動画広告をより加速させる動画DSPの活用メリットについて |WireColumn
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on 2013年12月13日 inこんにちは、DAC齋藤司です。前回までのコラムで、動画サイトの広告の中でも特にプレロール広告は今までのウェブ広告以上の「認知効果・態度変容効果」があり、TVCMとの親和性も高いため、一緒にプランニングしていく事も可能であるという事をお話ししました。今回は、2013年に入り日本にも登場してきた動画DSPが、どういった点で広告主、広告会社、媒体社にメリットがあるのか?といった事を、DACが2013年2月よりサービスを提供しているTubeMogulの機能を中心にお話できればと思います。基本的にはAdap.TVさんやいつもこのページの右横にスポンサー掲載されているVideologyさんも同様の事が可能とお考えいただければと思います。
動画DSPがもたらす可能性
私は動画広告に関して一歩先を行っているアメリカで、躍進している動画DSPが日本の動画広告にもたらす可能性として、いくつかある日本の動画広告課題を解決し、さらに拡大に向かわせてくれるのではと期待しています。そのいくつかをお話しできればと思います。
まず、動画DSPと動画広告の純広告との違いですが、一般的なディスプレイのDSPと純広告の違いと同じで、基本的に配信数を予約し、掲載を保証しているのが純広告となり、掲載面としては純広告用にはファーストビューや、大型枠等プレミアム枠と呼ばれる設定をしているケースが多いかと思います。
動画広告の場合も同様で、純広告用にはプロの制作者が作ったコンテンツの前にプレロール広告を用意する、長尺のコンテンツに配信する等、媒体社側でも、純広告には若干特別感のある設定を行っている場合があります。
一方で、動画DSPにも大きなメリットがあります。テクノロジーを活用する事で、多くの動画広告を媒体横断し、目的によって多様な配信ができ、多様な指標を用いて一元的に評価できるというのが大きなメリットではないかと思います。
・多様なターゲティング
単一媒体社での純広告メニューとしては、在庫が確保できずなかなか成立しなかったエリアターゲティングの広告メニューや、時間帯配信のメニューは複数媒体を横断して掲載可能であり、また多様な配信が可能な動画DSPのメリットといえるかと思います。動画広告のエリアターゲティング(都道府県毎)、時間帯配信は、TVCMを扱われている広告会社さんにも好評で、スポットを掲載している時間と同じ時間帯にプレロール広告を配信する事で、TVCMで到達しているユーザーとは別のユーザーに到達するのでは?という仮説を立てられてプランニングをされるケースも出てきています。
また、動画広告を最後まで見た人には、次からは違う動画広告を見せるといったリターゲティングの技術を使った配信も可能です。最初はイメージ訴求の動画で、2回目以降は機能訴求といったストーリー性を持たせた出稿ができます。
もちろん、DSPなので各種DMPとの連携も可能で、純広告にはないオリジナルターゲティング配信も可能になります。
・プレロール広告枠在庫の拡大 (日本IPアドレス配信)
まだまだ日本のプレロール広告枠は在庫が少ないと言われています。実は動画コンテンツの配信数としては相当な媒体数やコンテンツの配信数はあるのですが、課金のみで収入を得ている媒体社が現状では多く、まだまだプレロール広告配信している媒体はYouTube、GyaO、Ustreamといったところに限られています。
この状況をTubeMogul等の動画DSPを活用する事で、国内外の中規模や小規模の動画サイトや、新聞社やニュースサイトなどの中に存在する動画コンテンツにも動画SSPを通じてプレロール広告を配信する事ができ、海外メディアの日本IPアドレス配信を含めるとリーチ、配信可能在庫共に相当拡大し、広告主にとって効果的な活用可能になると考えられます。
※もちろん、海外の媒体に配信したいかどうか?といった広告主の嗜好や、動画広告そのものの権利処理の課題は残ります。動画DSPによっては配信先、サイトを明らかにしていないものあります。「見せる」事を重視、目的としている動画広告においては特に重要な課題になると考えられ、確認しながら進める必要があります。
