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Now&Nextレポート:ネイティブ広告の現状

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

Now & Nextは、ExchangeWire Research の新しいシリーズである。このシリーズでは、最新のリサーチを評価し、公平な洞察及び現在のトレンド分析、並びに、今後の広告及びマーケティング技術の予測を提供する:本シリーズは、主にネイティブ広告を対象としている。
 
アドブロックならびにエンゲージメントの低下が深刻な状況に

PageFairの‘2015 Ad Blocking Report’ (PDFアイコンPDF) によると、世界的にアドブロックの利用が毎年41%拡大すると予測され、2015年にパブリッシャーの費用が220億米国ドルに上るとの試算がある。アドブロックならびに広告の顧客への働きかけの低下は、広告主にとり深刻化しつつある問題であり、Reuters Digital News Reportが明らかにしたところによると、英国ユーザーの30%以上がサイトのブラジングの障害となる従来のバナー広告を非表示にしている。

ネイティブ広告はコンテンツとキュレーション広告の区別をあいまいにすることにより、広告主がターゲットとするユーザーに広告を配信する繊細な手法を提供している。IABはネイティブ・バナーの下に潜む6つの主要な広告の種類について詳細を明らかにしている: インフィード、ペイドサーチ、レコメンド・ウィジェット、プロモーションリスティング、ネイティブ要素を持った標準的な広告、カスタムネイティブ広告である。

Adyoulike & FaRの発表によると、英国では現在、ネイティブ広告費用がデジタル広告全体の14.7%に上り、年々5.5%上昇している。米国では、Business Insiderによると、2013年に47億米国ドルであった、ネイティブ広告費用が、2015年には75億米ドルになるとされている。Native Advertising Technology Study (PDFアイコンPDF) によると、69%の広告主がネイティブ広告が有効な広告手法であると考えている。
 
ネイティブ広告の普及が加速

Kenshooが先日明らかにしたところによると、Facebook上のネイティブ広告費が毎年114%の成長を示しており、現在モバイル端末におけるネイティブ広告費用の63%を占めるとのことである。Instagramが先日セルフサービスのネイティブ広告の提供を開始したが、2017年の広告収入見込は28億1千万米ドルにのぼる。

PWCの‘Consumer Intelligence Survey’ (PDFアイコンPDF) によれば、世界的には、ユーザーの多数が、広告に求める主なものは関連のある広告コンテンツである (ブラジル 88%、中国 77%、英国 59%、米国 56%) ことが明らかとなっている。同レポートにより、モバイル広告が邪魔な感じがするため、英国ならびに米国のユーザーがモバイル向けのコンテンツを好まないことが明らかになった; ネイティブ広告では、企業が、ユーザーに対し、邪魔にならないような表示方法でコンテンツを作成することが可能である。
 
ネイティブ広告はユーザーにより強く働きかけるか?

先日のYahooによるアイトラッキングをベースにした調査では、ユーザーの85%が、ネイティブ広告を含むコンテンツ・ストリームに目が引き付けられており、他の種類のビジュアル広告と比べ21%高かった。同調査の60%以上 (62%) の回答者が、ネイティブ広告が他の形態の広告よりも邪魔にならないと感じていると述べた。

モバイル端末上でネイティブ広告を閲覧するユーザーは、広告のコンテンツを覚えている割合がディスプレイ広告に比べて19%多く、デスクトップ上で閲覧されたネイティブ広告よりも13%高かった。

Adyoulikeの調査によると、ネイティブ広告の平均滞留時間は他の広告形式の2倍である (70秒に対し140秒)。スポンサード・コンテンツの平均滞留時間は68秒である。Sharethrough Inc の研究によると、ユーザーは元のコンテンツよりもネイティブ・コンテンツを見る傾向がある (24%に対し26%)。

Adyoulikeが明らかにしたところによれば、18歳から24歳の大部分 (63%) がスポンサード・コンテンツを積極的に求めており、44%がスポンサード・コンテンツがエンターテインメント要素の価値を高めるものだと答えた。
最近のIAB の研究 (PDFアイコンPDF) によれば、ユーザーの半数近くがネイティブ広告がビジネスならびにエンターテイメント・コンテンツのウェブサイト・エクスペリエンス全体を高めると考えている。

同レポートによれば、10分の9のユーザーが特定のネイティブ・コンテンツに興味を引くための最も重要な要素はコンテンツの関連性であると述べており、サイトはこれに基づいた場合、58%好ましさが上昇する。

Netflixが米国の刑務所におけるWomen Inmatesの窮状を取り上げた、オレンジ・イズ・ニュー・ブラックの放映を宣伝するため、New York Timesのウェブサイトで将来に向けたネイティブ広告キャンペーンを開始した
 
ユーザーはネイティブ広告を肯定的に見ている

相互交流が加速する中で、ミレニアル世代はモノのインターネット化 (IoT) の誕生を体感しながら、成長した。英国国内では、ミレニアル世代の91%が現在スマートフォンを所有しているという記録があり (comScore)、Nielsenの発表した数字によると、米国におけるこの数値は85%である。
最近のYahoo の調査により、ユーザーの大多数 (58%) がネイティブ広告がモバイル端末向けの最良の広告媒体であると考えていることが明らかになった。ネイティブ広告が他の従来の広告より優れていると考えるユーザーは多く、利用は以下のようなものであった。
邪魔にならない感覚 (55%)、ウェブサイト上のコンテンツとうまく調和している (51%)。そしてまた、ユーザーがネイティブ広告がスマートフォンでのインターネットの利用法により即していると考えてもいる (41%)。

米国では、Facebookがミレニアル世代にとってのソーシャルメディアの支配的存在であり、American Press Institute show の示したところによると、57%がそれを日常的に利用している。Youtubeが2番目に人気がある新しいメディアプラットフォームであり、ミレニアル世代の54%が定期的にアクセスしている。ミレニアル世代の4分の1強 (26%) がInstagramを日常利用しており、30%超がTwitter (34%)、Pinterest(35%) を定期的に利用している。

Sharethrough Inc の研究によると、ユーザーはネイティブ・コンテンツをバナー広告より多く共有している (19%に対し32%)。しかし、この調査結果は、広告媒体の共有において、どちらが容易であるかという点に依存している可能性はある。
 
ネイティブ広告の今後

Business Insider が発表した数字によると、ネイティブ広告における広告費用は、2018年までに210億米国ドルになると見込まれている。ネイティブ広告は広告主がモバイル端末上でユーザーに目に障らない方法で働きかける手法を可能にする。

ネイティブ広告は従来の広告より高いエンゲージメント率を誇り、ユーザーは、好ましい広告媒体と評価している。ユーザーは積極的にネイティブ・コンテンツを探しており、質の良い関連のあるコンテンツがブラウジング・エクスペリエンスにもたらす価値を高く評価している。ネイティブ広告は、よりユーザーに共有される傾向があり、3分の1近く (32%) がネイティブ広告を共有したいと述べている。

ネイティブ広告は、広告主に長い滞留時間と感情的なエンゲージメントを提供し、ユーザー向けにより緻密な広告を提供する。アドブロック利用の増加により、広告主はユーザーに対する自らの広告の質とその関わり方について配慮することが求められ、ネイティブ広告は、それらをユーザーに提供するための緻密な手法を提供している。
 
 
 

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。