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Videologyグローバルトップに聞く-改めて理解する、Viewability問題の本質- [インタビュー]

 

日本でも議論が活発化しているViewabilityに関して、先日来日した同社Chairman & CEO Scott Ferber氏に聞いた。

(聞き手: ExchangeWire Japan 野下 智之)

―Videologyの会社概要も兼ねて自己紹介をお願いします。

Videologyの創設者でCEOのスコット・ファーバーです。私の役割は、業界で最先端のイノベーションを推進め、会社を新しいフェーズに導くことです。今現在、世界中で28オフィスを構え従業員数は350名を超えるまでに成長することができましたVideologyの創設前は1998年にAdvertising.comを共同創設し2004年にAOLに売却しました。私自身Fortune500に名を連ねるP&GやCapital Oneでも働いた経験もあります。

アドテクは、エコシステムに関わる全てに利益を与える形で進化

―グローバル市場(US, EU, APAC)に見られるビデオプログラマティックの成長や課題は何でしょうか。

過去数年間においてアドテクが大きな進歩を遂げてきました。新しい大量のデータソースが市場に溢れたことで広告主が正しく消費者を理解できるようになり、どのデバイスからであろうと適切なメッセージをタイムリーに配信することが可能になりました。以前にも増して、すべてのスクリーン、特に動画では顕著に包括的なプランニングが見られるようになりました。現在はテレビとデジタルビデオが完全に融合する一歩手前まできています。

当社はこれからも業界とともに進化し続けます。常に広告主のニーズに合う新しい機能を追加していき、メディアとリソースの適切なアロケーション機能による在庫予測と配信保証に特化し続けていきます。我々の最終目的はクライアントに最良の結果をもたらすことです。

グローバル広告戦略を構築するにはまだ課題がいくつかあります。成長が著しい市場もあればそうでない市場もある。現在グローバル全体で統一された効果の計測基準を見い出そうとしているところでもあります。しかしながら「上げ潮は船をみな持ち上げる」と言われるように、この業界は消費者、広告主、代理店や媒体社などのエコシステムに関わるすべての者に利益を与える形でこれからも進化し続けていくだろうと私は強く信じています。

Videologyの2016年注力領域は、テレビとデジタルビデオの融合

―貴社の日本市場でのビジネスの進捗はいかがですか?

日本においては我々の最大のパートナーはヤフー・ジャパンです。昨年10月にはAdPodsをグローバルで展開しました。ヤフー・ジャパンはデータとプレミアム広告在庫を豊富に持ち合わせており、業界の中で素晴らしいポジションにいます。日本市場が他の市場に比べて成長が遅いのはデータとプレミアム広告在庫の不足が要因となっています。しかしながら、他のパートナーは2016年をより多くのプレミアム広告在庫を市場にもたらす努力を加速させ、データカバー率を上げる年と捉えています。広告付きのオンライン動画がある程度の市場シェアを獲得するまであとどのくらい時間がかかるかは意見が分かれるところですが、追い風として、大手放送局も広告付きのオンライン動画を今後どう利用していくか最善策を模索しているようです。

―2016年の注力領域についてお聞かせください

テレビとデジタルビデオの融合が促進されることを念頭に、今年も当社が常に優先事項として挙げている包括的な広告キャンペーンを構築することにマーケッターとともに注力していきます。

Viewabilityとは、「広告が見られているか」ではなく、「広告が見られる状態にあること」を保証すること

―ここからは、Viewabilityについて、お聞きしてまいります。まず、いつどのようにViewabilityの議論は始まったのでしょうか?その背景と合わせて教えてください。

背景の説明の前にまずはViewabilityの定義をしたいと思います。我々はViewabilityとは、広告が見られる状態にあることを保障ものだと考えています。広告は配信したとしても、かならずしも視聴者が見ているとは限りませんが、Viewabilityを用いることで見られる状態であったことは保障されます。

広告主にとってはテレビ広告配信と同じです。もしテレビコマーシャルが流れている間に席を外したとしても、コマーシャルは見られる状態で流れています。

デジタルの世界ではもっと状況は複雑です。ウェブブラウザーは最小化されている可能性があり、ユーザーは違うタブを見ているかも知れません。Viewabilityの測定はただ単にスクリーンに広告が見られる状態で配信さたかどうかを測るものなのです。

米国ではビデオのViewability測定が顕著に始まったのは2013年頃です。IAB(Interactive Advertising Bureau)がVPAID1.0を導入し測定が可能になりMRC(Media Rating Coucil)がどういう測定データが検討されるべきか基準を設け始めました。

一番の課題は計測基準

―Viewabilityに関する課題や議論のポイントはどこでしょうか。またそれは、どんな仕組みで解決できますか?誰が何をすればよいのでしょうか?