・複数媒体を横断で計測したリーチプランニング
動画DSPでは、配信についてもDSP事業者が行う為、複数媒体を横断した計測が可能になり、第3者配信と同様にサイト毎でも同一指標で評価が可能となります。媒体横断の指標としては重複を除いたUB数(ユニークブラウザ数)と、それに紐づく平均フリークエンシーが分かり、impベースだけではなく、どれだけの人に平均何回配信するかというリーチ×フリークエンシープランニングができる事になります。また平均ではなく、実際に何回だけ当てるといったフリークエンシーキャップをかけての配信も可能になります。(図1)
UB数については、現状の単一媒体の純広告では、レポート項目として出している媒体社はほとんどなく、TVCM等のリーチを意識してのプランニングや、評価をする際の障害の一因となっていました。今後は動画DSPや第3者配信等を使って、リーチプランニングが広がっていく事が予想されます。
(図1)
また、前回お話ししたプレロール広告の広告認知率のデータが増えてノーム値化していけば、広告認知率も リーチ×平均フリークエンシーのプラン上で想定や予測できるようになるかと思われます。
・動画広告におけるPDCAプランニングも可能に
ま た、動画DSPのレポートでは、動画広告のキャンペーンが効果的であったかを様々な指標でみる事ができます。もちろん一部のディスプレイDSPや、第3者 配信で使われている指標も使えます。クリック、コンバージョン、ポストインプレッション(ビュー・スルー・インプレッション)が分かりますので、動画広告 であってもウェブ上での獲得を目的とした案件に直接的、間接的にどれだけ貢献したかといった効果を確認する事が可能です。
ただ、今までお話ししてきたように、動画広告にはクリックやウェブ上でのコンバージョンだけではない、広告認知効果から態度変容効果(商品認知、購買利用意向のUP)をさせる効果があります。
その広告認知や態度変容に相関がある、動画広告をどれくらいみたか?という指標を取る事ができるのが、動画DSPの非常に優れた特徴になるのではと思います。(図2)
その主な指標としては、配信した動画広告がどれくらいの割合で最後まで見られるのか?といった動画広告視聴完了率や、平均動画広告視聴時間(秒)、また、視聴時間を足しあげた動画広告総視聴時間や、より厳しくみていく視聴完了ベースでの動画広告総視聴時間があります。
(図2)
例えば、こちらは動画広告の視聴完了率ですが、一般的にスキップボタンのないプレロール広告はほぼ強制視聴されると思われますが、ユーザーによってはリロード等をかけるユーザーもわずかではありますがいますし、動画プレイヤーのサイズが小さく、他のコンテンツも併載されるようなケースも一部ではありますが存在します。そういったケースでは多少動画視聴完了率が下がってしまう事もあるようです。基本的には通常の大型動画プレイヤーでのプリロール広告枠では8割以上は視聴完了に至るので、それを基準に、サイトの掲載コンテンツ内容を鑑み、今後のPDCAを考える広告主も出てきています。
次に平均動画広告視聴時間ですが、この想定ケースでは15秒の動画広告素材がどれくらいの時間見られているかが分かります。動画広告視聴完了率と平均動画広告視聴時間は傾向として、同じ傾向を示す事が多くなっています。
また、動画広告総視聴時間と視聴完了ベースの動画広告総視聴時間に関しては、この図2の場合は15秒の動画広告素材を実際、どれくらいの時間見せたのか?といった数値になります。視聴完了ベースは15秒の動画広告を最後まで完結して見せたもののみの足しあげになります。特にTVCMと同様の素材を掲載される広告主の中には、「TVCMは最後まで見る、見られる、見せるように作られている」との事で、この完了ベースの総視聴時間の指標に注目し、「CMは15秒通じてのストーリー展開でできているので最後まで見てもらったもののみを評価したい」というケースも出てきています。逆ウェブ独自での動画広告展開の場合は、すべてを見られないことを前提に、ロゴを常に表示したウェブ用の動画広告を作っている場合もあり、この場合は「動画広告総視聴時間」で判断するというケースもありました。
