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老舗AudienceScienceのダウンサイジングにみるDMPの行く末

日本のアドテク業界でAudienceScience 社(以下ASI)の日本市場撤退の情報が行き交っている。DMPの入門書が 今年発売され、国内ベンダーや海外ベンダーもこぞってDMPの機能をリリースするなど、日本における「DMP元年」とも言える今、なぜ老舗のASIが苦しい状況に追い込まれているのか。ASIのみならず、DMP市場全体にかげりが見え始めているのか、その背景について調べてみた。

(ライター:ExchangeWire編集長 大山忍)

 

 

 まずは、ASI社の日本撤退の真偽についてAudienceScience社のChief Revenue Officer / VP InternationalであるMark Connolly氏から回答を得ることができた。

 

 

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Q: 日本では今年DMPの認知が広まり、導入企業が増えるなどホット・トピックでした。AudienceScienceは日本で歴史のあるDMPベンダーですが、このタイミングで日本撤退はありえるのでしょうか?

 Mark-ConnollyA: AudienceScienceは、日本市場から撤退しません。先日発表したグローバル展開とそのサポートを実現するための組織変更の一環として、インターナショナルのリソースをヨーロッパへ集中することになり、結果、日本オフィスのスタッフを削減しました。

 

 

Q: 日本の既存クライアントへのサポート体制を具体的に教えてください。

A: 日本のクライアントへのサポートレベルに変更はありません。パブリッシャー向けのテクニカルサポートとアカウントマネジメントサービスについては、 2013年末までは日本で、それ以降はUKとドイツで行います。グローバルでサポートすることにより、日本のクライアントにより幅広い知見を提供すること ができるようになります。DMPとDSPのシングルプラットフォームであるフルサービスのエンタープライズ・ソリューションのクライアントに関しては、引き続き日本でサポートします。

 最近のこうした変化は、弊社クライアントへのコミットメントをより強固にし、グローバルクライアントをベースとした顧客への無双のサポートで弊社が飛躍の時期を迎えていることを表しています。

 弊社はデジタル領域のターゲティング広告、その規模、マルチチャネルとプラットフォームを横断した分析におけるリーディングカンパニーとして、今後も投資と開発を進めていく所存です。

 

 

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ASIは日本市場を完全撤退するのではなく、本社の戦略変更による日本オフィスの縮小ということのようだ。実はASIは2012末にアドネットワークビジネスを閉鎖し、リストラ・組織の再編成を行ってきた。今年は新たにDSP事業へ参入し、テクノロジー・プラットフォームを提供する技術会社への転換を図っている。

 

アカウント・技術サポートが海外に移行されることに伴い、フルサポートで契約している大手企業や一部のアカウントを除いて、DMP単体として活用していた企業との契約は今年末で終了し、日本におけるビジネスのアカウントは残しつつ、オペレーションは最小限にとどめたと言える。

 

日本市場の有識者は、今回のASI事業縮小をどうみているのか。ASIを活用してDMPビジネスを牽引してきたオムニバス代表取締役CEO 山本 章悟氏にコメントをいただいた。

 

MrYamamoto

「もともとASIという会社はレベニューサイエンスという会社名で、2004年〜2005年頃に日本に参入してきたと記憶しています。当時はオーディエンスターゲティングという言葉すらなかった。

 

ビ ヘイビアルターゲティングというキーワードでもって、ユーザーの行動ベースのターゲティングの必要性をマーケットに提唱をした数少ない会社の一つでした。 そんな彼らによる日本のマーケットへの最大の貢献は広告枠でもなく、調査会社から提供されるユーザーのデモグラフィック情報でもない。ユーザーの実際の行動に合わせて広告をダイナミックに切り替えるという全く新しい「考え方」であったと思います。

 

この考え方は、現在注目を浴びているDSP、DMPなどのアドテクノロジーに受け継がれており、市場牽引に欠かせない要素であった。そんな草の根的な企業であるASIが、オーディエンスデーターの必要性が叫ばれ始めたこのタイミングで縮小するというニュースには正直驚きました。長い間協業を行ってきた パートナーとしては非常に残念でとても寂しく感じています。

 

ASI社にはこれまでOmnibus社のオーディエンスターゲティングのサービスを支えていただいたことに謝辞を表したいと思います。また今後Omnibus社としては、アトリビューション解析システムとして構築したpandoraの機能を拡張することでDMPとして提供していく予定です。ASI社が日本市場にもたらしたオーディエンスターゲティングの火を絶やさぬように受け継いでいきたいと考えています。」

 

今回のASIの状況は、デジタルの広告業界が、枠売りから個へのターゲティング、プログラマティック(データにもとづくシステムの自動化)への市場のニーズの変化にともなう、グローバル戦略の転換、投資の再配分を行うための一時的なダウンサイジングと言える。

DMP の市場はまだまだ拡大を続けることが見込まれる。日本にも次々と国内外の参入ベンダーが増え、データによる付加価値のある機能・サービスがリリースされ、 日本のアドテク市場はレッドオーシャンと化してしている。ASIの日本市場への再挑戦は吉とでるか、凶とでるか。今後の動向に注目したい。

 

 

ABOUT 大山 忍

大山 忍

ExchangeWire Japan 編集長

米国大学卒業。外資系企業を経て2000年にネット広告効果測定ツールを提供するベンチャーに創業メンバーとして参画。その後、バリューコマース株式会社と合併。
2007年1月にオムニチュア株式会社(現Adobe)に参加、コンサルティングサービスを立ち上げる。ビジネスコンサルタントとして米国のベスト プラクティスを日本の課題やニーズに合わせて提供、ウェブ解析やガバナンス(データ主導の組織・仕組化)に関する執筆・講演を行う。