データフィードが変える広告の未来~多次元データベースとは?~マイクロアド~ |WireColumn
アドテクノロジーの進展は、配信側のみならずクリエイティブの領域においても確実に進んでおり、その命題ともいうべき業務効率化と運用最適化に貢献し続けている。
本コラムは、普及が進むデータフィードを活用した広告配信に関する解説とその活用の現状、そして今後のデータフィードを活用した広告配信の発展方向性について、株式会社マイクロアド DF事業部 事業責任者 井上茂樹氏が解説する。
全2回に分けてお届けする本編の第一回目は、データフィードとこれを活用した広告配信について、基本的な解説を行う。
アドテクノロジーの発展と共に流行りだした「データフィード」。この言葉を国内で耳にするようになったのはおよそ3年程度前でしょうか。
EC・人材・旅行等、商品を大量に持つ広告主等が、データフィードを活用する事でクリエイティブが最適化され、高いパフォーマンスを出せるディスプレイリターゲティング広告の一つが、ダイナミックリターゲティング広告(以降データフィード広告)です。
筆者も現在まさにこのデータフィード広告を先述の業種を中心とするクライアントに提案・運用しているところです。ここでは「データフィード」の定義から「なぜ必要とされているか」、「データフィード広告の今後の活用のあり方」について、わかりやすくお伝えしてまいります。
EC事業者を中心に普及が進むデータフィードとは?
ではまず、データフィードとはそもそもどのようなものであるかという事から。
データフィードとは、自社で保有している商品等のデータをそれぞれの広告フォーマットに変換、送信する仕組みを指します。
例えばEC業者は、大量の商品とそれに付随する膨大な商品データを抱えています。このデータを閲覧ユーザーに届ける為に整理し、広告配信が可能なフォーマットに変換し、配信する広告をクリエイティブに表示させます。
ディスプレイ広告、商品リスト広告(Product Listing Ads)、アフィリエイト、価格比較サイト等活用の場所は広く、またそれぞれの広告フォーマットがあります。膨大なデータを整理しフォーマットを整える仕組みがデータフィードです。
この仕組みは配信方法により異なりますが、ここでは一例としてディスプレイ広告に関して説明します。
まず、データフィードの作成方法について。これは主に2つの方法があります。
クローリングによるもの、そして2つ目は、クライアントが持つ商品マスターを加工する方法です。
クローリングとはサイトのソースを読み込みこの文章は「商品名」、この文章は「商品説明」等と拾い上げて1つのデータにする方法です。この方法は、「手間をかけずにデータフィードを生成できる事」、「またフィードの内容が新鮮である事」がメリットとして挙げられます。
2つ目は、商品マスターを広告事業者に渡し、広告配信フォーマットの仕様に合わせる方法です。クローリングで作成する場合、先述の通りソース上から必要な情報箇所を指定し、これを引っ張ってきます。その為、サイトのデザイン変更(商品名や価格の場所が変わる等)が行われた場合は一時的にフィード上に誤った情報がデータに記載されるリスクがあります。しかしながら、商品マスターから加工すれば、サイト変更に影響されることがなく、先述のリスクを回避できます。
以上2つのうちいずれかの方法で作成したフィードは、商品の在庫状況や価格変更に対応する為に高頻度で更新を行います。データの更新はサーバーを介し「毎日/何時に」等を決め、自動更新できるようになっています。
データフィードの施策で重要な事は、データの内容が常に新鮮である事(商品在庫切れ、セール価格等)とサイト内の情報との精度(リンク先の一致、フィード内の画像等)です。
もし、サイトから確認できる商品IDの商品内容と、フィード内の同じIDの商品データが異なってしまうとユーザーには閲覧してもいない広告が配信されてしまいます。
この施策において、データフィードはただの商品一覧リストではなく、「クリエイティブ」そのものとなります。そのため、データの精度と鮮度が求められる物となります。
また、施策のクオリティを高めるためには、ただ単に商品名を載せるのではなく、例えば【sale中】や【送料無料】等ユーザーのアテンションを高めるコピーを加えたり、商品画像に赤枠をつけて目立たせたりというような、改善すべきポイントがいくつもあります。
※データフィード内情報
商品ID・商品名・商品説明・カテゴリ・価格・画像URL など
各媒体で必要項目は異なりますが、最低限必要な項目はあります。後述しますがただ単に見た商品をクリエイティブに出すだけなら上記程度の情報で問題ないでしょう。ただ例えばファッションには商品それぞれのブランドがあったり、カテゴリもかなり細かくまで分類されていたり、セール時の価格が項目にあったり、キリはないですがデータ項目は多い方が細かい分析も可能で、より効果の高い運用が可能となります。
データフィードの理解に押さえるべきポイント!―データフィード広告の種類とそれぞれの特徴―
ユーザーが閲覧した商品を判別し、データフィードからクリエイティブに反映させることはデータフィード広告の最大の特徴ですが、この時重要となるのはデータの精度や商品の表示速度のみとなります。
もう1つ大きな特徴としてクリエイティブの中にはユーザーが見ていない商品、広告を配信するユーザーにお薦めしたい「レコメンド商品」も含まれている事も挙げられます。
皆様も感じられたことがあろう例として、下記のようなことが挙げられます。
Amazon等でのショッピングで経験があるかと思いますが、「この商品を見た人はこんな商品も見ています」の一覧です。
このようなレコメンデーションデータがデータフィード広告には反映されます。
では、下記にそのレコメンドエンジンに関し、触れつつご説明したいと思います。
まず1つ目、主に使われているレコメンドエンジンとして「協調フィルタリング」が挙げられます。
