インタラクティブ動画広告:オプトと スキルアップ・ビデオテクノロジーズが提案する、動画広告の新機軸 [インタビュー]
オプトとスキルアップ・ビデオテクノロジーズが今、大手広告主に対して提案を進めている インタラクティブ動画広告。インタラクティブ動画広告とは米国発のVPAID「Digital Video Player-Ad Interface Definition(動画プレイヤーと動画広告の間の相互通信に関する仕様)」を用いて、動画広告と動画プレーヤー(再生システム)がインタラクティブな通信を行える点が特徴とされている。「インタラクティブ」と言っても、一般的な動画広告との違いやメリットはどのような点にあるのか。インタラクティブ動画広告の市場における位置付けや役割についても含めて、株式会社オプト オンラインビデオアドソリューション部 チームマネージャー澤渡 隆寛氏と、スキルアップ・ビデオテクノロジーズ株式会社 動画広告事業部 広告プラットフォーム部部長の近藤 慎一郎氏にお話しいただいた。
(聞き手: ExchangeWire Japan 野下 智之)
よりリッチな動画を新しいフォーマットで
―まず、お二人の自己紹介をお願いします。
近藤氏:2008年から2013年頃まで、スキルアップ・ビデオテクノロジーズ(以降スキルアップ)で動画配信プラットフォームの開発責任者をしておりました。現在では、弊社のプラットフォームはテレビ局やコンテンツホルダ―、教育系の企業様など国内で300社ほどの導入実績がありますが、この経験を活かして動画広告の事業を立ち上げ、動画広告に特化したアドネットワーク事業、アドサーバーソリューション事業、SSP事業などを行っております。
澤渡氏:オプトには動画広告を扱う部署が大きく2つあります。「プランニング」と「商品開発」なのですが、私は後者に所属して媒体サイドに近い立ち位置でビジネス開発を担当しています。
スキルアップさんとは2014年にM&Aによる資本業務提携をし、グループ会社としてシナジーを生んでいく体制になりました。その頃から近藤さんと一緒に仕事をしており、私は主に広告主の目線で開発に携わっています。
―いま広告主は動画広告にどのようなニーズがあるのでしょうか。
澤渡氏:ここ2~3年で動画広告市場は急速に拡大してきました。以前は動画広告というとYouTubeが中心でしたが、FacebookやTwitterなどでの動画活用も進み、活用先が広がったという印象です。こうした状況で、360°動画やVRなどの新しいフォーマットで出したい、というクライアントが増えています。そのような、動画広告に対する新しい需要のうちの一つとして、インタラクティブ動画、すなわちVPAIDが注目されている、ということであるのでしょう。
―VPAIDの特徴を教えて下さい。開発された理由や、どのような位置付けや目的で活用されるケースが増えているのでしょうか。
近藤氏:通常の動画広告のフォーマットは動画が再生されるだけですが、VPAIDだと動画プレイヤー内でユーザーにインタラクティブな体験を与えることが可能です。
VPAIDを活用すると、例えばモデルが出演しているCM動画で、そのモデルの洋服にタグがついていて、マウスオンすると洋服のスペック情報が出る、あるいは購買ボタンが付いており、そのままECサイトにリンクして、そこで購入できるというようなことが可能になります。そのような導線を貼ることにより、ユーザーが欲しい情報を動画内で取得することができ、購買率のUPにも繋がります。
また、店舗の在庫情報をそのまま出すといったことも可能です。通常の動画広告に比べてインパクトが大きく、かなり自由度も高い点が特徴です。
【VPAID動画のイメージ】
―VPAIDの活用にはいつ頃から取り組まれているのでしょうか。
近藤氏:弊社では2013年から、インストリーム広告を中心にVPAIDの開発、及び配信をおこなっておりました。直近では、アウトストリーム市場の拡大を見て、アウトストリームのADフォーマットへの対応を行いました。
―導入に当たっては、配信先の媒体は問わないのでしょうか。
近藤氏:従来のHTMLタグを貼るだけなので、技術的な障壁はほとんどありません。後は「どのエリアにどの枠を設置するか」という媒体側のポリシー次第です。
媒体社が気にされるのは、コンテンツではないところでの滞在時間が増える(=相対的にコンテンツの滞在時間が減るのではないか)という点です。そういった場合には、同一サイト内でミニサイトを展開する構成を提案したりしています。VPAIDからLPに飛ばすのではなく、サイトの中に居続けてもらう仕組みが可能になります。ただしユーザー体験として最適なVPAIDの在り方については、検証し続けていくことが大切です。
―インタラクティブ動画広告は、どのような広告主に提案をされていますか?業種など、提案先を選ぶものでしょうか?
