自動化:オムニチャネルにおけるティッピングポイントは?
(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)
オフラインとオンラインのメディアのサイロから抜け出し、真に自動化され、完全に統合されたメディアの世界に変化していく・・そのようなことは、可能であろうか?
Rubicon Projectのインターナショナル部門トップ Oli Whitten氏は実現可能だと確信しているようだ。
Whitten氏はExchangeWireに、私たちが考えているよりもメディア統合の将来が近いことについて、語ってくれた。
プログラマティックが、どのようにオンライン広告をより効率的に変化させ、広告主及びパブリッシャーにとっての成功に繋がっていったか、という点については多くの議論がされ、実際に大きな変化を遂げた。自動化によるメリットについて「トラディショナル」なデジタルデスクトップ環境以外にも目が向けられるようになり、広告業界はティッピングポイントに差し掛かったのではないかと感じている。真の自動化により、統合されたメディアのランドスケープが、異なる方法により、メディア横断的に明らかになりつつある、
「プログラマティック」とは、単純にはもちろん「自動化」という意味であり、プログラマティックバイイングは、RTBであれ、プライベートマーケットプレースであれ、ダイレクトであれ、自動化された方法でウェブ上の広告スペースをバイイングする作業を指している。
しかしながら、ここ数年ヘッドラインを騒がせているようなデスクトップ及びモバイルのプログラマティック広告というものは、テクノロジー、イノベーション、創造性などの統合によって引き起こされる広告の自動化という、より大きな影響力のある変化に対する一部でしかない。
既に、テレビやOOH、デジタル、ラジオなどは消費者のテクノロジーや広告テクノロジーの急成長、ビックデータなどのコンバージェンスによって、大きな変化を見せようとしている。
Skyを例にとってみよう。彼らの持つAdSmartテクノロジーにより、それぞれの家庭で蓄積されたデータポイントと加入データに応じて自動でターゲティングされた広告が配信されている。Channel 4は、昨今電通イージスネットワークと協業を始めた。電通はエージェンシーとして初めて、放送業者のビデオオンデマンドの広告枠を、自社及びチャネル独自のデータを活用して、プログラマティックによりバイイングを行っている。
また、より多くの屋外広告のオーナーが自動化テクノロジーに目を向けるようになってきている。殆どの屋外広告売買は未だにトラディショナル且つマニュアルの方法で行われているのが現状である。しかしながら、イノベーション溢れる企業によって変化を促進する動きが出てきている。
Bitposter社はOOH広告において、オートメイティッド・ギャランティードを行うプラットフォーム企業であるが、トラディショナル及びデジタルOOH広告において、英国の300,000を超えるサイトのメディア企業をサポートしている。
テクノロジー企業のxAdはモバイルでの位置情報を駆使して消費者を特定し、影響を及ぼすような新たなビジネスチャンスを提供している。
広告業界で最も伝統的と考えられている紙媒体においても、広告売買の自動化の動きは始まっている。
米国最大のパブリッシャーであるTimeは、昨年初めて自社紙媒体広告を、自動化テクノロジーを利用して販売し始めた。
一方英国では、パブリッシャーとメディアエージェンシーとのやりとりをより簡単で効率的にする目的で、新たなパブリッシャー出版広告取引システムが立ち上がり、一つのアクセスポイントからパブリシャーの紙面及びデジタルプラットフォームの予約が可能になる機能を提供している。
将来を考えると、このような変化は、自動化テクノロジーの発展により、より一層の進化を見せ、長い間サイロ化されていたメディアの壁を取り払う役割を担うであろう。
将来の姿がどのようなものになるかについては、先月の2016年ヨーロッパ広告週間においてRubicon Projectが製作したビデオにより分かりやすく解説されている。
放送されたビデオは、将来のメディアにおけるオムニチャネルの世界を描いたものであり、プランナー、バイヤーが集権的に、オーディオ、モバイル、オンライン、OOH外広告、紙媒体といった複数のチャネルにおけるキャンペーンをリアルタイムに計画、実行、修正が出来るといったものである。ビデオ上映の後に行われたパネルディスカッションの内容を吟味しても、こういった世界の実現は遠いものではない。
5年も経たないうちに、全ての伝統的なメディアにおいて自動化されたメディアバイイングのテクノロジーが導入され、プログラマティックを全体の自動化への動きのサブセットとなるだろうと、有識者は予想している。全てのプログラマティック取引がこの中に含まれる。
Clear Channel社の英国セールスディレクター、Martin Corke氏は、自動化取引の未来を語るパネルセッションにおいて、2020年までに自社の取引を100%自動化させたいというビジョンを語ってくれた。一方で、Spotify社は無料のストリーミングサービスによって、プログラマティックによるオーディオ広告を配信しているが、EMEAの広告及びパートナーシップ部門のVPであるJonathan Foster氏は、同様の自動化を5年以内に成し遂げたい旨を語ってくれた。
自動化への変化を促進する最も大きな力は、コスト抑制であり、広告主、パブリッシャー両者にとっての、よりシンプルで効率的な仕組みの必要性であろう。一方で、チャレンジとして残る点は、広告業界がより伝統的な業務を行っている部門に対して、自動購入のプロセスをどれだけ促進できるかという点であろう。
しかしながら、業界のより簡易で効率的かつ業界標準確立への共通の願いによって、自動化による未来は間も無く訪れるだろう。
一つの統合化されたプラットフォームによって、全てのメディアバイヤー全てのメディアが繋がるような夢の世界はまだ先であろう。しかしながらあと数年もしないうちに、自動化によって広告はより賢く、エンゲージメントの高い、ダイナミックなものになっていくだろう。
広告主とエージェンシーがこの利点を受けることだろう。そしてマーケティングは大きく変化をしていくことだろう。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。