オートメーションとブランディングの出会い:データを活用したクリエイティビティ強化 |WireColumn
ブランディングという概念自体の根底には、人間の感性があります。今年は、ブランディング、オートメーション、クリエイティビティをめぐって、またこの広告の3大要素の間でどのような相互作用が可能であるかについて、これまでになく議論がなされています。広告オートメーションによってクリエイティビティの能力が低下することはありません。むしろブランドに、より積極的に先手を打つ機会をもたらします。
端的に言うと、オートメーションは、ブランディングキャンペーンをさらに活性化させる即時性とデータを提供します。業界が成熟するにしたがって、この点についての理解は次第に広がっていくと思われます。Heineken USAのシニアメディアディレクターのRom Amramは、今年のCannes Lionsで、次のような言葉により、おそらくは最も適切に説明していました。「プログラマティックによって、わたしたちは何が作用しているかを確かめるためにデータを適用し、そして分かったことを自身のクリエイティブのプロセスにフィードバックできるのであり、それはすばらしい学習エンジンです」。
市場の成熟
オートメーションは、そもそも媒体社が売れ残った在庫を取引するための手段でしたが、その後それをはるかに超えて発展しました。オートメーションは、バリューチェーンの上層へと次第に成長し、現在はプレミアム在庫、高級ブランド、最大手の世界的な広告企業を擁するようになり、いまやそこはブランディングキャンペーンが繁栄することのできるダイナミックな空間でもあります。OMGのグローバル戦略パートナーシップ担当EVP、Steve Katelmanの言葉を借りるならば「プログラマティックブランディングは、プログラマティックの成長の証であり、すべての広告とマーケティングの将来を担っています」。
デジタル広告のオートメーションを受け入れるセラー・バイヤーが次第に増加するにつれて、クリエイティブな触媒としてのオートメーションの可能性が完全に実現されつつあります。それは当社の6月13日付「State of the Industry Q2 2015(2015年第2四半期の業界状況)」レポートでも言及されており、同レポートによると、バイヤーの86%が今後1~2年にプログラマティックな方法を通じたブランディング支出の増加を予想しています。
アートvs.サイエンス
オートメーションが広告業界に与えた破壊的な影響は、当初、それ相応の反対派を招きました。そうした懐疑主義は今日もなお、一部の人々に残っています。しかし業界で主流の見解としては、オートメーションをブランディングやパフォーマンスキャンペーンで同様に成果を高めるための、単なるツールあるいは手段としており、そうした見方はIABのレポートにも反映され、同レポートの予測によると、広告のオートメーションは、今後3年間にディスプレイ広告支出の最大80%を占めるようになるとしています。
広告主がそれに応じて自らの習慣を変え始めていることは明らかであり、例えばCeltraのレポートによると、マーケティング担当者の74%がブランド認知の強化に既にディスプレイ広告を使用しています。この数値は実際、わたしたちが目の当たりにしているパラダイムシフトを雄弁に語っており、HTML5、ネイティブ広告、ビデオのようなリッチメディアの革新により、広告主にとって、あらゆるメディアにわたってインパクトのあるブランド作用を生成するさらなるチャンスが広がりました。
変化する広告環境への適応
オートメーションは、広告代理店から媒体社やブランドに至るまで、この業界のすべての人々に明らかに影響を与えています。こうしたブランドの一部は、オートメーションを脅威ではなく、自社のクリエイティブ武装の新たな武器と見なし、歓迎しました。Dominoの例を見てみましょう。同社はファストフードのブランドから、自らをテクノロジ企業と宣言するまでに変革し、その過程でこの変化する広告環境にうまく適応しました。2014年末までに、Dominoは売り上げの50%をデジタル経由で達成し、同社の広告代理店CP+Bが 改善キャンペーンを立ち上げて以降、株価が1200%上昇しています。
Domino再興の背後にあった牽引力として、興味深いのは、同広告代理店の最高デジタル責任者であるIvan Perez-Armandarizが、今年のLions Innovationフェスティバルにおいて、革新に向けた環境を作るには「統合、すなわち広告とテクノロジの各部門で働く人々のサイロを打ち破ること」が重要と述べていたことです。
オートメーションを通じた認知と親近感
繰り返し見てきたように、広告主は、適切な消費者に働きかけ、接触できるインパクトのあるブランディングキャンペーンを配信するために、次第にオートメーションを使用するようになっています。
プログラマティックをブランディングとクリエイティビティにとっての脅威と見なすのではなく、次第にバイヤーもセラーも同じく、オートメーションの支持者になろうとしています。データを使用してクリエイティブな直感を支援することで、ブランディングとテクノロジは共存できるだけでなく、広告の境界を全く新たな領域へ押し広げることができます。
ABOUT 池田 智幸
eyeota
事業開発ヘッド
オーバーチュアにてシニアマネージャーとしてオーバーチュアの営業戦略、代理店戦略の立案をはじめモバイルセールスチーム、業種・業態に特化したコンサルティング、営業キャンペーンなどを実行するチームの指揮を執る。その後、オットージャパンにてイーコマース事業のマネージメントを担当した後、アドビシステムズにてイーコマース事業者をターゲットにしたクロスメディア向けリッチコンテンツ配信サービスのビジネス立ち上げに営業として従事。
その後、Marin Software、Rubicon Projectにて日本ビジネスの責任者として立ち上げを行い、現在はEyeotaで事業開発ヘッドとして日本でのビジネスの立ち上げおよびビジネス開発に従事。