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広告主とパブリッシャーを繋げて事業拡大を全面支援する「intelish」が目指すプライベートマーケットプレイス事業 <インタビュー>

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今年2月にVOYAGE GROUPと、エスワンオーインタラクティブが共同でプライベートマーケットプレイス(以降PMP)専門会社intelishを設立した。

同社代表取締役社長 小川 翔吾氏と、取締役 柏村 昌司氏に、同社設立の背景や今後の事業展開について聞いた。

 (聞き手:ExchangeWire編集長:野下 智之)

 

 

 

 

 

左 :取締役柏村 昌司氏 右:代表取締役社長小川 翔吾氏

左 :取締役 柏村 昌司氏 右:代表取締役社長 小川 翔吾氏


 
二社のノウハウを集結してintelishを設立
 

--お二人のバックグラウンドを教えてください

小川氏:私はVOYAGE GROUPのグループ会社であるadingoでSSP事業に携わってきました。役割としては当初はメディアリクルーティングを行い、その後DSPやアドネットワーク事業者とのアライアンス、そして直近ではSSPの機能開発のマネジメントをしていました。

 

柏村氏:私はコンサル会社、小売業、ブライダル業を経験した後に、広告業界に入りました。数社を経て、直近ではトレーディングデスクを運営しているエスワンオーインタラクティブでマーケティングストラテジストとして広告主の担当をしていました。

 

--VOYAGE GROUPとエスワンオーインタラクティブとが共同事業を開始することになった背景を教えてください

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小川氏:私の所属母体であるVOYAGE GROUP側からの背景を申し上げますと、元々両社のトップレベルでの交流があり、何か一緒にビジネスをできると面白いねという話をしていました。ちょうど今から1年程前に米国のカンファレンスで「PMPが実際にマーケティングの中でどのような意味合いを持って使われているのか」という話を聞き、向こうのベンダーや広告主とディスカッションをする中で、PMPの可能性や日本での展開意欲が湧いたことがきっかけになりました。

 

VOYAGE GROUPは今までパブリッシャーのマネタイズを、DSPやアドネットワークのチャネルミックスにより最大化・最適化することをミッションとして、SSP事業に取り組んできました。そしてパブリッシャーのマネタイズを更に拡大するという点において、自社でPMPという事業を絡めながら事業拡大する方法を模索し始めるようになりました。

 

VOYAGE GROUPは、元々メディア事業から始まり、現在のアドテク事業に至っています。PMPという新たな市場立ち上げにおいてスピード感を持って進める必要があると考え、既に広告主側と一緒に仕事をして、多くのノウハウを持つエスワンオーインタラクティブ社と協業させてもらうのが良いと判断しました。

 

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柏村氏:VOYAGE GROUPがサプライサイドであるのに対し、エスワンオーインタラクティブはデマンドサイドに向き合っており、トレーディングデスク事業を行っております。日々の業務の中で、PMPのような仕組みに対する広告主のニーズが高まっていることを感じ取り、これに応えることが必要であるという認識が高まりました。これを叶えるためには技術力のある会社と提携することが必要でした。また、PMPを実現するには、エスワンオーインタラクティブが普段接することがないパブリッシャーとの連携が必要となります。

そこで、エンジニアを抱え開発リソースを持ち、パブリッシャーと強力なパイプを持つVOYAGE GROUPと提携することで、お互いが補完関係になれると考えました。

両社がそれぞれ求めているものを、お互いに持っていたのです。

 

 
デマンドサイドの強いチャネルを活かして展開する、広告主側のニーズに沿ったPMP事業
 

--事業内容について概要をお聞かせください

小川氏:当社はPMP専業事業者です。ディスプレイ広告市場では、ここ数年「枠からヒトへ」という流れで市場が拡大してきました。一方で、今のRTBでの広告取引における課題も出始めてきました。広告主側からすると、広告がどのメディアに出るのかがわからず、自社のブランド価値を毀損するというリスク意識を持つようになりました。また、競合との競争の中でより自社のビジネスを大きくするための戦略を、ディスプレイ広告の出稿にどう落とし込むべきかという方法についての課題認識が出始めました。

