データドリブンなクリエイティブ:成功のための検討ポイントについて
(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)
データドリブンなクリエイティブにより、マーケターは多くの機会に恵まれることになるが、実現には多くの困難を伴う。ExchangeWireは、Affectv社のチーフストラテジーオフィサーであるRay Jenkin氏にインタビューを実施し、マーケターが対応すべき問題点及び、いかにしてクリエイティブを用いたキャンペーンを更に次のレベルに引き上げることが出来るかについて話を聞いた。
プログラマティックによる購買、オーディエンスターゲティング、ダイナミッククリエイティブの3つを上手く活用できるマーケターにとっては、現在は非常に面白い時代ではないでしょうか。私たちは、拡張性に富んだ、データドリブンなクリエイティブキャンペーンが2016年には非常にチャンスがあると考えており、それらを活用できるマーケターは競争を勝ち抜くことができるでしょう。
2016年初頭、英国でマーケター向けのコンファレンスに初めて参加しましたが、プログラマティッククリエイティブについて熱い議論が行われていました。新たなプログラマティックの世界における、クリエイティブの先駆けになるためのチャンスと問題点について多く議論されていました。
コンファレンスを通じて明確になったのは、データドリブンなクリエイティブによるキャンペーンを成功に導くためには、効果的なプランニングと、根気強くビジネスの目的とクリエイティブ上のイノベーションを結びつけていく努力が、消費者に価値を届け、ブランドの価値を高めるために非常に重要だという点です。
もし、あなたがデータドリブンなクリエイティブに今後取り組むとした場合に、細かな技術的に複雑な物事によって目的を失わず、効果的に企画実行するために、いくつか検討すべき点があります。ここで基礎的な準備をすることで、マーケターの方々にとって後々の作業が楽になるかもしれません。
インサイトを利用してデータドリブンなクリエイティブに取り組む
私は、マーケター及びエージェンシーが、コミュニケーション面の問題点やビジネスの目的を考えることなく、新たな「ガジェットやウィジェット」を利用したアイディアにすぐに飛びついてしまう、といった話を良く耳にします。自社の消費者のインサイトを考えることから始めることが、データドリブンなクリエイティブに取り組む第一歩です。消費者が競合の中から、あなたの会社の製品にもっとも高いレビューを与えたり、それがより高い平均購買価格につながったりといった事柄から学べるインサイトによって、データドリブンなクリエイティブは効果を挙げることができます。
ファースト及びサードパーティデータや消費者パネルデータを活用したサイト分析や、キャンペーンパフォーマンスデータ、データ管理プラットフォーム(DMP)などのデータソースを使って、データドリブンなクリエイティブ戦略を確立することができます。最後に、キーとなるサイトやコンテンツ戦略、ツールを見直してみると、ダイナミッククリエイティブを活用することで効果が得られる場合が多くあります。
オムニデバイスの世界に向けた準備
あなたのデータドリブンなクリエイティブ戦略は、デバイスをまたいでも効果的に機能しますか?あなたがデスクトップで伝えようとしていることは、他のデバイスやコンテキストにおいても同様に作用しますか?また、あなたのダイナミッククリエイティブ、及びあなたのサイトにおける消費者のエンゲージメントは、すべてのデバイスにおいて同様でしょうか?こういった質問を企画の初期段階で実施することは、チャネル間における齟齬を無くす役割を果たします。逆にこの段階で効果的に企画できないと、パーソナライゼーションが「酷い」状態になる可能性を含みます。
より具体的な話をすると、多くのブラウザーはフラッシュの利用が多く行われましたが、モバイルでは上手く作用しません。御社のテクノロジーサポート企業にHTML5をきちんと活用させること、またHTML5をクリエイティブに利用し、データとのリンクを用意することの利点及び制限を正しく理解することが重要です。
継続的にメッセージを配信する
あなたのデータドリブンなクリエイティブは、ビジネス目的やマーケティング戦略と合致していますか?クリエイティブが会社のコミュニケーションの目的と合致しないようであれば、例えクールなウェジェットやモジュールであっても活用を見送るべきです。
1、2年前に、天気情報とメッセージングを組み合わせるアイディアが非常に流行した時期があり、マーケターは天気情報を、車からおむつまで全てのことを結びつけようとしました。あなたのデータドリブンなクリエイティブやコピーは、このような例とは異なり、キーとなるマーケティングメッセージを届けるために利用されるべきです。
加えて、仮にあなたがデータドリブンなクリエイティブ利用において、複数のベンダーと作業を行う場合には、メッセージが飽和したり、効果を生む代わりに迷惑な感情を冗長しないように、消費者体験を俯瞰して確認できるような体制が必要です。
データドリブンなクリエイティブの「コスト」を理解する
テクノロジー、データアクセス、メディアに関して発生する費用以外に、セットアップ時間、検証、リソース、承認、及びクリエイティブ作成の繰り返しなどで発生するコストを認識していますか?これはプロセスにおいて最も見過ごされている点かもしれません。ベンダーや内部の関係者に対して、データドリブンなクリエイティブを実施するために、質問や議論を早期から実施し、プロセスにおける難解な事柄について理解を深めることが必要です。自動でプログラマティックであるからといって、必ずしも容易で、素早く、拡張性があるとは限らないのです。
プロセスをより潤滑なものにするために、必要な時間、マイルストーン、役割、責任などについて理解をしてください。このようなベンダー側の追加「コスト」を正しく評価することは、データドリブンなクリエイティブを実施する上での成功の分かれ目となります。
テストをシンプルで拡張性のあるものに
ダイナミッククリエイティブに関して、どのようなことをテストしたいと考えますか?テストに関して、何か具体的なツールなどを検討しましたか?この計画が遅れると問題が大きくなります。そのため、早期の計画が重要です。簡易に開始をする一方で、テスト方法を強力にするための工夫が必要です。テストを実施する際に、KPIにあわせて多くの可変値を使いすぎないことです。クリエイティブのレポートにおいてすべての詳細を少しずつ獲得するのは簡単なことです。しかしながら詳細を追いかけすぎると、統計上の重要な点が曖昧になり、テストから得られる内容を解読することが難解になります。また、強力な結果を得るためには多くの時間を要する点に注意してください。もしダイナミッククリエイティブにおいて外部ベンダーを活用するようであれば、テストに関しての知見があり、それらがテクノロジーとしてサポートされている点を確認してください。
レポート、学習、反復
関係者に重要な目的は何かを伝え、すべての関係部門がKPI、テスト評価及びテストにおける要求事項について同様の理解をしていることが必要です。多くのデータドリブンなクリエイティブキャンペーンがこの点で失敗します。事前に準備した事柄が、計測や学習という点でデータに現れてこないのです。
これらのデータドリブンなコンポーネントを利用することで、デジタルクリエイティブのトラフィック、レポート、最適化において、既存のプロセスにどのような変化が必要か理解してください。すべての関係者がこれらの利点、問題点、要求事項について正しい理解をすることが重要で、そのためには、どのような人物を巻き込む必要があるのかを特定してください。キャンペーン中及び事後において時間を割り当て、現状の戦略のレビュー及び長期的な購買実施のための学習内容を共有してください。
最後に、あなたの上長があなたのしていることを正しく理解するように心がけてください。データドリブンなプログラムベースのマーケティングは、すべてのマーケティング機能や学習に染みわたります。データドリブンなクリエイティブを促進することで得られる結果や経験によって、このアプローチはより広がりをみせていくでしょう。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。