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Yahoo! JAPANが語る、インフィード広告への期待とレスポンシブフォーマットへの取り組み [インタビュー]

 

スマートデバイスの普及で注目されている新たな広告フォーマットがインフィード広告だ。

タイムライン化されたメディアのフィードの中に表示される広告で、昨年5月にYahoo! JAPANがスマホのトップ画面に組み込んだことで更に広まりを見せている。

インフィード広告が市場に歓迎されている要因はどこにあるのか。それぞれの特徴や効果、そしてインフィード広告以外にも注力しているレスポンシブフォーマットについて、また、Yahoo!ディスプレイアドネットワーク(YDN)が目指す今後について、ヤフー株式会社のマーケティングソリューションカンパニー ディスプレイ広告ユニット Yahoo!ディスプレイアドネットワーク サービスマネージャーの矢吹泰教氏に聞いた。

(聞き手: ExchangeWire Japan 野下 智之)

CTR、CVR双方の改善に貢献するインフィード広告

―矢吹さんのプロフィール、今の御仕事の役割についてお聞かせください

私はYDNのサービス責任者として、YDNプロダクト全般を統括しております。
元々独立系Sier(システムインテグレーター)にシステムエンジニアとして勤務し、2011年にヤフーに入社しました。
2012年よりYahoo!ディスプレイアドネットワーク(YDN)のプロジェクトマネージャーとして各種ターゲティング機能の構築・市場導入を担当し、2014年にYDNのサービス責任者(サービスマネージャー)となりました。

―インフィード広告が注目されている理由について、広告主、メディア、ユーザーそれぞれの立場から改めてご説明いただけますか。

Interview_Yahoo! JAPAN 矢吹 泰教氏まず広告主サイドからは、非常に効果が出ているというお声をいただいています。

弊社はスマートフォン版Yahoo! JAPANトップおよびYahoo! JAPANアプリのタイムライン化に伴いインフィードを導入しました。タイムライン化する前のスマートフォン版Yahoo! JAPANの旧YDN広告※1と、タイムライン化された新たなインフィード広告を比較した場合の効果はデータにはっきりと表れています。

CTR(クリック率)は旧スマホ広告と比べて2.2倍※2。クリックされても無駄なら意味がなくなってしまいますが、しっかりとコンバージョンの成果も付いてきています。インフィード広告のCVR(コンバージョンレート)は旧スマホ広告の1.2倍※3の成果を上げています。

CVRについてもう少し詳しく申し上げますと、メディアサイドから見ると、ユニークユーザーにおけるCVRが高いという特徴もあります。例えばクリックレスポンスレート(クリック反応率)で言うと、新規ユーザーがよりクリックしていただいておりCVRにもつながっている。新しい層にもちゃんと広告に振り向いていただいており、非常に効果が出ていると言えます。

―インフィード広告の特徴、バナー広告との違いはどのような点でしょうか。

Interview_Yahoo! JAPAN 矢吹 泰教氏一番分かりやすいのは広告に対するユーザーの接触態度です。バナー広告に関して近年言われているのは「バナー・ブラインドネス」、いわゆるバナーは見ない、という行為です。

一方のインフィード広告はコンテンツがタイムライン化しているところにコンテンツとなじむ形で挿入されます。これまでバナー広告を見ていなかったインターネットユーザーも、インフィード広告の情報を摂取してアクションにつながっています。これはメディアサイドの利点ですが、広告収益とユーザビリティのバランスが非常に良いと考えております。狭いスマホの世界でどうバランスを取るかが課題なのですが、ユーザー体験も収益も担保されているということです。

ユーザーについても、先ほど申し上げたように、よりストレスなく広告に接していただいています。

インフィード広告はメディアにもメリットをもたらす

―改めてYDNのインフィード広告について、これまでの経緯と現状の取り組みについて教えて下さい。

YDNのインフィード広告は2015年5月にローンチしました。当初はスマートフォン版Yahoo! JAPANトップとYahoo! JAPANアプリのみでしたが、その後配信対象先を拡大し、Yahoo!ニュースにも適用しています。また、Yahoo! JAPANだけでなく、プレジデントやオールアバウト、ニフティ、エキサイトなどすでに多くの媒体にも導入いただいており、広告配信しております。今後もインフィード広告の提携サイトは拡大していく予定です。