 

一方パブリッシャー側からすると、自社メディアにどのような広告が流れるのかが分からないので、単純にRTBでの広告配信を無条件に受けるわけにはいかず、事前に配信される広告を確認したいというニーズがあります。その中で、当社は広告主側とパブリッシャー側の双方が抱える課題を解決できるようなソリューションを提供していくことを目指しています。

 

したがって、広告主側に対してはブランドセーフティーや特定メディアの優先取引などを、パブリッシャー側に対しては、そのメディアがどのような広告主から広告配信を受けているかなどを明らかにするようなサービスを提供してまいります。

 

今までのこの領域のサービスというのは、デマンドサイドとサプライサイドとに分かれていました。しかしPMPというのは、その両方に向き合ったサービスです。現状広告取引に色々なシステムが介在をすることで見えにくくなっているところを、見える化させて透明性を確保できるようになります。

 

--広告枠の買い付けはRTBで行うのですか?PMPの仕組みについてもお聞かせください。

柏村氏:はい、基本的にはRTBで取引する仕組みの提供を考えています。PMPとは、RTB取引におけるカテゴリの一つです。枠をリザベーションするのではなく、売り手と買い手をリザベーションするというのが、PMPの本質です。

 

PMPの裏側の仕組みとしては、オークションが二回開催されます。まずは、PMPに参加できる少数の買い手とメディアとの間でオークションが発生します。ここで取引が成立しなかった場合、オープンオークションにメディアの枠が流れるようになります。

 

--PMPの提供に当たり、配信側は特定のDSPを使うことになるのでしょうか?

小川氏:intelishとしては、そこはフラットに考えています。むしろ広告主側の特徴やニーズに合わせて選定することになります。

 

--サプライサイド側では、Fluctとの連携はあるのでしょうか?

小川氏:まずはFluctが持つ在庫の中から広告主が買いたい在庫を選ぶというような形になります。ただし、Fluctに限定することなく、広告主のニーズに合わせてそれ以外のパブリッシャーの在庫も対象としていきます。

 

柏村氏:一定のスケールでデジタルマーケティングに注力されてきている広告主は、メディア(配信ドメイン)のホワイトリストを独自に持たれています。当社が担保できる広告在庫は、これと合致度が高いほど良いわけです。広告主は、自身の商品・サービスと親和性が高いサイト、ブランドの安全性を担保できるサイトを、実績としてあるいは感覚的に把握しているのです。広告主が持つホワイトリストとFluctの在庫とを照らし合わせて重複する在庫が、現在当社が仲介して提供する在庫になります。

 

 
国内では二年後の普及を見込む
 

--PMPの市場環境について教えてください。現状と今後のポテンシャルについてどのようにみていますか?

柏村氏:電通さんが最初にPMP事業に注力されはじめたことが、大きな意義があると思っています。

いわゆるナショナル広告主がブランドセーフティーなどに対するニーズを持っているからこそ、広告代理店最大手の電通さんが取り組みを始めた。日本のデジタル広告市場のトレンドは、大体米国の二年遅れであるといわれています。DSPやDMPも、大体そのくらいの期間を経て日本で普及しました。したがって、PMPについても同様に二年後には普及しているのではないかと見通しています。

PMPは、現状はナショナル広告主向けの施策として使われ始めていますが、ゆくゆくは企業規模を問わず幅広い広告主層に使われていくと思います。

 

--パブリッシャーはPMPについては歓迎しているのでしょうか

Interview-intelish_image5小川氏:パブリッシャーは以前純広告の販売で広告収益を得ていましたが、今では運用型広告に市場が移り、パブリッシャーの収益もこちらがメインになりつつあります。パブリッシャー側からすると、今の収益ではメディア運営を維持していくのが厳しい状況です。

なぜなら、広告価値が「枠からヒトへ」という考え方の変化により、枠への評価がされづらくなり、結果メディア価値が下がるという事態が起こっています。このことが収益低下を招き、パブリッシャー側は営業のリソースを削減するなどの対応をせざるを得なくなりました。このままの状況が続くとコンテンツ制作に割いているコストも削減せざるを得なくなってしまいます。パブリッシャーはメディアの価値を伝えて自社の広告枠をいかにその価値に見合った価格で販売できるかという課題に直面しています。したがって、PMPという概念への興味が高いと言えます。

 

 

--広告主側とパブリッシャーとのネットワークは既に進めているのですか?

