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AppNexusが人員削減を発表、IPO準備の一環か

(翻訳:シード・プランニング 長野 雅俊)

AppNexus社が10月14日付で150人の人員削減に踏み切ると発表した。全体の13%が削減の対象となり、現在1125人の人員が975人にまで縮小されることになる。

AppNexusのコーポレート・コミュニケーションズ部門バイスプレジデントを務めるJoshua Zeitz氏がExchangeWireの取材に応じた。同氏によると、今回の決定は、同社が取り組んでいる合理化に向けた動きを象徴するものとなる。

AppNexusは今からちょうど2年前に事業再編を実施。広告主と媒体主の技術開発グループ双方にサービスの提供を行うため、チームをバイサイドとセルサイドに分割した。この事業再編により、エンジニア、サービス担当者、プロダクト・マネージャー、開発担当者らで構成されるチームをそれぞれ一つずつ結成。当時のAppNexusは、この再編が妥当な措置であると考えており、また実際に同社のプラットフォームを利用する顧客の需要や業界全体の構造にも合致していた。ところが現在では状況はやや変化している。Yahoo! Japan、News Corp、Wayfairといった彼らの主要顧客はAppNexusのプラットフォームをバイサイドとセルサイドの両面から利用するようになったからだ。間もなくして、AppNexusは同じような業務を行う2つの異なるチームを運営することの意義を見出せなくなった。同一顧客に対して2種類の全体的な機能を持つチームを持つことで、顧客だけではなくプロダクト担当者やエンジニアにも混乱をもたらしてしまう。そこでZeitz氏は、この2つの事業を一つのより機能的なプラットフォームへと統合すべきと考えるようになったという。

この統合措置の対象となるチームの人員はそのまま半数に削減されるのか、また同社の今後の体制にどのような変化をもたらすかといったExchangeWireの質問に対して、Zeitz氏は以下のような見解を述べてくれた。

「チーム全体が半分の規模にまで削減されるということはありません。当社は今後も450名のエンジニアとその他の領域における専門家を雇用する予定です。また業務量についても同じ規模を保つことになるでしょう。しかしながら、2名のスタッフがまさしく同一作業を行っている部分については事業のあり方の見直しを余儀なくされます。必ずしもすべての職務に影響を与えるわけではありませんが、例えば融資部門のような共有サービスにおいては事実上、顧客が統合されることになるため、人員削減に踏み切らざるを得ません」。

また世界各地に展開するAppNexusの各チームの中でどの国がもっとも影響を受けるかというという点について、Zeitz氏は欧州やアジア太平洋地域よりも、米国のチームに影響を与えるであろうとの見通しを示した。既存のチームは必ずしも地域別に分割されているわけではないため、例えばフランスやドイツの顧客向けに米国を拠点とするチームが結成される可能性があるという。

ちなみにAppNexusはIPOに向けて着々と準備を進めていると伝えられている。このため、今回の措置を通じて、IPOを視野に入れた上での事業の合理化を図っているとの見方を示す者たちも多くいる。ただし、同社の財政状況について懸念を抱く必要はない。業界に通じた識者によると、同社はそのプラットフォームを通じて年間30億米ドル(24億ポンド)もの収益を上げているようだ。AppNexusは今回の措置がIPOに関連したものであるかどうかについて見解を示すことを拒否している。ただ業界内では、同社は抜本的な変革を実施できる状況にあり、また様々な懸案を現時点までにすべて整理し終えているため、株式市場の理解も得やすく、IPOが間近であるとの見方をますます強めている。

様々な憶測をよそに、Zeitz氏は、より総合的な取り組みを見せるAppNexusの新たな動きについて、彼らの市場形成に向けた取り組みであると述べている。

「我々の未来は、戦略的なパートナーとともに進める業務を通じて築かれていくことになります。今回の措置は我々の戦略において重要な意味を持ち、顧客にも適した措置であると信じています」。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。