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実は独身男性の心をつかんでいた? 3種のDMPを組み合わせて知る顧客像 |WireColumn

前回お話した、DMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)を導入するのに重要な3つのこと。これに取り組んだ結果、結局何が実現するのでしょうか? DMPは収集したデータからアクションを起こすためのツールです、ともお話しました。今回は DMPで収集したデータから何が得られて、どのようなアクションを起こすことができるのか、事例を交えてお話します。

 

 

 

 

DMP、パブリッシャーDMP、プライベートDMPの存在

 

DMPっていろんな種類がありませんか…?このような問い合わせをいただくことがあります。

米国では、DMPベンダーがウェブサイトからオーディエンスデータを収集してセグメント化し、それをパブリッシャーや企業へ販売しています。米国で始まったこのトレンドがとても印象的だったのか、日本ではオーディエンスデータを収集販売することがDMP、と認識されていた時期がありました。

 

現在日本では、DMPが主に3種類で表現されていますが、これらはいずれも同じく、データマネジメントをするプラットフォーム(DMP)を利用したもので、テクノロジー的には何も違いはありません。誰がオーナーシップを持ってデータを収集し、何のために、どのように活用するかの違いのみです

 

以下に3種類の利用方法を説明していきますが、日本市場で提供されているDMP製品の中で、これら3つの利用ができる製品もありますし、いずれかに特化した製品もありますので、ぜひ自社でどのようにオーディエンスデータを利用したいかイメージしながら読み進めてみてください。

 

 

■DMP(3rd Party DMP)

DMPベンダーや広告代理店が、DMPを利用してウェブサイトからデータを収集しセグメント化したものを広告用に販売するものです。複数のサイトをマージして同じ特徴や行動をしたオーディエンスをセグメント化するため、セグメントごとのオーディエンスの多さと、セグメント種類の豊富さが最大のメリットで、プライベートDMPのデータ不足を補います。データ販売を目的としたDMP活用は日本でも数年前から始まっており、DMP(これ以降便宜上 3rd Party DMPと表記)と表現されています。

 

■パブリッシャー向けDMP

日本で5年ほど前から利用されている歴史のある利用法で、メディアや自社サイトに広告枠を持っているパブリッシャーが、自社サイトのオーディエンスをセグメント単位で販売するターゲット広告に利用されています。"枠から人へ" の原点と言えるもので、サイト内の行動とオーディエンスの属性を織り交ぜたセグメントを作成できるのが最大のメリットです。広告主はターゲットオーディエンスに効率的にリーチでき、パブリッシャーは枠売りよりも高単価で販売できるため両者にメリットのある方法です。パブリッシャー向けDMPと表現されています。

 

■プライベートDMP

2013年に注目を浴びるようになった、企業が自社でオーディエンスを管理してマーケティング活動に利用する方法です。

自社の定義でオーディエンスをセグメント化できるので、自社キャンペーンに接触したオーディエンスの態度変容に合わせたセグメントなど、3rd Party DMPやパブリッシャーの汎用的なセグメントでは追いきれない、細やかなオーディエンスとのコミュニケーションを自社で造り出せるのが最大のメリットです。自社でDMPを持つ(管理する)ことからプライベートDMPと表現されています。

 

広告主が目的に沿って上記3種類のいずれかを選択するか、または組み合わせて活用することになります。

 

 

自社データは少ないし、

かといって3rd Partyデータはクオリティが心配

 

プライベートDMPを持ってみたものの、セグメント化してみたらセグメントに数万人しかなかった、あるいは100万人中60万人しかセグメント条件にマッチしなかった、というボリューム不足は多くの企業が抱える課題です。

また自社サイトにログインする仕組みがないなどの理由で、オーディエンスの属性が取得できないとサイト内行動履歴のみとなり、オーディエンスターゲティングするつもりが行動ターゲティングになっていた、ということも起こり得ます。

 

この懸念へは、3つのDMPを組み合わせてデータを最大限に活用するアプローチが考えられます。

 

自社データをメインに、3rd Partyデータを効果的に活用

プライベードDMPで管理する自社データは、一度でも自社サイトを訪問してくれた大切な(潜在)顧客です。

このデータがどんな顧客であるのか知りたい!でも、自社には行動履歴しかない。

一方で3rd Party DMPは、ポイントサイト、会員制口コミサイト、旅行サイトなどと提携していると、性別・年齢・購入製品・居住地域・興味対象など、属性情報を豊富に持っていることがあります。

 

そこで豊富な属性を持っている3rd Party DMPのデータを自社データにオーバーレイさせて、3rd Partyデータが持っている属性から自社データの属性を把握することができます。(cookieでオーディエンス情報を認識するため、プライベートDMPと3rd Party DMPは同じ製品または同一のcookie利用が必要です)