柏村氏:当社で会社設立のリリースを出してすぐに、想定もしていなかった広告主からのお問い合わせもいただきました。既に複数の広告案件の配信を行っており、またintelishのPMPに参画していただくパブリッシャーも続々と増えております。

 

小川氏:PMPをご活用いただく際にご理解いただきたいのは、PMPは魔法の杖ではないということです。PMPはあくまでも広告取引の一つの手法です。PMPを導入することで、広告主は必ずKPIを達成し、パブリッシャーは必ず広告収益が拡大するというものではありません。

当然私たちは、この概念をいかに自社のビジネスの拡大につなげていくかを考えますが、パブリッシャーや広告主にもしっかりと取り組んでいただく必要があります。

 

柏村氏:PMP単体で何かが達成するというものではありません。色々なマーケティング・プロモーション施策の一つとして組み込まれているものであると考えています。そのことを前提として、大いに期待していただければと考えております。

 

 
他社との違いは専業であるからこそ出来る多くのノウハウ蓄積とスピード感
 

--他社のPMPとどのように差別化されていくつもりですか?

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小川氏:大きくは二つあると思います。一つ目は、当社はPMP専業としてこの事業に特化していくという点です。この領域に特化することでこそ、他社より多くのノウハウを蓄積していくことが出来、差別化につなげることが出来ると考えています。

そして二つ目は、今回合弁会社として設立した当社は、DSPサイドとSSPサイドの両方のノウハウを持っているという点です。先ほども申しましたが、PMPは魔法の杖ではありません。これをどのように使っていくかということは、広告主、パブリッシャー双方にとり重要になります。当社はこの運用に関する機能を両者に提供することが出来ます。

 

柏村氏:PMPという事業は片手間ではできないと考えております。だからこそ二社合弁で専業会社を作りました。恐らく現状国内でここまでの注力をしている事業者は当社のみです。当社のPMPにかける注力度合いが、既に差別化されています。

今後、当社は他社に先んじで、課題にぶつかり、そしてそれを乗り越えていくことになると思います。そしてそれはノウハウとなり、弊社の強みになっていきます。

 

--想定している広告主側、パブリッシャー側のターゲット層について教えてください

柏村氏:広告主側では、ブランディングを目的とする企業や、新規顧客を獲得したい企業などを想定しています。

パブリッシャー側については、広告主側のニーズに合わせてターゲットを設定することになります。どの枠がプレミアム枠であるかは、広告主の考えにより変わります。

ゲーム会社と金融会社とでは明らかにターゲットが異なるわけで、各々の会社にとってのプレミアム枠もまた異なります。枠を囲っていくのは、広告主のニーズを聞いてからになります。

 

 

--今後の事業の方向性と戦略についてお教えください

小川氏:企業のマーケティング活動を、ブランディング、ダイレクトレスポンスと分ける考え方もありますが、私個人としては、そこに大きな違いはないと認識しています。

マーケティングの目的とは、企業の商品やサービスの情報を消費者に届け、その企業の事業を拡大することです。商品を買った、買わないという結果は、分かりやすい評価指標の一つですが、自動車などのように商材の特性によってすぐに結果が出ないものもあります。したがって、ここにブランディングというワンクッションが介在するのです。

 

いずれにせよ、マーケティングのゴールは一つです。当社のPMP事業の命題は、広告主の事業を大きくすることにいかに関わることが出来るのかということです。

まずは、エスワンオーインタラクティブがすでに取引している広告主をはじめ、様々な広告主のニーズを聞きながら、当社が出来ることのなかでどのような解決策が提案できるかということが、ファーストステップになります。当然取り組んでいく中で、様々な可能性や要望が出てくるので、これを機能として実装していきたいと考えています。

(編集:三橋 ゆか里)

 

 

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。