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King: 4億人ユーザーによる収益化を狙った新たな動画広告フォーマットをテスト中

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

Kingは今年後半に、メディアビジネスをスタートし、世界中で4.63億人もの巨大な月間アクティブユーザーを活用した収益モデルを立ち上げると噂されている。

ゲーム業界の巨人であるKingは既に新たなビジネスに向けて、核となる多くの人材の採用を行っている。その中にはGoogleから引き抜いた、King UKのマネージングディレクターに就任するLucia Mastromauro氏も含まれる。

既存の形態での広告はアプリ購入に悪い影響を与える事が明らかになっており、Kingはそれ以外の方法を採る必要がある。ゲームを遊ぶかのような体験が成功の鍵であることはキャンディークラッシュなどの大成功から明らかであり、Kingにとっては、ユーザーによるゲーム継続の為の課金や、新たなレベルにアクセスすることを止めてしまうような事態は一番避けたいことである。

その代わりに、必要とされるのは極めて細やかなアプローチであり、シームレスにゲームをプレイするような体験に導くことである。加えて、モバイルは全く異なる媒体であり、アドテク業界全体も理解を得ようとしている途中である。デスクトップの広告モデルをスペースに限りのあるモバイルに置き換えることは、特にゲームアプリにおいては、広告ブロックにつながる片道チケットである。

立派なことに、Kingはメディアビジネスに進出するにあたり、時間をかけて方法を探った。彼らはアプリ購入により、更に大きな収益をあげられることを理解してから、2013年にバナー広告を中止した。そして、Kingはユーザーがより寛容な態度を示すと考えられる新たなモデルを持って市場に戻ってきたようである。

それでは、彼らのモデルについて見ていきたい。公式なアナウンスはまだ行われていないが、King社は現在のゲームに新たな「リワード型動画」のフォーマットをテストしている様である。ExchangeWireのメンバーの一人が、Kingのゲーム「Alpha Betty」でのテストに立ち会った。そして、テストを通じて分かったのは、King社はユーザーが15秒のタテ型動画を閲覧することで、ゲーム内で命を一つ得る事ができるという仕組みである。

それではどのように「報酬型動画」はKing社のアプリで動作するのであろうか?

1. ユーザーがゲーム中で死亡すると、広告を閲覧するオプションが表示される

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2. ユーザーが広告を閲覧する選択をするとタテ型動画が表示される。この場合はCheeriosの広告である。

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3. 広告の終わりに、ユーザーは新たな命がリワード(報酬)として提供される

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King社のメディアビジネスは、ローンチから6ヶ月で1億ポンドにも至る見込みである。

広告はKingにとり大きな収益源と成り得る。典型的なビューアブルな動画広告のCPMは20〜50ポンドにもなる。Kingは、全てのモバイルゲームアプリを合わせて1億5千万ものデイリーアクティブユーザーを誇る。仮に保守的に見積もって20%のユーザーが毎日ゲーム内の報酬広告を利用すると考えると、Kingは1億ポンドの収益を得る事になる。

もう一つの大きな利点は、Kingが現在管理するユーザーのデータを有し、マーケターが標準として求めているビューアビリティの高さである。

今後、ビジネスがプログラマティック動画に流れるとすると、Kingは成長が見込まれる市場のパイの一部を得られる大きな可能性を有している。Kingの「リワード型動画」のフォーマットに対してのコアなゲーム利用の反応についてはもう少し様子を見る必要があるが、このアプローチはモバイルゲームユーザーの体験に自然に受け入れられるように思える。もしこのアプローチが成功した場合は、より多くのビジネスがモバイルに流れることになるだろう。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。