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より精緻なターゲティングや効果測定が可能なオンラインビデオ広告の実例 [イベントレポート]

(ライター:柏木 恵子)

10月11日に開催されたTubeMogul主催の「オンラインブランドキャンペーン実践セミナー」から、オムニバスの代表取締役CEOである山本章悟氏の講演概要を紹介する。オムニバスはアドテクノロジー専門会社として、当初バナー配信を中心に事業展開。しかし、昨年TubeMogulを見て熱狂し、今年に入ってTubeMogul Japanと業務資本提携している。また、媒体社向けオンラインビデオ広告専門SSP「OVX」を10月にリリースしている。

 

 

 

 

現在、インターネット世界は情報で溢れ、消費者は多様なメディアやツールでさまざまな広告に接触している。その分、広告主が伝えたい情報を確実に伝えること、そして消費者が得たい情報を確実に得ることが難しい。従来のインターネット広告は、テキストや画像など、スタティックなものがメインだった。しかし、今それがビデオにシフトしてきている。動画や音声によって、商品の良さをダイナミックに消費者に伝える事ができるようになってきた。

またOnline video広告とインターネット広告ならではの手法であるオーディエンスターゲティングを使用する事により、情報量の増大により広告メッセージを受け取りにくくなった消費者に対して興味関心に沿った広告を表現力の高いVideo広告を用いて訴求する事ができるようになった。その結果これまでインターネット広告でのブランディングキャンペーンに積極的ではなかったナショナルクライアントも注目し始めた。

 

 

オンラインビデオ広告市場拡大のための課題

 

オンラインビデオ広告市場が今後さらに広がるための課題に、山本氏はリーチ、より精緻なターゲティング、効果指標の3つを挙げた。リーチについては、米国のユーザーが主にプレミアムサイトを利用し、既にマネタイズの仕組みが整っているのに対して、日本は約6,000万人という動画サイト滞在者がいるにも関わらず、動画共有シェアリング系のサービスを利用しているケースが多く、企業や媒体社が提供しているサービスが少ないため広告市場としては機会損失している。

 

オムニバスでは、デマンドサイドのTubeMogulにサプライサイドのOVXというテクノロジーを組み合わせている。広告主向けサービスだけでなく、媒体社向けにビデオ広告を配信するというもので、日本の媒体にビデオ広告が普及することが期待される。媒体の持つコンテンツをマネタイズすることが可能になり、それをビデオ制作の原資にするという良いサイクルにしたいと話す。

 図1_Video-Ad-Space専用のSSP

 

 

精緻なターゲティング

 

情報が氾濫している中で、ユーザーは見たいものだけを見るようになっている。興味のない人に広告を配信しても、それを見てもらうことはできない。そのため、ユーザーのモチベーションや置かれている状況の把握が大変重要となる。オムニバスは、3年ほど前よりオーディエンスターゲティングに取り組んでいる。Omnibus Audience Networkは、大量に保有するCookieデータをカテゴリー化するもので、これによって興味のある人にだけ配信することが可能になる。

 

 Omnibus-Audience-Networ

 

 

また、同様のタグを広告主のサイトに導入することで、ユーザープロフィールの更なる分析にも取り組む。単純なカテゴリーターゲティングだけでなく、より深いレベルでユーザーを知り、それは作るクリエイティブのイメージにもつながる。

 

Omnibus Audience Networkと連携するTubeMogulでは、ユーザーのことを深く知り、そこに向けてディープなメッセージを配信できる。非常に高度なターゲティング機能を持っており、さまざまなパーソナライズが可能だ。例えば、管理画面上でサイト別や時間帯別、エリア別に配信を簡単にコントロールできる他、Cookieを使ったリターゲティングも可能。

 

ビデオ視聴前後の効果測定も

 

効果測定についても、TubeMogulはさまざまな機能を備えている。広告の目的のひとつは、ブランド認知などの態度変容だ。これまではテレビCMがその役割を担っていたが、最近ではオンラインビデオで態度変容の計測が可能になってきた。TubeMogulは、動画の再生時間や再生率など定量的な指標を測定できる他、アンケートバナーの配信機能も備えている。これにより、動画を見る前と後のブランド認知度の変化などを調べることもできる。