 

例えば家電メーカーが、プライベートDMPを導入して自社データを持っているとします。このメーカーのウェブサイトはカタログサイトのためログイン機能がなくオーディエンスの属性が分かりません。

そこでテレビとステレオを担当するブランドマネージャーは3rd Partyデータをオーバーレイさせて、それぞれのカタログ閲覧者の属性情報を把握することにしました。

するとテレビ閲覧者は、日用品の購入や行楽行事の下調べなど子育て中の父親と思われる属性が多く、ステレオ閲覧者はシニア向け高級車や閑散期に海外旅行をするなど、リタイア生活を楽しむシニア層が多いことがわかりました。

 

このように 3rd Partyデータはセグメントをパネルとしても利用できますので、上記の例でブランドマネージャーは、ステレオのキャンペーンに3rd Partyやパブリッシャーのセグメントから高級車・海外旅行・シニアを対象にすることが考えられます。

 

DMPはオーディエンスデータをマネジメントするプラットフォームですので、どれかだけを選択するのではなく、それぞれのデータを柔軟に組み合わせて最大限に活用していただけると幸いです。

 

 

若い独身男性の心をつかんでしまった

 

ひとたびオーディエンスを管理し始めると、ブランドマネージャーは限られた予算を無駄なく効率的に利用したいと、対象オーディエンスを絞って念入りにキャンペーンのプランをされると思います。

しかしその結果得られるものは、対象オーディエンスから期待した反応があったか無かったかのみで、これと言ったインテリジェンスを得られなかったという経験はないでしょうか?

 

そこでオーディエンスデータを利用したキャンペーンを行う際は、まず全てのセグメントを対象として広告配信を行い、セグメントごとの反応結果を分析することを勧めしています。

 

ここに全セグメントに広告を配信したキャンペーンの事例をご紹介します。

 

お掃除用品メーカーが、子育てママの応援製品として片手で簡単に床掃除ができる新製品のキャンペーンを実施しました。キャンペーンの要項は次の通りです。

キャンペーン要項

対象顧客を、“お子様をお持ちの20〜30代の女性“としていますが、キャンペーンの初回配信では、このメーカーが持っている全てのセグメントに広告を配信しました。

その目的は以下の2点です。

① 仮説検証:対象顧客としたセグメント層が反応しているかを検証

② 異常値分析:そんなはずはない、というセグメントに反応がないか分析

 

キャンペーンを実施してセグメントの反応を検証分析したところ、以下のような結果が現れました。

 

セグメント

 

仮説通り20代と30代のお子様をお持ちの女性が、キャンペーンに反応していることが検証されました。(反応の定義は、クリックやコンバージョンなどです)

一方で興味深い異常値が見つかりました。子育てママを応援するお掃除用品にも関わらず、思いがけず20代の独身男性の心を掴んだのでした。

 

掃除機を出すのが面倒、またはそれほどお掃除範囲が広くないなどの理由が考えられますが、この異常値は全てのセグメントに配信をしていなければ見つけられなかった、嬉しい発見です。

 

ブランドマネージャーは、20代男性を対象とした部屋に置いても違和感のない黒や濃紺色のバージョンを開発するのも、男性の身長に合わせて柄の長い製品を開発するのもよいでしょう。

20代独身男性をこの製品の新たな対象顧客として、専用のクリエイティブとメッセージでキャンペーンを実施するのもいいでしょう。

 

ネット広告の単価はテレビCMと比較すると格段に安価ですので、まずは間口を広げることで新たな発見に出会う機会を創出していただきたいです。全セグメント配信という僅かな広告費を使うことによって、製品開発やメッセージングが、テレビCMや店頭のポップに渡るまで広く影響を与えることにもなります。

 

プライベートDMPで自社データだけを分析しても発見は多くないかもしれません。しかし 3rd Party DMPをパネルに利用したり、3rd Partyデータやパブリッシャーのセグメントに配信したり、その結果をプライベードDMPで分析することによって、異常値(嬉しい発見)を見つけられることがあります。

小さな数字だから誤差だと切り捨ててしまわずに、この宝物をひとつずつ丁寧に拾っていただき、わくわくするものを世に産み出していただければ幸いです。

 

ABOUT 川角 保子

川角 保子

オーバーチュア株式会社、シーネットネットワークスジャパン株式会社、アドビ システムズ 株式会社、AudienceScience Japan株式会社に於いて、ビジネスディベロップメント、ウェブマーケティング、プロダクトマーケティング、フィールドマーケティングに従事。マーケティングとプロダクトに寄り添うBtoBテックベンダークラスター。猫をこよなく愛す。