの」価格提示を受けることが非常に多いです。メディア予算とコミッションの組み合わせによる、より簡単で首尾一貫した提案方法により、真に機能するメディアがどのようなもので、どのメディアオーナーにどの程度の支払いがされているかなどの情報は隠されています。

更に、データ重視のインサイトや客観的なキャンペーンの最適化において、この考え方は広く浸透してしまっています。このメディア購入にかかるコスト構成の視認性を得ることなしでは、投資の効果性について議論することは不可能です。

メディアの透明化を実施するというのは、メディア購入に関する、メディア、テクノロジー、データ、リサーチ、リソースの全ての項目に関しての視認性を高めるということを意味します。さらに加えて、ソリューション実行パートナー、メディア、テクノロジー、データパートナーなど全ての要素についての合理性が求められます。

企画

Photo: Ryan Kangisser氏、Stack I/O社

Ryan Kangisser氏
Stack I/O社、Managing Partner

カオスマップを見ると、メディア、テクノロジーのエコシステムを構成するプレイヤーの多様性、及びそれぞれの機能やベネフィットについて理解することができます。規模、エージェンシーとの関係性の両面において、大多数の広告主と接触できる企業は少なく、結果として、殆どのエージェンシーは自社のオペレーションに商業的且つオペレーションの面で利益をもたらすパートナーと協業します。

前回のインタビューで、私たちは盲目的にテクノロジーを活用してしまうことの、イノベーションや競合アドバンテージにおけるリスクについて警告を提言しました。

透明性を備えて計画するということは、広告主に(B、C、D、E社ではなく)A社のソリューションを利用する合理的な説明が必要になります。このベンダーのパフォーマンスは昨今どのようなものであるか、(RFI/RFPなどの)どのようなプロセスが経られたのか、これらのベンダーとあなたのエージェンシーとの商業的な関係はどのようなものなのか、などの項目です。これらは、広告主が利用可能な選択肢の中から最前のものを選択するために尋ねるべき質問のいくつかの抜粋です。

リソースとプロセス

広告やマーケティングテクノロジーにおいては、広告主が「企画実行して、後は忘れる」ことで、全ての問題はそのうち解決されると考えている人もいるかも知れません。ただし、実際は多くのマニュアルプロセスが必要とされ、優れたリソースとプロセスを経由することでのみ真のROIを得ることができます。

プロセスをしっかりと理解し、誰が関与しているのか、どの様にデータとテクノロジーが利用されているのか、デジタルキャンペーンやその他の広告キャンペーンとどのように絡むのか、ブランドの安全性や、詐欺、ビューアビリティなどの問題にどのように取り組むのか、などについてインサイトを得ることは非常に重要です。これらの理解なしでは、何かしらの障壁によってパフォーマンスが最適化されないような場合の問題を特定することは出来ません。

リソースとプロセスの透明性というのは、戦略の策定から実行までのワークフローにおける完全な明確性を得ることです。これらの鍵となるのは、核となる能力(リソース、経験)の把握、どのような有料メディアを利用するのか、データとテクノロジーを如何に活用するのか、広告主のKPIを基にした成功の定義の把握などです。

レポート

分析、レポート、視覚化によるデータの活用によって、キャンペーンの効果や将来的な改善点の学びなどが実行できます。これらの収集によって、成功の鍵となった項目や、(詐欺やビューアビリティなどの)パフォーマンスの邪魔となった障害の存在についてより理解を深めることができます。このことは好意的に聞こえるかもしれませんが、実行パートナーは、(特に既得権が存在する場合には)テクノロジーや実行面における潜在的な過失を共有することを躊躇するかもしれません。

レポートにおける透明性は、全てのパフォーマンス測定において何も隠さず、完全な視認性を得られるということで、(時、日、週、月ごとの)時間軸での経過や(広告主にとっての)分析のために適切なデータへのアクセスがもたらされます。

予算抑制に関するプレッシャーが無くなることはなく、デジタル広告の効果に関しての問い合わせが継続することから、マーケティングリーダーはよりオープンでパートナーとのコラボレーションが得られるような新たな透明性の定義が必要になるでしょう。よって、これらのパートナーは嘘のない、サスタイナブルな価値を提供できることが求められます。

ステップの第一歩は、どのような企業がどのようにメディア及びテクノロジーパートナーのエコシステムを構成できるか、それらがどのように組織され、どの程度の情報公開が現在なされているか、についての厳格な見極めを行うことです。この作業が完了した後、標準化について議論され、実現に向かうことでしょう。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。