リターゲティングへの嫌悪感の対応。データ重視のソリューションに移行しよう
(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)
リターテゲティングはデジタル広告の世界では、しばしば下品な言葉として認識されることが多い。消費者側からみると、一度商品を購入すると迷惑な広告が増えるようになり、業界側からみるとそういった活動がディスプレイ広告の価値を低下させていると感じる。リターゲティングは人気の面で問題を抱えている。Flashtalking社のUKのカントリーディレクターであるMartin Pavey氏によると、消費者をより上手にターゲットする方法はあるという。Pavey氏はExchangeWireにリターテゲティングは、消費者を理解しエンゲージメントを高めるために、データやクリエイティブでの工夫を凝らして発展していく必要があると述べてくれた。
リターゲティングは、明確なシグナルを元に動作しています。消費者が商品に関心を示した場合、リターゲティングの目的は、関心を購買にコンバージョンさせることで、ウィンドウショッパーを実際の購入者にすることです。消費者の直接的な意思を把握し、次のステップに促すことが必要です。
今日の、データが豊富なターゲティングにおいては、ユーザーの意思を把握するより優れた方法が可能です。多くの方法を通じて、私たちはユーザーの意思というのは、リターゲティング事業者が考えるよりも曖昧なものであることを理解しています。賢明なマーケターであれば、ユーザーの行動におけるサインというのは、その通りには受け取れない点は理解してもらえると思います。消費者がスポーツカーに関心がある場合であっても、それは、財政的な面を除いても、購入意思があるという意味ではありません。そういった意思に関するサインは、年齢や世帯収入、居場所などの情報と合わせて考慮されるべきものです。そうすると、消費者に対して実はタイヤや車修理の店舗情報、又は、あるブランドのサングラスやアパレルの広告を見せた方が効率的だったなどということが有りえます。
問題は、ほとんどのリターゲティングにおいて、消費者が元々探していたスポーツカーと同一の、あらかじめ用意された広告を配信している点です。私たちが現在利用可能な、消費者を理解するためのテクノロジーは、消費者の意思をどのように活用するか、メッセージをどのようにデザインし配信するか、といった内容には転換されていません。最後にみた商品を活用してリターゲティングを配信する様な簡潔な仕組みから、更に進化をする段階に私たちはいるのです。
最終閲覧商品からの進化
他の例を見てみましょう。消費者が壁画とカーペットについての情報をオンラインで閲覧しているとしましょう。一見すると、彼らは住居に関しての何かしらの作業を計画しているように考えられます。しかし、もし同じ消費者が1週間前に、ファミリーカーとベビーベットについての情報を探していたとしたらどうでしょうか?これらの情報から、この消費者の家庭には子供がもうすぐ生まれ、壁画よりも大きな買い物が必要となる点が推測できます。家庭向けの作業商品に関してのリマーケティングを実施しただけでは、大きな機会を損失することに成り得ます。現在の豊富なデータを考えると、やり方が時代遅れかつ容易すぎます。
リターゲティングを活用するための追加データ
リターゲティングを進化させるための鍵は、より多くのデータを活用し、より品質の高いクリエイティブを使うことです。どちらも今日の環境であれば容易で、実行可能です。広告サーバーは複数のデータに同時にアクセスでき、ファーストパーティのDMPデータ、コンテキストデータ、位置情報、天気、時間、シーケンス、A/Bテスト、サードパーティのデータフィードなどを組み合わせて活用できます。これらは現在の広告サーバーで利用可能で、サイト訪問時のユーザー行動に利用することで、より大きな機会の獲得につなげることが出来ます。こういった機会を獲得するためには、クリエイティブのカスタマイズにも踏み込む必要があります。
また、データを増やすだけでは十分ではありません。データからより詳細を引き出す必要があります。リターゲティングによるコンバージョンを実証するための唯一の方法は、インプレッション毎のレポートを行うことです。正確にアトリビュージョンを利用できていないモデルにおいては、リターゲティングにおいて証明できるのは、クッキーの獲得率だけになってしまいます。
このようなモデルを活用できれば、消費者の曖昧な意思を理解し、全く新しいアプローチによるクリエイティブに基づいたより適切なメッセージの配信が可能になります。消費者の購入サイクルにおける現状を理解することは、より正確なパーソナリゼーションと関連しています。先に述べた赤ちゃんが生まれる家庭の例では、このクリエイティブのパーソナリゼーションは、生命保険の広告を配信するか、Googleで検索した明るい青色の壁画の広告を配信するかくらいの違いとなります。消費者の需要の一歩先をいく違いを生み出せるのです。
真のKPI: 消費者理解
最後に閲覧した商品を重視して、リターゲティングが行われる背景には、現在の評価計測方法が、欠点を隠すことに繋がっている点が挙げられます。(例えばポストビューコンバージョンのように)すべてのクッキーを獲得すると、あなたのウェブサイトを訪問した人が、そうでない人よりも多くの商品を購入していることがわかるかもしれません。しかしながら、ウィンドウショッピングをしている人が、していない人よりも多くの商品を購入している。こんな当たり前のことにデータは必要ありません。
しかしながら、こういったKPIを活用することで、消費者の本当の関心を知る機会を逃しているかもしれません。質の低いリターゲティングにおいて、消費者が既に欲しくなかったり、既に所有していたり、最初から欲しくないものを配信してしまう場合があります。中期的な成功を目指すのであれば、現在のアプローチに変化を与えて、最後に閲覧した商品への配信ではなく、より消費者との関係を重視した大胆なアプローチが必要です。知的なデータ活用に基づき、消費者のエンゲージメントを引き出す高品質なクリエイティブによるユーザー体験が求められています。
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ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。