 

 定量的な指標

 

 

マクロミルと連携し、より精緻なデータを取得

 

オムニバスでは、マクロミルと連携し、より精緻なデータを出す取り組みもしている。オンライン調査会社のマクロミルは、日本中に約100万人のシングルソースパネルを持つ。オムニバスは、性別、年齢、子どもの数、居住地域、年収、趣味嗜好などの100万人分のデータを含むこのパネルとTubeMogulとの連携を行っている。ビデオ広告の配信者に対してマクロミルのCookieを配布すると、1〜2%はマクロミルのパネルとマッチする。そのパネルを拡大推計することで、そのビデオを見た人の属性を知ることができる仕組みだ。

 定性的な効果指標

 

 

属性を明らかにするだけでなく、ビデオを見た人に対して追跡でアンケートを行い、態度変容があったか、商品を買ったかといったレポートも取れる。態度変容の定性的な情報をここまで取得できる仕組みはこれまでなかった。現在、この仕組みは実装段階にある。

 

山本氏が、将来的に実装したい機能として挙げたのは、オンラインGRPだ。TubeMogulの管理画面には、オンラインビデオ広告をGRPベースで購入できる画面があり、米国では既にそれが活用されているという。まだデータがない日本では実現できないが、将来的にはこれまでテレビでしか使われてこなかったGRPの指標を使ってオンラインビデオバイイングを実現したいという。

 

 

O2Oにも広がるオンラインビデオの事例

 

セッション最後には、日本における具体的な事例も紹介された。一つ目は、TubeMogulに動画を搭載してパネル募集キャンペーンを実施したマクロミルの事例。オンラインビデオ広告は、クリックレートが非常に高いのが特徴だ。そのため、広告単価は高いもののCPCでは安くなる。また、アトリビューション解析により、広告配信と同じタイミングでブランド名での検索やサイト訪問が増えたこともわかった。さらに、PDCAサイクルをまわして配信先をチューニングできる。配信先をターゲットに合いそうなサイトに絞ると、インプレッションは低下するが、検索数や訪問者は減らないという結果も出ている。これにより、広告費の削減が可能となる。

 

語学教材の広告事例では、アンケートを使って広告配信前後の認知度の違いを測った。対象となるプロダクトは後発で、競合に比べて認知度が低かった。それでも、配信後にはそれがトップになるという結果になった。また、アトリビューション解析では、やはりブランド名での検索率が大きく上昇。今後、検索への効果はデフォルトでレポーティングする方針だ。

 

設計した事例として紹介されたのは、KFCの新商品のプロモーション事例だ。まずAudienceScienceを利用してサイト訪問者のプロフィール調査を行い、その結果から出たセグメントに対して広告を配信した。これは日本初のインタラクティブ・プレロール広告で、広告動画上のバナーをクリックすると、製品紹介などのページに切り替わる。O2O(Online to Offline)も狙っており、クーポンのバナーをクリックするだけでクーポンが印刷できる仕組みもある。クーポンはトラッキングしており、何経由でクーポンを入手したかもわかる。O2Oの正確な効果測定もオンラインビデオのメリットで、今後もこのような事例を増やしていきたいという。

 

マクロミルの事例

 

KFCの事例

KFCの事例

 

(編集:三橋 ゆか里)

ABOUT 大山 忍

大山 忍

ExchangeWire Japan 編集長

米国大学卒業。外資系企業を経て2000年にネット広告効果測定ツールを提供するベンチャーに創業メンバーとして参画。その後、バリューコマース株式会社と合併。
2007年1月にオムニチュア株式会社(現Adobe)に参加、コンサルティングサービスを立ち上げる。ビジネスコンサルタントとして米国のベスト プラクティスを日本の課題やニーズに合わせて提供、ウェブ解析やガバナンス(データ主導の組織・仕組化)に関する執筆・講演を行う。