一番大きな課題は単純に計測基準を決めることです。これは、米国市場では既にほぼ2つのオプションのうち、1つが採用されています。MRC基準か、メディア投資会社であるGroup Mが先駆けて導入した拡張基準です。

MRC(Media Rating Council) はビデオの50%がスクリーン上に2秒以上連続して表示された場合はViewableであると定義しています。Group Mはビデオの100%がスクリーン上に表示され、少なくとも50%以上のビデオが実際に視聴され、さらに音付き、手動でビデオが開始されること、と定義しています。

基準を決めた後は、広告主は誰が何を計測するのか、しないのかを選択しなければいけません。広告主は、第三者計測ベンダーを利用することもできますし、またはそのアドテクベンダーが作ったツールを使うこともできます。 そこでの課題はそれぞれ違うベンダーが違う方法論で計測を作り上げていることです。

―Viewabilityの課題解決には、誰がコストを負担することになるのでしょうか?

このコストは2つの大きなカテゴリがあります:開発とキャンペーン配信です。

媒体と技術ベンダーが開発コストを負担します。媒体はViewableオプションを提供し、サイトと在庫を最適化するため、リソースを投資する必要があります。

アドテクベンダーは新しいViewable計測ツールかまたは第三者計測ベンダーとの統合にリソースを投資する必要があります。

キャンペーン配信においては、ほとんどのモデルはマーケッター自身がどのようにViewabilityを優先付けするかに委ねられています。彼らはキャンペーン実施の際に、Viewableにて最適化、保証をするか否かを選択することができます。それらは各キャンペーンベースでどのようにゴールを達成させるかに影響します。

現時点ではViewableかどうか測定できない在庫がまだまだ多いです。なぜなら限られたサプライと限られたViewable在庫の中では、コストが上昇するためです。

現在も課題解決に向けて議論が進行中

―マーケッターやエージェンシーにとりViewabilityはどれくらい深刻な問題なのでしょうか。差し迫った問題であるのか、大きな課題であると考えられているのでしょうか。欧米のマーケットでは、Viewabilityの議論はどれくらい盛り上がっているのでしょうか。

ここ数年、Viewabilityは米国で大きな関心を集めています。業界のプレイヤーは問題を理解し、対処されるべきだと信じていますが、理解するだけで問題は一夜のうちに解決されるわけではありません。皆未だ、この問題の範囲について理解しようと取り組んでいる上で、問題に対応する標準化されたツールを構築しているところなのです。

本トピックに関しては非常に多くの議論が交わされており、業界全体での進歩は見られますが時間はかかるでしょう。

―Viewabilityへの対応は、マーケッター、エージェンシー、広告配信ベンダー、パブリッシャーにどのような負担と利益をもたらすのでしょうか?彼らの考え方に関して違いはあるのでしょうか。

マーケッターは、プロダクトを売るというタスクがあります。もし彼らのメッセージがターゲットした視聴者に見られていない場合、パフォーマンスは低下していると捉えられます。代理店は、ブランド広告主のためにキャンペーンのパフォーマンスを上げるというタスクがあります。Viewabilityは、そのパフォーマンスの指標として大きなピースとなっています。ベンダーは、それらのキャンペーンを配信する責任があり、また、Viewabilityのような課題を克服するテクノロジーを提供することを期待されています。即ち、デマンド側にいる全ての人達は繋がっているということです。Viewabilityは皆にとっての懸念事項なのです。

サプライ側からは、媒体社は広告主に品質のある在庫を提供し利益を上げます。もし彼らがViewableではない在庫を売っていたら結果を上げられないですし、結果を上げられなければ広告主は違う取引先を使うでしょう。

それぞれのプレイヤーが違った立場で考えなければなりませんが、皆が共通にViewable在庫を欲しがっているのです。

―Viewabilityの議論が熱くなると新しいアドテクベンダーのエコシステムが出現するようになると思いますか?

この議論は既に長い間、話が盛り上がっていると考えています。DoubleVerifyの創業は2008年、Integral Ad Scienceは2009年、Moatは2010年でした。

これらの会社は各種領域の異なる測定に経験がありますが、最近になりViewabilityを優先事項と掲げました。

DSPとSSPなど様々な規模の技術提供企業がViewabilityを測定するソリューションを提供し始めました。

それらの会社は自社独自のソリューションを提供していたり、第三者のソリューションを活用したり、組み合わせることがあります。

Vudeologyは、プラットフォームの品質を保ちながら、Viewability在庫を測定し最適化

―VideologyはどのようにViewabilityに対して取り組んでおられますか?

明確にするとVideologyのプラットフォームはViewabilityをコントロールしません。代わりに、広告主のために、Viewability在庫を測定し最適化します。プラットフォームの品質はこれまで通り保障し、ブランドリフトの数値で常に業界水準を上回る事を実現します。Videologyは2014年にViewableの測定においてMRCの認定を受けました。VideologyはセルフサービスのプラットフォームにおいてViewableインプレッションを固定価格でMoat、DoubleVerify 、Integral Ad Scienceなど第三者の測定機能を使って、配信保障できる新しい機能を米国で一番初めに市場投入しました。

当社のクライアントはViewabilityをKPIとして設定するか、またはViewability保証で実行するのか、いずれかでキャンペーンを最適化することができます。クライアントはMRC が基準とするViewabilityまたはGroupMが先駆けて導入した、より広範囲のViewabilityの基準を活用して測定することが出来ます。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。