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ブランディング対パフォーマンスの古い発想

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

広告主と、彼らが実行するキャンペーンはブランディングもしくはパフォーマンスという全く異なる戦略及び目的でカテゴリー化される。Flite社のCEOであるGiles Goodwin氏はExchangeWireに対して、マーケティングはブランドまたはパフォーマンスという両極で判断されるのではなく、両方を達成するソリューションであるという話をしてくれた。

プログラマティックによるメディアバイイングにより、「正しい広告を、正しい人に、正しいタイミングで」提供するというコンテプトは、今までにないくらい浸透してきました。一方、クリエイティブに関してはまだまだ多くのことが残されています。現在マーケターにとって二つの選択肢があります。測定可能な結果を求めてパフォーマンスの高いキャンペーンを張るか、ブランドへの愛着を高めるための美しいコンテンツによるクリエイティブを制作するか、です。しかし、現在は既に2016年、デジタルのエコシステムは確立しており、「どうやったら両者を達成できるか」という視点で考えるべきです。

現在、パフォーマンスを追い求めるマーケティングはROIが全てです。マーケターは正しい広告を正しいタイミングで配信することにお金を支払い、消費者が広告をクリックして、ウェブサイトを閲覧し、コンバージョンファネルに導かれることを願っています。

一方でブランドマーケティングは本当にクリエイティブが全てです。これらは自分たちが何者かを知らしめ、消費者と長い期間に関係性を築くためのキャンペーンです。ブランディングとパフォーマンスの間にはほとんど繋がりはありません。多くのマーケターが優れたクリエイティブを投入し、それから成功を測るための準備を開始します。

現在ブランディングとパフォーマンスのキャンペーンを別々に実施している多くのマーケターは同意しないでしょうが、ブランディングとパフォーマンスは別々の指標ではありません。実際、近い将来にはこれらは別々ではなくなるでしょう。Facebook社のMark D’Arcyが言うように「明日の最高のブランドマーケターは、今日パフォーマンス向上のアクションをする」のです。

ユーザーフレンドリーなパフォーマンスとROIを重視したブランディング

GilesGoodwin-300x300Facebook社は自身で実践に移しています。彼らはターゲティングの手がかりをGoogle AdWordsのパフォーマンス重視のマーケティングから取り入れ、ブランディングへの実行可能なアクションへと変換させました。彼らは様々なコミュニケーションによってブランディング活動の品質を維持しながら、クリック及びパフォーマンスマーケティングによるエンゲージメントを高めていきました。

例えば、AdWordsは消費者がサーチエンジンで検索するキーワードによりターゲット化がなされており、顧客趣向によって非常に精度の高いターゲティングがされています。一方でFacebookは一歩先を行き、類似したターゲティングとダイナミックなセグメンテーション機能を組み合わせ、広告主にユーザー毎にコピーや画像を変化させて表示させる機能を提供しています。あるコンテンツマーケターのコメントを借りると「(Facebook広告は)テレビ視聴者が男性100%の場合は男性向けのボディウォッシュのテレビ広告を流し、視聴者が0から3歳の子供を持つ両親の場合にはオムツの広告を流している」ようなものなのです。

クリエイティブ管理プラットフォーム(CMP)ではダイナミックなセグメンテーション機能を提供しています。プログラマティックの技術を用いて数分で数千もの広告バリエーションをテストし、ブランドキャンペーンにおいてもパフォーマンスキャンペーンと同じように測定、変更が可能です。マーケターは0歳から3歳の子供を持つ親に対しておむつの広告を見せることが出来るだけでなく、これらの広告の対象となる両親の反応を確認し、クリエイティブに変更をかける様なことが瞬時に可能になるのです。

ブレンド化したアプローチ

それでは、どうしてパフォーマンス重視のターゲティングや、美しくカスタマイズされたクリエイティブの効果が瞬時にわかる機能は浸透していないのでしょうか?これはパフォーマンスとブランディングは二つの異なるものだという考えに囚われているからです。ブランディングはクリエイティブエージェンシーのストーリー作成能力に依存します。パフォーマンスはユーザエクスプリエンスを軽視し、ROIを重視する別のマーケティンググループによって管理されています。

これらの二つのグループはお互いから学ぶ必要があることを認識していないことがほとんどです。一例を挙げると、よく名の知られている音楽ストリーミングサイトのパフォーマンスチームと先日ミーティングを行い、いくつかの広告を見せてみました。詳細に行き着く前に、「我々がパフォーマンスチームなのはご存じですよね?」と彼らは質問を遮ったのです。

私は、当然それは認識した上で、これからデモを行おうとしているUXフレンドリーなプラットフォームはパフォーマンスチームにとても興味深い内容であることを説明しました。

我々はこの人工的な区別を止めるべきです。不適切な広告や気味悪くターゲット化された広告ほど消費者が嫌がるものはありません。デジタル広告による新しい世界において、CMOはブランドかパフォーマンスかという考えは止めるべきで、これら二つをデータ重視、測定重視しながらもユーザーフレンドリーな形で組み合わせるべきなのです。これがデジタル広告がさらに成長していく唯一の道です。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。