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ロケーションベースマーケティング:ブランドにとっての強力な武器

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

ロケーションベースマーケティングはマーケターにとって必須のツールで、競争力を磨き、必要なタイミングと場所においてカスタマイズしたメッセージを配信して消費者のエンゲージメントを高めることができる。

xAD社と共同で行われたForbes Insightsによる「位置情報:戦略的なマーケティングに不可欠な情報」には位置情報がモバイル広告にとって決定的な差別化要因になり、モバイルが購入決定における最も重要なツールになる点について言及している。オフラインにおける購入意思を確認し、更なる収入へと結びつけることが戦略マーケティングにおいては不可欠である。

消費者の期待値は高く、サービスが欲しいときに直ちに提供されることを希望している。企業側は、消費者の期待を適え、彼らがサービスを必要とするまさにその場に現れることで、絶好の機会を獲得することができる。

Forbes Media社のチーフインサイトオフィサーであるBruce Rogers氏は「位置情報は今やマーケティングにとって肝となる新たな分野である。正しいタイミングで、正しいメッセージを送ることができるのだから」と述べている。

トップ企業のシニアエグゼクティブへのインタビューから構成される本レポートから、彼らがいかに位置情報を使って競争に打ち勝とうとしているかについて知ることができる。彼らの関心は4つのエリアに広がっている。消費者の期待値、オンラインとオフライン、店頭でのユーザー活動、及び1:1マーケティングの新分野としての位置情報の活用である。

消費者の期待値に応える

スマートフォンを誰もが所有するようになり、どのような情報でも、いつでもこのポケットサイズの端末を通じてアクセスできるようになった。PepsiCo社の北米飲料部門のマーケティングアクティベーションのVPのAngelique Krembs氏はこう述べる。「以前は、3大テレビネットワークに向けてマスマーケティングを行っていれば全ての顧客にリーチすることができました。しかし現在は異なってきています。全てのことが人々の趣向や行動にマッチしている必要があります」。

レポートは、広告主がいかにしてロケーションベースマーケティング戦略を活用し、消費者の期待に応えるべきかについても言及している。広告主は消費者の購入パターンと位置情報の関係についてより注意を向けることで、よりインパクトや効果のあるモバイルキャンペーンを実施することができる。

またレポートでは、消費者が移動中にスマートフォンでの商品やサービスの検索を行う行為が、すぐに購入したいという意欲を裏付けている点についても言及している。xAd社の調査によると、移動中に商品情報の検索を行っているユーザーは家庭で同様の行為を行っているユーザーと比較して、1時間以内に購入に至るケースが45%も高いという結果がでている。

オンラインとオフラインのギャップを埋める

世の中がモバイル中心に変わっていくことは、決して店舗購入を限定するものにはなっていない。モバイルによるロケーションターゲティングは、オンラインとオフラインの世界を組み合わせ、購入完了へと導くユニークな可能性を秘めている。レポートにおいても、伝統的なオフラインでの広告とロケーション戦略が組み合わさることによる相互補完の可能性について触れている。これによって、広告主は消費者の位置情報、購入フロー、近くの小売店などの情報を考慮したキャンペーンを実行することができる。

Krembs氏は、Facebook、Youtube、Twitterのようなスマートフォンと親和性の高いサービスを利用して、企業は「消費者がどこにいるのか、何が欲しいのかを考慮したコンテンツのエコシステム」としてマーケティングを考えることが望ましいと述べている。

店頭経験を再定義する

eMarketer社は、2018年までに全世界のスマートフォンユーザーは25億人に達すると予想している。しかしながら、スマートフォンの急速な成長にもかかわらず、商務省によると90%以上の小売取引が店頭で行われるままである。これらを考慮すると、マーケターの目標はオフラインもしくはオンラインの何れかに集中することではなく、よりシームレスな消費者の購入プロセスに目を向けるべきである。

IABの業界イニシアティブ部門のバイスプレシデントであるJoe Laszlo氏は次のように述べている。「業界はスマートフォンを新た顧客サービスの窓口と考えており、携帯電話が主要な購入サポートツールになるような大きな機会が存在しています。Macy'sのような大手小売店が店内のWi-Fiインフラに大きな投資を行っており、これらは消費者の購入を促す役割を果たします」。

位置情報によって、マーケターはカスタマイズかつ最適化された店頭経験を提供することができる。レポートでは、如何にファーストフードがこれらの情報を活用しているかにも触れている。これらの企業は、位置情報を利用して特定地域に属する、セグメント化した消費者に対して、プロモーションのプッシュ通知を行うなどの活動を行っている。

ダンキン社のグローバルマーケティング部門のプレシデントでもあり、モバイルマーケティング協会のチェアマンでもあるJohn Castello氏は、ダンキン社ではロケーションベースマーケティングによって売上機会の向上に努めていると述べている。「もし、顧客がダンキンドーナッツでアイスコーヒーを買おうと考えている場合に、当社では位置情報を使ってアイスコーヒーと一緒にサンドイッチを提案することができます。また同じ方法でマッキアートを提案することもできます。顧客がダンキンドーナッツに来るつもりで、アイスコーヒーのような定番商品を頼もうとしている場合に、位置情報を使ったモバイル広告によって新たなドリンクの提案をしたり、食事のメニューを提案したりといった提案ができるのです」。

位置情報は小規模予算しかない広告主であっても、大きな広告予算を必要とせずに、新たな形で消費者にアプローチすることを可能にする。xAd社のEMEA地域のMD Theo Theodorou氏はExchangeWireとの独占インタビューにて次のように語ってくれた。「位置情報を活用することで、大企業と中小企業が同じフィールドで競争することが可能になります。位置情報の活用によって、ブランドはより適切で、タイムリーかつカスタマイズされたメッセージを配信できる様になるため、インパクトのあるキャンペーンを行えます。適切な情報配信によって、正しい消費者に正しいタイミングかつ場所にてアプローチできるようになります。それゆえロケーションベースマーケティングは多くのブランドにとって有益です。90%の商取引が伝統的な小売店で行われていますが、位置情報を活用することで実際の購入に至る消費者に影響を与えることは戦略的にものすごく重要です。大企業、中小企業にかかわらず、位置情報により競争に打ち勝つことができるのです」。

検索やソーシャルの次にある新カテゴリー

位置情報によって、検索やソーシャルでの活動によって得られた情報のギャップを埋めることが可能になる。位置情報はキーワードや明確な関心情報を獲得することなく、実際の消費者の生活に踏み入ることができる。レポートでは、位置情報の活用により、訪問したウェブサイトや利用したアプリなどの情報以上に消費者のニーズや意思を理解することができる点に触れている。

消費者がどこにいるか、またはどこにいたかといったコンテキストによって、広告主はカスタマイズしたメッセージやプロモーションを配信し、購入意思を高めることができる。レポートでは、検索やソーシャルに頼りすぎると消費者のオフラインでの活動が見えづらくなり、消費者インサイトや、消費者の行動パターン、実生活でのニーズなどを見逃すことにつながる点を警告している。位置情報、検索、ソーシャルはそれぞれ補完関係にあるプラットフォームで、それぞれのコンテキストを理解することが重要である。

位置情報の利用は非常に早いスピードで行われ、革新性のある企業はこれらの豊富なデータやインサイトを利用し始めている。まだ時間がかかるだろうが、消費者がモバイルを利用し、それらを実生活で活用していくスピードを考えると、位置情報の効率的な活用機会は無限に広がっている。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。