インフィード広告はメディアサイドにもメリットがあるので、パブリッシャー様からの引き合いは強いです。インフィード広告の導入に関してはまだ様子を見ておられるパブリッシャー様もいらっしゃいますが、事例が蓄積されていくことにより、インフィード広告を導入されるパブリッシャー様は増えると見込んでおります。

―パブリッシャーがインフィード広告を導入するには、コンテンツがタイムライン化している必要がありますよね。ヤフーさんが平行してコンサルティングをしているのでしょうか。

その通りです。既にタイムライン化しているパブリッシャー様とそうでないパブリッシャー様がいます。タイムライン化されていればそこにインフィード広告を入れればよいのですが、まだであればタイムライン化について弊社が持ち合わせている知見を提示しながら進めます。

―メディアのタイムライン化や、インフィード広告の導入を提案された場合、パブリッシャーはまずどのような反応をされますか?

インフィード広告は実績を見ると非常に良い結果が出ているのですが、とはいえメディアチェンジはやってみないと分からないですよね。絶対こうなる、という保証がないので、多少の心配は皆さん持たれています。まだタイムライン化していないパブリッシャー様については様子を見ながら、ゆっくり石橋を叩いていらっしゃる印象を受けます。

―ヤフーの全体在庫の中で、インフィード広告が占める割合はどのくらいなのでしょうか。

詳細はお話できませんが、非常に多い割合です。しかしスマートデバイスにおいて、YDNはインフィード広告のみ取り組んでいれば良いというようには考えておりません。インフィード広告はタイムラインの中でだけで流していますが、YDNではそれ以外の広告フォーマットも多数揃えております。

タイムライン化されているサイトにはインフィード広告で対応できます。一方、タイムライン化されていないスマホサイトは、スマホの小さい領域でいかにユーザーに情報を届けるかがポイントとなります。そこでヤフーが注力しているのがレスポンシブフォーマットです。スマホにスタティックなバナーやテキストだけでは表現に限界があるのですが、このレスポンシブフォーマットは掲載面になじむ形で配信することができます。スマホに関しては、インフィード広告以外ですと、このレスポンシブフォーマットを選択される広告主が多いです。

インフィード広告だけではない、YDNが注力するレスポンシブは、広告主の負担を抑え、広告効果を拡大

―レスポンシブはどのようなフォーマットでしょうか。

レスポンシブは、掲載面に合わせてデザインを変えます。入稿する時はバナーテキスト、説明文、広告主の名前が部品で、サムネイルや大きな帯にするなど、メディアのテイストによって表現を変えていきます。バナー、テキストだけだと広告表現に限界がありますが、そこに加えてレスポンシブ広告でより良いものができるのです。効果も間違いなく良いことが分かっています。スマデバ広告の中で今後主流になっていくでしょうし、していくつもりです。

―広告主側の素材の負担は多くならないのでしょうか。

レスポンシブは、多くの種類の画像を用意せずとも、さまざまなサイズのデバイスにユーザーがアクションを起こしやすい広告を配信できるのが特徴の1つです。そのため広告主の負担は抑えられると考えています。

―商品の種類によって出稿する広告主の業種に違いなどはありますか。

今のところインフィード広告とそれ以外で大きな差はありません。

―では、企業規模についてはいかがでしょうか。

SMB(中小企業)のクライアントの成功事例も届いてきています。CPA改善や、小規模な小売店の来客数増加など、業種業態や予算規模にも関わらず効果が出ています。この効果はYDN全体で言えることですが、特にインフィード広告が顕著ですね。

―インフィード広告のみ出稿する広告主はいますか。

フォーマットごとの広告効果によって、予算配分をインフィード広告に寄せることはあります。インフィード広告に適している広告主もいらっしゃいますが、出稿をインフィード広告のみに絞るケースはあまりないです。

