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マーケティングの4Pは過去のもの – 現在は4Iが重要だ

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

成功を収めているデジタルマーケティング戦略は、昔からある4Pマーケティングミックスに基づいて生まれているのだろうか?Drawbridge UK社のマネージングディレクターDominic Dunne氏はExchangeWireに、「マーケティング自身は変わっていないものの、マーケティング戦術やテクノロジーは変化をしており、多くのデータや分析を通じてマーケティングコンセプトが大きく進展を遂げている。」と語ってくれた。

マーケティングの基本は昔からいつも「4P’s」- Product (商品), Place (チャネル・場所), Price (価格), Promotion (プロモーション) から成り立っています。これらはずっとマーケティングの教科書において、過去半世紀に渡って中心を成してきた内容であり、ビジネスやマーケティング学生の頭に叩き込まれている内容です。

しかし、より多くの時間を複数のデバイスにてデジタル環境内で過ごすことが多くなった現在、マーケティング戦略においても4Pの役割が少しずつ減少していおり、代わりにクロスデバイス環境で機能する異なるコンセプトが生まれてきています。それは「4I」です。

Identity (アイデンティティ), Interoperability (相互接続生), Insights (インサイト), Incrementality (インクリメンタリティ) の4つがデジタルメディアにおける決定に重要な核となる新たなガイドラインです。

より細かく見ていきましょう。

Identity(アイデンティティ):消費者体験への鍵

FacebookやGoogle、Amazonのようなサービスによって、消費者にシームレスなクロスデバイス体験が提供されています。しかしながら、ブランド企業はそれ以外の環境では消費者データの取得が難しく、同様の体験を提供することができていません。適した環境にいる場合にはプラットフォームの利用は消費者のターゲティングには素晴らしいものにはなります。しかしながら、消費者がそこから出てしまうと、インターネット環境は全くパーソナライズがなされていない空間になってしまいます。

全てのインターネット環境においてシームレスでパーソナライズされた体験が提供されるとしたら、どんな変化が生まれるでしょうか?消費者体験がプラットフォームではなくブランド企業が管理するようになったらどうなるでしょう?

幸運なことに、ブランド企業がインターネット上の閉じられたプラットフォーム環境において、ユーザーがログインをしていない状態でも消費者を認知し、優れた消費者体験を提供する方法が、やっと世の中にでてくるようになりました。今日、企業はファーストデータやサードパーティデータを駆使して消費者体験をよりよいものに変えることができます。

Interoperability(相互接続生):アクセスを獲得

全てのマーケターが、検索、ソーシャル、分析、広告、モバイル、ビデオに至るまでをカバーした、マーケティングテクノロジーの様々な業種の多くのベンダーを一覧化した有名な LUMAscapeの業界マップについてはご存じでしょう。

Dominic Dunne氏、Drawbridge UK

ブランド企業にとりLUMAscapeに登場する多くのベンダーと協業し、理想的なオーディエンスを定義して、メッセージを配信したいと考えるのは自然です。しかし、これらのパートナーと協業し、シームレスなコラボレーションを行おうと考える場合、相互接続性が鍵になります。一連のマーケティング活動において、データへのアクセスが容易に許可されている必要があるのです。ブランド企業によるディスプレイ広告結果の学習機能がモバイル上で可能であり、検索からのコンバージョンが、ソーシャルからのコンバージョンと同じダッシュボード上で分析できるような環境が必要です。異なるテクノロジーやパートナーからのデータの流れが確認できない状態では、マーケターはエコシステムのベネフィットを活かしているとは言えません。それができない限り、データの分散によって解決すべき問題以上の問題を抱えることになるでしょう。

マーケターにとってのROIを高めるために、テクノロジーベンダーはブランド企業にプラットフォームを所有させるのではなく、消費者との関係性を築いたり、カスタマージャーニーを提供したりするためにデータをわかりやすい形で提供する必要があります。モバイルへのリーチやアトリビューションに関するデータは、デスクトップのデータから切り離されるべきではないですし、ビデオ視聴者はソーシャルと分離されるべきではありません。今日のマルチスクリーンの世の中において消費者を真に理解するためにはデータが自由に利用可能であることが重要です。

Incrementality(インクリメンタリティ): 成功を積み重ねる

ブランド企業のビジネスでの問題に対峙しながらより良い結果に導くことが、全てのテクノロジーベンダーが市場で目指すところです。ベンダーはこういった経験を通じて成長していきます。クライアントに真のパワーをもたらすソリューションを提供できた時ほど、ベンダーにとって幸せな瞬間はありません。

クロスデバイスの空間においては、消費者がブランドと接する全てのタッチポイントにおいて、デバイスに関わらず同様のメッセージが届くことが重要です。
一連のストーリーに沿って、メッセージが届けられるのが最も効果的です。それぞれのタッチポイントで、消費者を徐々に購入に少しずつ導けるような形です。例えば、あなたの最初のメッセージが、移動中のスマートフォンや、仕事中のデスクトップに向けられた、商品紹介や消費者を教育するようなものだとしましょう。次の接点は、同じ日に時間をおいか形で、タブレットに向けられた商品の利点を伝えるような形のものを配信します。そして、3つ目のメッセージは、数日後に、デスクトップに対して、消費者へ購入アクションを促すようなものになるでしょう。デバイス間での一連のストーリーの提供によって、消費者はあなたが企画した購入への導線に導かれていくのです。

Insights(インサイト):どのようにして効果を知るのか

レポートが記述的なものであるとするならば、インサイトは規範的なものです。
全てのデバイスにおける消費者体験の全体像を理解することが出来ると、あなたのキャンペーンにおけるアクションは明快になります。あなたが成功の計測ができない場合にマーケティングのポイントはどこにあるのかわからないでしょう。

営業レポートや、ビューやクリックのような標準的な広告評価指標以外にも、今日のテクノロジーによって、全体のカスタマージャーニーをデバイス間、更にはオフラインも含めて計測することが可能になっています。現在では、あなたの広告をインターネットTVで閲覧し、その後にタブレットでクリックして、デスクトップでウェブにアクセスし、お店に向かうような消費者の導線を把握することが可能です。新たなアトリビューションモデルによって、それぞれのデバイスを通じたコンバージョンを最大限に高めるために、配信されたタイミングに応じて、広告配信をインプレッションレベルでコントロールすることまで可能になっています。

全ての「I」を組み合わせて考える

デバイス情報をうまく活用することについては正解的に色々なドキュメントが存在します。そして、現在消費者の購入導線はオンライン・オフラインを含めた複数の環境を通じて確認することができます。デバイスの数が急増したことで、消費者特定が完全に分散化するようになっています。
マーケターにとり、現在誰にリーチしているのかの把握が困難になり、マーケティングミックスが如何にKPIに影響しているのかも不明確になっています。マーケティングの4Pは重要ではありますが、私たちは以前とは異なる世界にいます。もしブランド企業が4I のコンセプトを持ってマーケティング戦略を確立した場合、21世紀の消費者に対して施策が効果的に届く可能性は最大化されます。

数年前に、ワントゥワンマーケティングがマーケティングの世界で多く語られたのを覚えていますか?現在をバージョン2.0だと考えるべきです。マーケティングは変わっていないものの、マーケティング戦術やそれを支える技術が変化しているからです。4I の究極的な考えは、データや分析をより活用することで、企業が消費者を十分に分析および理解し、多くの商品を販売している街角の小売店のような気持ちを持って、より大きなスケールで取り組むことだと思います。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。