Googleが仕掛けるモバイルゲーム会社向けの新しいエコシステム
3月2日、Googleが開催したGame Developers Conferenceで、同社がアプリゲームデベロッパー向けに二つの新しいツールの提供を開始することが明らかになった。
ゲーム会社向けの解析ツールPlayer Analytics
一つ目のツールは、Player Analytics、いわばアプリゲームデベロッパーのGoogle Analyticsである。
Player Analyticsは、GooglePlay用のアプリ開発者向けツールGoogle Developer Console上で数週間以内に提供を開始する予定。アプリゲームデベロッパーは、ゲームをプレイするユーザーの詳細な行動分析やレポート作成が可能となる。具体的には、ユーザーのゲーム進行状況や課金行動、ARPPUや1ユーザーあたりのセッション数など、ゲームの運用に重要なKPIの計測、またデイリーの収入目標設定やその進捗管理などが可能となる模様である。
AdMobが提供する新しい収益機会
二つ目のツールは、AdMob Platform上で提供される3つの広告オプションである。
一つはNative Ads、すなわちゲーム内ネイティブ広告フォーマットである。
<Atari社によるネイティブ広告の事例>
二つ目は、ベータ版として提供されるIn-App Purchase House Ads 。これはゲームデベロッパー自身がゲーム内でユーザーのアイテム購入を促進するためのプロモーションツール。AdMobが予測するユーザーの課金行動特性に合わせて、表示する広告クリエイティブのカスタマイズが可能で、テキストやビジュアルなどでユーザーごとに様々なメッセージを出し分けることが可能となる。
そして三つ目が、Audience Builder。これは、ユーザーのゲームの遊び方に応じて、ゲームデベロッパーがユーザーリストを作成できる機能。この機能を活用することで、ゲームデベロッパーは、ユーザーごとにゲーム体験をカスタマイズ提供できるようになる。
エコシステムの構築によりアプリ領域での巻き返しを図るGoogle
米国市場はもとより、おそらくは世界のモバイル広告市場シェアNo.1のGoogleだが、圧倒的な強さを持つのは、検索連動型広告やWebブラウザ向け広告の領域だ。それと比べると、アプリのディスプレイ広告領域ではFacebookや、アプリプロモーション支援に特化したグローバルアドネットワーク、また日本を含む各地域のローカルアドネットワークなどの競合がひしめく中で、確たる優位性を保ててはいなかった。
<米国モバイル広告市場事業者別シェア>
モバイル広告全体シェア | モバイルディスプレイ広告シェア |
出典:eMarketer |
また、これまでモバイルへの対応が遅れていたYahoo! Incは、2014年以降にネイティブ広告をリリースし、アプリ向けの広告プロダクトを拡充した。今年2月には、昨年8月に買収したアプリ解析ツールFlurryをベースとした解析ツールや広告マネタイズ機能、マーケティング機能をアプリデベロッパー向けに提供するなど、Googleと同様にアプリデベロッパーの囲い込み施策を進めている。
Googleは先日、アプリストアGooglePlay上でのアプリ検索広告をリリースするなどアプリ領域での広告ビジネスに注力しており、今後の巻き返しが期待される。
<GooglePlayに導入されるアプリ検索広告>
(編集:三橋 ゆか里)
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。