―業界動向全般において、インフィード広告領域で注目されていることがあれば教えて下さい。

繰り返しになるかもしれませんが、インフィード広告に限らず、スマートフォン上では狭い領域でコンテンツも広告も共存させながら、かつユーザビリティと収益を追及しなければなりません。広告表現に関しては、みなさん模索中であると思います。その中の答えの一つがインフィード広告であるということだと思いますが、それ以外の答えもあるはずです。我々はレスポンシブもその一つだと思っておりますので、今後どのようになっていくかを注目しています。

インフィード広告が超えるべき課題は「広告のフレッシュネス」

―インフィード広告の需要が拡大するために、何か課題はあるのでしょうか。

Interview_Yahoo! JAPAN 矢吹 泰教氏広告主目線になりますが、課題はコンテンツと一緒です。タイムラインに出て来る上、PCのように決まった時間に見る訳ではなく、コンテンツも広告も一緒になり24時間閲覧されます。するとこれまで以上に広告の新鮮さが重要になってくる。昼に野球ニュース見て、夜も同じニュースが出ていたら見る気もしないですよね。

広告の摂取スピードも速くなっておりますので、その動きにあわせてリフレッシュしていかないといけないのです。
コンテンツと広告がフィットすることでインフィード広告の価値が出るのです。広告クリエイティブも非常に重要ですが、ランディングページ(LP)も含めたプランニングも必要です。飛び先がユーザーの意図しないコンテンツであると、残念なユーザー体験をさせてしまいますので。

―ヤフーさんから広告主に対する働きかけは何かされているのでしょうか。

LPのクオリティを含む広告掲載基準に関して、ルール改定は前向きに検討しております。

―スマートデバイスに関しては、インフィード広告がバナーとテキスト広告に完全にとって変わるとお考えでしょうか。

バナーとテキスト広告は完全になくなる訳ではないと思います。ただYahoo! JAPAN内外でインフィード広告は今後も確実に増えていくと考えます。ただタイムライン化だけでなく、レスポンシブも重要な要素です。この2種類が重要な要素になっていくと思います。

バナー広告がフィットする掲載面もありますし、最適な広告フォーマットは掲載面の特性により異なってくると思います。しかし将来的には、スマートデバイスにおいて単純なバナー広告は主流にはならないのでは、と考えております。

―PC向け広告としても、インフィード広告の普及が進むのでしょうか。

その前に、そもそものメディアがタイムライン化するかどうかです。その観点ですと、PCはインフィード広告の普及が進みづらいのでは、と思います。しかしスタティックなだけでなく、PCも別のフォーマットを求められるのは確実ですので、レスポンシブが主流になっていくと思っております。

インフィード広告の動画対応も予定! YDNの今後について

―YDNの今後の取り組みについて、お聞かせください。

インフィード広告については広告主様から喜びの声を沢山戴いております。自信を持ってデジタルマーケティングに活用していただけます。インフィード広告は非常によい広告効果がありますが、YDNではそれだけではく、スマホの最適な広告表現の実現に向けて、レスポンシブにも注力しています。
レスポンシブは今年4月から一気に増やしてまいります。ダイレクトレスポンス以外のアウェアネス(態度変容)の部分でも、より活用していただけるようにと注力しております。

フォーマットも今は静止画のみですが、インフィード広告への動画フォーマットへの対応は先々取り組んでまいります。マーケティング活動における動画の活用が進み、広告主の皆様は、動画で表現する場所を探している状況です。YDNがその解決策を提示したいと考えており、そう遠くない将来の動画対応を予定しております。

※1 「旧トップページのYDN広告」とは、スマートフォン版Yahoo! JAPAN旧トップページに掲載されていたYDNの合計実績値([特別]トップパネル/[特別]トップバナー/トップ面に掲載分のテキスト広告)

※2 Yahoo! JAPAN自社調査(2015年3月25日~3月31日 / 2015年5月21日~5月27日の2期間)データ抽出条件:「インフィード広告」及び「旧トップページのYDN広告」の上記対象期間のウェブのみのクリック実績(アプリのデータは含まない)

※3 Yahoo! JAPAN自社調査(2015年3月25日~4月7日 / 2015年5月21日~6月3日の2期間)データ抽出条件:「インフィード広告」及び「旧トップページのYDN広告」の両方にて上記対象期間にコンバージョンが発生しているアカウントに限定した、ウェブのみのコンバージョン実績(アプリのデータは含まない)

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。