澤渡氏:特に絞っていません。ミニサイトで自由度が高く、柔軟性があるので、ダイレクトレスポンス寄りの見せ方も、ブランディング向けも可能です。インタラクティブ動画は、既に動画広告を多くご出稿されていて、更に新しいことをやりたい企業様などには、とても評判が良いです。
KPIはブランドリフト
―KPIはどうやって設定するのでしょうか。
近藤氏:ブランドリフトの指標であることが多いです。興味関心を示すスコアも通常より上がる上、動画の視聴率は倍近く長く視聴される、というデータが出ています。
―実際の配信先媒体は、どのような媒体になりますか。
近藤氏:スキルアップ独自のアドネットワークを持っておりますので、一般のWebサイトや動画配信サイトなどです。数多くの媒体に、動画広告枠を作っていただいています。インフィードフォーマットにも配信していますし、その効果も出始めています。
―直近の導入事例があれば教えて下さい。
澤渡氏:例えば、富士フイルム様が年賀状の訴求をされました。マウスオンしてミニサイトが立ち上がり、この中で写真入りとか、キャラクターとか、それぞれの年賀状の訴求ができます。インタラクティブ動画は能動的に見てもらえるので、興味や好意度が通常よりも高いという結果がでました。また、あるキャンペーンでは、企業のランディングページへ遷移後の滞在率やページ閲覧数が通常の1.5~2倍という結果が出ました。能動的に動画広告に触れてもらうよい一例だと思います。
―この場合のKPIはどのように設定されていたのでしょうか。
澤渡氏:どちらかというと、視聴率をひとつの指標にされていたと思います。あとはユーザーのインタラクション、エンゲージメントです。
ストレス少なく、ユーザーも快適
―導入する場合の作業負荷はどの程度なのでしょうか。
澤渡氏:リッチなクリエイティブも簡単に作れるツールを備えていますので、そこまでハードルが高い訳ではありません。クリエイティブチェックに時間はかかりますが、中堅の広告主企業様でも充分実施いただけます。
―インタラクティブ動画を使う明確なメリットを、今一度ユーザー、広告主、媒体の立場からご説明いただけないでしょうか。
澤渡氏:ユーザーのメリットはストレスの少なさです。インタラクティブ広告は動画以外の情報も見られるので、動画見ながらミニサイト内でいろいろ視聴できてストレスが低いと思います。通常の広告は、強制的に広告だけを見せられてしまいますので。
広告主にとっては、こうした新しいフォーマットは興味喚起やエンゲージメント指標の向上につながるのでメリットがあります。
媒体にとっては、大手動画配信サイトが、サードパーティーによる入稿形式でのVPAIDを扱っていない、という点が大きいと思います。これにより「大手動画配信サイトで出来ないことができます」と言えますので、CPMも安定した水準になるのではないでしょうか。
―提案先の広告主のタイプにより、提案パターンはいくつか決まったものがあるのでしょうか。
澤渡氏:全てリンクにする場合と、動画ギャラリーとして使う場合、カタログとして使う場合などが今は多いです。クイズのような形にしてエンタテイメント性を持たせることも可能です。
SSPのエッセンスを活かし、より多くの媒体に
―今後、媒体との連携についてはどのように考えていますか。
近藤氏:他社は特定ジャンルへの特化型である場合が多いのですが、我々はSSPのエッセンスを加えてより広く多くの媒体に導入し、当てたいオーディエンスにオーディエンスデータを掛け合わせて配信していくという手法を採っています。
トラフィックが多い、あるいは様々なデモグラフィックのユーザーが集まるような媒体をリクルーティングしているイメージです。
配信先は現状、Web面が中心ですが、3月にモバイルアプリ用SDKもリリースしました。これにより今後アプリ事業者様にもご提供を進めていきます。
―媒体側の期待は感じられますか。
近藤氏:はい。「動画広告は高単価で収益性も高いため導入したい。」というお声をいただきます。特にスマホサイトの収益アップは各媒体様の課題ですので、弊社としても特にスマホに力を入れております。
―動画の在庫はどのくらいあるのでしょうか?
近藤氏:弊社アドネットワークではViewableなインプレッションで、およそ月間10億Viewの動画広告在庫を保有しております。ここ最近は、特にスマホサイトの在庫数が顕著に伸びております。
ニーズの多様化にスピード感を持って対応
―数ある動画広告フォーマットの中で、インタラクティブ動画はどのように進化していくと思われますか。
近藤氏:フォーマットによって広告の成果や効果はかなり異なってきますので、いちはやく動画広告に取り組んできたようなお客様にはかなり前向きにご検討いただいています。その中で、縦長動画やスマホ視聴、360°動画やライブ配信といった多様なニーズが出てきています。広告利用で動画を配信するニーズだけでなく、コンテンツとして動画を拡散するために弊社ソリューションをご利用いただくことも増えてきました。テクノロジーベンダーとしてはそういったニーズにスピード感をもって対応していきたいと思っています。
澤渡氏:インタラクティブ動画広告はもともとPCのみのインストリームが中心でしたが、スキルアップが今年アウトストリーム面にも対応したので、また一つ進化できたと思っています。
加えてHTML5に対応すればiOSでも見られるので、フォーマットの進化は大きいです。いろいろなフォーマットで出せると、広告主様もいろいろな見せ方ができます。モバイルの場合も見せ方はまた異なりますので、ユーザー体験も広告主様の目的もこれまでとは変わってくるでしょう。
モバイルでも、リッチな動画体験を
―VPAIDがモバイルに対応することで変わることは、どんなことなのでしょうか。
近藤氏:PCデバイスだけではなく、スマホデバイスにもインタラクティブでリッチな広告表現が可能になり、これまで以上にインパクトのある訴求が可能になります。まだまだ実績が少ないため、ブランドリフトへの影響などはこれから検証が必要になりますが、完視聴率は通常フォーマットと比較して向上する傾向があることが分かってきております。
―データフィード広告とVPAIDに関連性はあるのでしょうか。
近藤氏:実績はまだありませんが、ユーザーの趣味嗜好に合わせた広告だけをVPAIDで並べることができるので可能性はあると思います。
澤渡氏:本編の動画に合わせて、ミニサイトの動画は(データフィードに合わせて)いろいろと変えられるので、可能性は大いにあると思います。インタラクティブ動画を制作するクリエイターは国内にまだまだ少ないので、どんどん増やしていきたいと考えています。
―最後に、今後のお取り組みの方向性についてお聞かせください。
近藤氏:当社のアドネットワークの取引を増やして、動画広告の市場を広げていくのみならず、媒体への収益還元にも貢献したいと考えております。テクノロジーベンダーとして目指すのは、国内でもっともっと様々な媒体が動画広告を活用すること。どんどん盛り上げていきたいと考えております。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。