・動画DSPでの運用について
ブランドリフト(広告認知・商品知名のUP等)をKPIとする広告主の場合
① まずは大きくリーチをとり、できるだけ多くの媒体、デバイスに掲載
② 動画広告視聴完了率が高く、平均動画広告視聴時間の長いサイトに掲載を継続
③ 多くの総広告視聴時間を獲得し、認知効果や態度変容を狙う。
※オプションとして
動画DSPで調査バナーを掲載し、認知効果、商品知名、利用意向を調査(インバナーサーベイ調査) といった運用になるケースが多くなっています。
インバナーサーベイ調査について
こちらは、動画広告のアドフォーマットの優れた特徴である認知効果や、態度変容効果を簡易的に知ることができます。実施したプランにおける「動画広告視聴時間や、ユーザーに対するフリークエンシー」が「どのくらい広告認知・商品認知・利用意向を上げることができたか?」を把握していくことが可能です。
動画広告を掲載したユーザーに対し、インバナー上でアンケートバナーを掲載し、その回答を得るというものです。これを、動画広告を掲載していないユーザーの回答を比べ、どれくらいブランドがリフトされたのかを調査します。
海外の事例になりますが、下記、(図3)を見ていただければと思います。ジャマイカ観光局が動画広告を実施し、その効果としてジャマイカへの旅行意向がどれくらい上がったかを他のカリブ海の国との比較で見たものになります。バルバドス、キューバ、ドミニカと比べて旅行意向が大きく上がっているのがわかります。また、出稿した広告主はリーチ・平均フリークエンシーがわかっていますからどれくらいの配信数を動画広告で掲載する事で、どのくらいのブランドリフトを実現できるか、という目安のひとつになっていくかと思います。
(図3)
動画SSPに参画する媒体社のメリット
動画広告(プリロール広告)の純広告をセールスする際の最も大きな課題として、先述の在庫が少ないという点に加えて、リーチが少ない事があります。特に規模が小さいサイトで、在庫も少なく、リーチもない状況ではターゲティングもできませんし、動画コンテンツとの関連性がよっぽど強くないとセールスが成立しないと考えられます。しかし、動画DSPでは他の多くの媒体を横断して購入が行われるため、在庫の懸念も少なくなり、またリーチも大きくとっていく事が可能になります。動画DSPの多くはCPM課金で売買が行われているので、複数媒体を横断したセールスでも安く売買されるリスクはなく、むしろ販売機会が大きくなります。また、それに基づいて動画SSPもCPMで売買が行われ、高い単価での媒体社への戻しが可能になっています。先述のように動画広告視聴完了率が高いサイトは優先的に売買されるので、単価も上昇しますし、特にプロの製作者が作った映像・動画コンテンツに掲載されるプリロール広告は広告主も安心して購入でき、かつ動画広告視聴完了率も高い事から高単価で売買されています。コンテンツメディア様にはお勧めの広告マネタイズ方法といえますので、是非動画広告にトライしていただければと思います。動画SSPは媒体の規模を問わず、動画事業者の広告マネタイズを、サポートする事ができると考えています。
もし、ご興味のある媒体社様がいらっしゃいましたら、DAC、プラットフォーム・ワン社までご連絡ください。
今回は、動画DSPにより進化していく動画広告についてお話しました。次回は今後の動画広告についてお話しできればと思います。よろしくお願いいたします。
ABOUT 齋藤 司
株式会社トーチライト マーケティング ディレクター
ラジオ、TVの放送作家を経て
2000年、雑誌をメインとした、広告代理店に入社。
アパレル、衛生機器メーカー等を担当し、2003年11月DACに入社。
メディア開発部等を経て2004年関西支社へ転勤。
広告会社に常駐し、インターネット広告の啓蒙、販売を行う。
2008年DAC本社にて開発・業推部マネージャー等を経て、
現在は第3メディア部マネージャーとして、ソーシャルメディア、動画を担当。
2013年10月より株式会社トーチライト出向によりマーケティングマネージャーとしてソーシャルメディアの啓蒙活動も行っている。
※2014年2月時点
趣味は、落語、演劇鑑賞、ゴルフ等々