協調フィルタリングは、「Aというユーザーがある商品を閲覧・購入したとして、また違うBというユーザーが同じ商品を購入したとします。そしてBがそれとは別の商品を購入した時、Aもその商品を購入する可能性があるのではないか」という考え方です。
簡単に述べると、「趣味趣向が近いユーザーには同じ商品をお薦めしましょう」というロジックです。
次に商品に紐づけてレコメンドリストを生成しておくシステムです。
赤色のTシャツを見たユーザーには同じ商品の色違いを表示させる、等商品毎にルールを決めておいて商品を表示させる事が可能です。
最後に「グラフ理論」等もレコメンドエンジンには活用されています。
いくつかの点を線で結びその関係性をグラフにし、その性質を調べる理論がレコメンド商品に反映されます。ユーザーとユーザーの繋がり、ユーザーと商品の繋がり、商品と商品の繋がり、これを分析しレコメンドリストを生成するようなエンジンとなります。
このように「見た商品以外」をお薦めできるということは、マーケッターにより様々な商品の販売機会を増やせるというメリットにつながります。これが、データフィードを活用した広告の特徴です。
なぜ今必要か?データフィードを活用した施策が求められる理由
データフィード広告が注目を集め、マーケッターからの指示を受け広がりつつある理由は、圧倒的に効果が良い点と、効率性にあります。その理由を下記に記載します。
・ディプレイ広告の効果
CTRは平均で、静止バナーに比べ3〜4倍は実績として出ています。ほとんどのDSPでは膨大な配信先への配信結果からクリックやコンバージョンの実績を取得し自動で学習するシステムがあります。その学習に必要なのはデータ量であり、多ければ多い程精度の高い学習が行えます。データフィード広告の場合、まず、CTRが高い=クリック実績が多い、加えて誘導機会が多くなりコンバージョンも多くなる事で高い学習精度で配信が可能となります。
そして、閲覧商品だけではなく「カートに入れて未購入の商品」をバナーに出したり、「購入した商品」をリストから除外する等、効果効率を上げる為の方法はいくらでもあります。
ちなみに、カートに商品を留めたままサイトを離脱するユーザーは70%程度。その商品を推す事で購入に繋がる事は当社がDSPを運用している中の実績としても、明らかになっています。
・クリエイティブの自動化
データフィード広告に「クリエイティブを作成する」という概念はクリエイティブの大半が商品情報なので重要ではありません。今まで何パターンとクリエイティブを作り、クリック率が良い、コンバージョン率が良いと言った議論は省かれます。デザインを作成したりテキスト文言を考えたりする手間が省けるのも効率化の視点でかなりメリットと言えます。
・販売戦略の再現性
また、もう1つのメリットとして「売りたい商品の分散」が可能です。
例えば人材ポータルサイトには様々な求人情報が乗っています。サイト側からすると人気の高い求人(給料が高い、福利厚生が良い)等があればあまり人気がない求人もあり、満面なく求人が成功した方がより売上になる反面、はやり人気がある求人に人は寄っている問題があります。
そこでデータフィードに応募を増やしたい求人情報に重みを付け、バナーの中に反映させる事で上記の問題を解決するアクションは可能です。
データフィードの普及経緯と日本における活用の現状
データフィードという言葉は昔からありましたが、国内で広告に活用され始めたのは2012年頃からです。その活用の幅はダイナミックリターゲティングやPLA(Product Listing Ads:商品リスト広告)と急速に広がりました。国内ではリターゲティングが特に急成長を遂げていますがPLAは米国に比べまだまだこれからの状況です。
データフィードの活用先としては、具体的には下記のようなものが挙げられます。
・ディスプレイ広告・・ダイナミックリターゲティング、ダイナミックオーディエンスターゲティング
・商品リスト広告・・PLA
・ECサイト・・Amazon、ECナビ、bing、価格.com 等
・人材ポータル系・・indeed、careerjet 等
しかしながら、国内においてはマーケッターがデジタルマーケティングの施策においてこのデータフィードを活かせている場面は少ないというのが現状です。
現状、単に各配信媒体へのフォーマットとしてしか使えておらず、本来の価値で広告の運用ができていないと感じます。また、私共もそれが課題と考えております。
近年データフィードを活用する事が出来る配信媒体は増えており、後はこのデータをどのように活用していくか、が肝になってくるでしょう。
フィード広告活用の今後「コミュニケーションのリデザイン」
確かにデータフィードの活用により、マーケッターはリターゲティングやPLA等を駆使することで短期的にコンバージョン数の増加という恩恵を受けました。しかしこれはあくまでそのサイトのリピーターであったり、一度サイトに訪れたユーザーとのコミュニケーションの改善と最適化がなされたことに限られます。一方で、購入ユーザーの新規率の向上やそれに対してのROIはまだまだ見合っていないケースが殆どです。一方でまだ来訪していないユーザーのデータ分析は進んでいます。Web行動や購買履歴の活用でマーケッターがコミュニケーションを取るべきユーザー層は見えてきました。
そこに商品リストを組み合わせる事で、課題としてある新規の取り込みはより効率的に実施する事が可能であると考えています。
今後データフィードの活用は更に幅広いユーザーへのコミュニケーションツールとして使われていくことになるのは間違いないと考えています。
では、それは『なぜか』について、次回詳しくお伝えさせて頂ければと思います!
ABOUT 井上 茂樹
株式会社MicroAd DFs 取締役
1985年11月12日生まれ、奈良県出身。
2011年株式会社マイクロアド入社後、新規顧客開拓の営業に従事。
2012年クォーターMVPを2Q連続で獲得、2013年セールスリーダーに昇格。
CPA領域をメインとするグループで2年のリーダー活動中、BLADE Dynamicの立ち上げチームにジョイン。
2015年データフィード事業部の責任者として現在活動中。