グローバル市場を対象に、アドテクベンダー50,000社超のデータを無償提供するThalamus、その正体とは?
グローバル市場のアドテクベンダーについて情報収集をされる方であれば、既に活用されている方もおられるかもしれないが、米国にThalamusという便利なWebサービスがある。
このサービスは一言でいうと、グローバルのデジタル広告業界向けバーティカル検索・企業データベースサービスである。
実際にサイトを訪問してみると、そこには検索ボックスが中央に配置された、至ってシンプルなインターフェースのトップページが現れる。
検索ボックスに、何らかのキーワードを入力すると、そこには、検索キーワードに紐づく膨大な事業者リストが現れる。
そして、特定の事業者をクリックすると、その事業者の概要、コンタクト先、プロダクトの概要、広告フォーマット、ダッシュボードの画面画像、レビュー、その他さまざまな情報が掲載されている。
より詳細な機能については、実際に確かめていただければと思うが、この日本ではあまり名前を聞くことのないサービス、英語圏では認知が高まりつつあるようで、ITスタートアップを紹介する幾つかのWebメディアなどでも紹介されている。
実際、Thalamusの裏側に格納されているデータ量は膨大であり、データベースに登録されている事業者数は、50,000社を超えているとのことである。
このサービスは、どのようにして作られたであろうか?
同社ファウンダーのGarret Gan氏が、サービスの概要や、提供開始に至った背景、ビジネスモデルや今後の展開予定などについて、メールでのインタビューに回答してくれた。
-サービスの概要について教えてください。
Thalamusは世界中の(アドネットワークや、DSP、ウェブ・モバイルパブリッシャー等の)広告ベンダーとその機能、コンタクト情報、マーケティングツール、広告スペック、広告リーチと地域情報及びメディアバイヤーからのレビューを掲載したクラウド上のデータベースです。
-このサービスをローンチした背景について教えてください。
当社のサービスは2014年にローンチしました。元々のアイディアは、私がQuantcastにいた時から抱いていたものです。
当時私は、広告ベンダーとその付随する情報についてどうして一元化されて、容易にサーチ出来るデータベースがないことについて、疑問に思っていました。このようなサービスがあれば、バイヤーはワンストップで全てのデータにアクセスする事が非常に容易になると考えていました。
-どのようにして、このような多くのデータを収集したのでしょうか?
これらの情報入力に協力してくれたベンダーには、無料の分析ツールやメッセージングサービス等のインセンティブを提供しています。これにより、登録してくれたベンダーは、Thalamusを経由してバイヤーからのコンタクトを受け取ったり、どういったバイヤーが自身の広告サービスに興味を持っているかなどを把握出来たりと、営業ツールとして利用する事が出来ます。
-Thalamusのビジネスモデルと顧客について教えてください。
当社のプラットフォームはバイヤーの利用及び広告ベンダーの掲載に関して100%無料でサービスの提供をしています。将来的には分析や、資料掲載、ホスティング、スケジューリング、動画によるテスティモニアル等の付加価値サービスによる課金を行うかも知れません。
-ユーザー数やトラフィックに関してお聞かせください
ユーザー数は、月に数万といったところです。100カ国を超えるメディアバイヤーからのアクセスがあり、34カ国以上のベンダーの登録があります。
-Thalamusへのベンダー登録はどのようにしたら良いのでしょうか?
thalamus.coにアクセスして「広告パートナーの追加」をクリックするだけです。企業メールがベンダーページの情報にマッチすれば自動的に入力項目の承認が行われます。登録後、企業情報やコンタクト情報を掲載することが出来、提供サービスについての問い合わせを無料で受けとることが出来ます。
-将来のビジネスプランについて教えてください。
将来的にはデータセットをより大きなものにしていき、現在業務を進めているエージェンシーの(ノート、プライベートファイルストレージ、ワークフローの自動化等)内部ツールをサポートしていきたいと考えています。来年にはメディアの売買取引が活発な国の言語をサポートすることで、グローバル対応を進めていきたいと考えています。
機能やコンテンツの拡充については、今後もまだまだ進められていくようだが、より洗練化され、またサービスのスケールがさらに拡大していけば、グローバルのデジタル広告業界関係者の間で、ユニークなプレゼンスを発揮していくことになるかもしれない。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。